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レビュー:子どもを持つ親が病気になった時に読む本

子どもを持つ親が病気になった時に読む本 伝え方・暮らし方・お金のこと

今日は、創元社出版の「子どもを持つ親が病気になった時に読む本 伝え方・暮らし方・お金のこと」をご紹介したいと思います。

私は神経難病をもちながら29歳で出産し、現在0歳児を育てています。私が病気だということはまだ子供は分かっていません(と思います)が、これから成長するにつれ、いずれ伝える日が来るでしょう。
周りの病気をお持ちの先輩方にお尋ねすることもありますが、病気をもつ親として、伝え方や情報が整理された本を紹介いただきました。

この本は、ハーバード大学附属病院マサチューセッツ総合病院のParenting at a Challenging Time(PACT Program)のメンバーが執筆し、そこに相談に来た方へ手渡される資料の一つだそうです(訳者あとがきより)。


「病気になった時」を想定しているので、既に病気をもった状態で子育てが始まった私のパターンは若干想定と異なりますが、それでも掲載されている情報はとても参考になりました。

まえがきで、周りから玉石混交の色々なアドバイスをもらったり、他の健康な親とは優先事項が違ったり、ストレスが多かったりする当事者に向けて、この本は「たくさんの病気の親御さんの子育てを手助けしてきた熟練した副パイロットのようなもの」と書かれています。操縦桿を握るのは、親自身。

目次一覧

目次一覧はこのようになっています。

第1章 はじめて診断を受けた時~サポート体制を整える
第2章 子どもと家族の日常生活について
第3章 病気について子どもに話すこと
第4章 「ママは死んでしまうの?」と聞かれたら
第5章 子どもによって違う辛さの乗り越え方
第6章 あなたの症状が子どもに与える影響
第7章 学校からの支援
第8章 入院中の面会(お見舞い)について
第9章 経済的なこと、法的手続きのこと
第10章 遺伝子検査~子どもの視点
第11章 子どもを心理の専門家に受診させるかどうか
第12章 家族の思い出づくり
第13章 別れの時に向けて決めること

親が病気になっても、子供は健全に育つから大丈夫というメッセージが通底しています。

それぞれの章では、基本的な考え方の解説はもちろん、離婚している親の場合や、遺伝子検査の結果が兄弟で違ったケース、住む場所が違うケースなどが紹介され、本当に色々な経験者の声から作成されていることが分かります。

特に第3章の病気を子供に伝える方法については、様々なケースや子供の年齢に応じた伝え方の考え方が提示されており、自分の状況に置き換えて考えやすい内容となっています。

例えば、病気の伝え方の考え方として、病名を最初から伝えるという方針が紹介されています。最初「血液の病気」と言っていたものが、あとから「白血病」になると、より重篤になったように子供は聞こえます。分かりづらくでも、最初から正確な病名を伝えた方が不要な心配を減らせるそうです。私の病気の正式名称を子供に伝えたら、子供は覚えられなさそうですが…(笑)

強力なパートナーになってくれる本

何より、病気でエネルギーがない時でも読みやすい見た目、内容で、頭に入りやすい構成になっています。私自身、最初は目次で取り扱う内容の幅に圧倒されましたが、すぐに一通り読むことができました。

病気をもっていると、子育てのハードルが上がることは事実です。例えば障害福祉サービスなどの制度はまだ病気をもつ人が結婚し、子供を産んで生活することが想定されているとは言い難いですし(改善されてきてはいますが)、そもそも障害と女性などの複合差別はまだ認知度も低く、取り組みも遅れています。
もちろん男性で障害・病気をもつことも、社会的に大きな障壁がまだまだあります。

そのような状況の中で、この本は沢山の先達の経験に基づいた、強力なパートナーになってくれると思います。

今病気をもちながら子育てをしている方、これから子育てを考えている方、周りに病気をもつ人がいる方、色々な方に読んでいただきたい本です。

本書の元になったプログラムのウェブサイトはこちら。

Parenting At a Challenging Time (PACT) Program Massachusetts General Hospital Cancer Center

https://www.mghpact.org/ (英語のページ)

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