見出し画像

結ばれていると願いたい

「男爵芋」の語源が、川田龍吉だと知らず、
何となくタイトルが面白そうで手にした。
読み進めるほど、二人の人生のドラマがありありと
浮かんできて、晩年の姿には思わず涙しそうになった。

何通にも及ぶ手紙でのやりとり。
今の時代であればLINE? 海外の場合はWhatsAp?
手紙だからこそ「待つ」ことができる。
即時性のあるSNSでは、「焦れったい」は死語?

読みながら「舞姫」を思い浮かべた読者も多いだろう。
豊太郎に見捨てられたエリスの気持ち。
龍吉への手紙を書かなくなった時のジニーの気持ちはいかほどか。
現代であれば叶う恋も、「明治」という時代の前では力尽きた。

帰国後、龍吉が結婚した相手に対して、
龍吉が抱いた「物足りなさ」は、
現代社会では果たして克服できているのだろうか。

龍吉の仕事に目を転じると、
御雇外国人にばかり頼ろうとする当時の風潮に流されず、
長い目で日本を見ていた。
スケールが大きいがゆえに、
周囲との世界観の違いで苦労されただろう。

来世で二人の縁が結ばれていることを願いたい。
そう思わせてくれるいい作品でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?