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14歳で経験した、社会のしくみってヤツ(後編)

やあやあ!筋六です!

明けましておめでとうございます。

今年も変わらず、しょーもない記事ばかり投稿すると思いますが、どうぞよろしくお願い致します。

さて。当時14歳だった筋六少年の大冒険も、いよいよ後編となりました!このクダラナイお話しに、これまでお付き合い頂きました皆さまには、心より感謝を申し上げます。あとちょっとだけ、お付き合いくださいませ。

前回までのあらすじ

なんの確証もなく、薄っぺらい推理だけを頼りに、目的地の見本市会場に偶然にも到着することができた筋六少年・・・。そこで待ち構えていたのは全くの未知の世界だった。

見本市ってなんぞや? なにをしたらいいの? 

アホな14歳が孤軍奮闘する、後編のはじまり~


*  *  *  *  *


当時、父の会社は起業したばかりだったとは言え、他社と比べるとその差は歴然だった。見本市にブースを出展する企業として明らかに準備不足だ・・・。

オヤジの会社ってアホなの?

何ともしがたい気持ちと、イラ立つ気持ちでいっぱいだったけど、知ってる人も助けてくれる人もいない孤立無援の状況だっただけに、色々と余計なことを考える余裕はなかった。

なんとかするしかない。って気持ちだけ。


「サンプルちょうだい」って、興味を持ってくれたオジサンもいたが、サンプルを用意してないことを伝えると、あっけなくどこかへ行ってしまった。

せっかくいい感じで話が出来たのにな・・・。

周りの有名メーカーブースでは、カタログや商品パンフレットはもちろん、かっこいいステッカーやアイテムグッズなどで、お客さんの心をグッと掴んでいる。

しかし、ウチにあるのは、どぎつい青い紙に印刷したくそダサいチラシと、僅かばかりの見本商品があるだけ。展示ブースと言っても、他社さんのブースの一部を間借りした、小さなワゴン1台ぶんのスペースがあるだけ・・・。こんな酷い状況で、見ず知らずのお客さんと、巨大な有名メーカーを相手に戦わなければならない。

まして、自分はオヤジの会社の社員でもなければ、給料をもらってるわけでもないよ。使命感や責任感なども、あるはずがない。ただ、自分ちの、オヤジの会社のことだけだ・・・。


けど・・・。なぜだか判らないが、ちょっとワクワクしていた。


人のせいにも、モノのせいにも、環境のせいにもできない。親も、社員さんも、先生も、友達も、だれも知らない未開の地に飛び込み、冒険でもしているような気分だったのかもしれない。



今、このワゴンは自分の城だ!小さくても、なにか目立たせる方法を考えよう。と、多くの人で賑わう見本市会場の中に、再び出てみた。


目的は・・・。


そう!サンプル!


うちのブースを目立たせる、賑やかしになりそうなもの。なにか使えそうなサンプルやグッズを手に入れるためだ!今は他人の力を存分に利用してやろうと、よこしまな考えが暴発した!!


さて。

有名メーカーのブースでは、ステッカーやカタログ・パンフレットなど、配布販促品は多く用意されているが、試供品や現品サンプルは意外と少ない。

ねらい目は・・・中堅のメーカーさん。

分厚いカタログや豪華なカラーパンフレットを大量に印刷したいけど、それにはかなりのコストがかかる。ならば、自社の商品を小分けして試供品としする。中には、小分けも面倒なのか現品を配っているメーカーさんも少なくない。

ただ、そういったメーカーさんは、試供品を大量に準備している訳ではないので、簡単にゲットすることは難いのだ・・・。


しかし、ここは誰もいない未開拓の地!恥もへったくれもないぜ!


「あのぉ~うぅ~」

「は?」

「こ、こで・・・。ぢょうだい・・・。」

「・・・。」


と、ちょっと危ないヤツを演じれば、だいたいのブースでサンプルや試供品をゲットできた!


(※よいこも よいおとなも ぜったい まねしてはいけません。)


いゃっほ~い!


禁断の手法でゲットしたサンプルや試供品を両手に抱え、すぐさま自分の小さなワゴンブースに戻った!H商会さんのブースの隅に置いてあった紙製の長い筒状の棒を2本を借り、それをワゴンの両端にガムテープで固定。

固定された2本の棒の間に、先ほどサンプルでゲットしたヒモをピーンと張る。

そのピーンと張られたヒモに、これまた他社ブースで貰ったサンプルを、のれん状にいくつもぶら下げ、その先にうちの商品を取り付ける。

これを繰り返しては、取りつける。

また、取り付ける。

取りつける・・・。


すると、

「兄ちゃん、これなんやねん」とお客さんに声をかけられた。

「え?あ、はい。これはですね、うちの地方で流行っているものなのですが・・・。こうして・・・。こうして・・・。こうやって使うんです。」

「ふーん、なるほど・・・。」

ヒモの先に商品をくくり付けながら、たまに声をかけてくるお客さんとの対応を黙々とやっていたのですが、ふと顔を上げてみると、多くのお客さんがワゴンの前に集まっていた!


え?えーー!!


ざっと15人くらいはいたでしょうか。さっきまで、誰も足を止めることすらなかったワゴンブースだったけど、いつの間にやら大勢の人が集まり、自分の作業をジッと見つめている。

手作り感満載の貧相なブースだけど、効果は絶大だった。

でも、この様子って、どこかで見たような・・・。

あ!

デパートでよく見かけた実演販売だ!


綺麗なカタログや商品パンフレットは確かに魅力的。しかし、それはそのメーカーの知名度が高く、商品の購入を検討している既存のお客さんやコアなファンにとっての話で、誰にも知られていないようなメーカーの商品は、使ってみせるなどでその商品価値を伝えなければ、お客さんの購買意欲を高めることは難しい。

多くのギャラリーが見守る中、実際にそれを使い、機能や便利さを目の当たりにすると、なぜだか異常にそれが欲しくなっちゃう。実演販売はまさにその手法。

当時の自分に、最初からそんなねらいがあった訳じゃない。ワゴンの上に、ただ平面的に商品を並べてるだけじゃ、誰の目にも留まらないので、立体感を出そうと商品をぶら下げていただけだ。それが、実演販売コーナーみたいに見えたんでしょうかね。


小さなブースの前には、ワイワイと人が集まってきました。オジサン達との会話を続けながら、実際に使ってみせる作業を繰り返して行くうち、

「これ、サンプルをないの?」と言われた。

きた。

サンプル・・・。


そう。うちのブースにはサンプルが無い。

丸腰状態で見本市に出展するくらい、おバカなオヤジの会社だもの。   そういった重要なファクターが全くない。だからここまで苦労しているのだ。しかし、見本市で見本が無いとは、なんともしがたい痛恨のミス。

あるのは、見本として並べた現品商品しかない。これをサンプルとして差し出すと、ワゴンの上には訳の判らん「のれん状の何か」があるだけになってしまうのだ。


そこで、サンプルを求めてきたオジサンに、ある提案をしてみることにした。

「すみません。今はサンプルが無いんです。なので、モニターになって頂けるなら、この現品をお渡しします。」

「おお、ええで。モニターになってやるわ。」


モニター結果を報告してくれることを約束してくれたオジサンは、チラシの裏に住所と名前を書いてくれた。


おおぉ。やったぁ!


自分で考え、自分で行動した結果が、目にみえる形で現れた。
誰かに指導されることもなく、助けてもらうこともなく、なにか物事を達成することは、今までの経験ではなかったことだ。

多少の苦労はあったが、目の前で成果が上がることは、中学生だったとしてもとても嬉しいことであり、めちゃくちゃ興奮した。


モニター制度ってこういう事なんだね。


当時、雑誌やテレビで「モニター募集」の広告や記事を目にすることはあっても、どういった意図があったのか判らなかったが、実際にモノを作って提供する立場になると、その深い意味がよくわかった。

現品がタダで貰えるからと、むやみにモニター募集に応募しちゃいけないよね。そこには、作り手の熱い想いが詰まってるから。


モニター制度という強みを覚え、実演販売さながら、使い方の説明とモニターを募集すると、お客さんは殺到した。エントリーしてくれる方は、こぞって名前と住所を書いてくれるようにはなったが、現品はたったの50個しかない! 

このままでは、「マヌケのれんワゴン」になっちまうのは時間の問題だっ!うーん。作戦変更。


「モニターになってくれる方は、お名前と住所を書いてください。商品は、後日お送りしま~す。」

と、サンプルの後日発送制度を導入することによって、見本現品の流出を食い止めることが出来た。


ふぅ~。あぶない。あぶない。

それにしても、タダで貰えるってなると、人は姿を変えちゃうね・・・。と、しばらく自ら招いた失敗と、その後の対処に追われる。




「兄ちゃん、これなんやねん。」

新たなお客さんが現れた。50代くらいだろうか?男性二人組だ。

「あ、これはですね、ウチの地方で流行ってるモノなんですよ~ 凄く好評なんです。良かったらモニターになりませんか?あとで商品を送らせて頂きます。」

「なんやこれ。ドッグフードかいな?」

「いやいや。違いますよぉ~(笑)これはですね~」

と、冗談交じりに会話をはじめたのだが、その男性二人組のお客さんは、ちょっと様子が違う・・・。

「おい、兄ちゃん、なめとったらアカンど。」

「えっ・・・?」

「オレらはな、この商売に命かけとんじゃ。こんなもんでうまく行くはずないやろ。こんなんで上手くいくんやったら世話ないわ!お前、オレらのやり方なめとんちゃうんか?」

「い、いえ・・・。なめてません。ただ、うちの地方で流行ってるってだけで・・・。」

「ほんなら、サッサ田舎帰れや。なんもわかっとらんの~ これやから田舎もんのド素人は困るで。オレらの苦労も知らんと・・・。」


む。

むっかーーーーー!!!!



クソッ!なめとるのはどっちじゃ。勝手にそっちが近寄ってきて、文句言われる筋合いはないし。しかも、相手は中学生やぞ。いい大人が二人がかりで・・・。



「別にあなた方を否定してませんよ。」

「あなた方は、自分のやり方を信じて続ければいいじゃないですか。」

「僕は自分の信じられることを伝えてるだけです。」



・・・。


言ってしまった。



「あ、そうですか」と軽く受け流せばよかった。


けど、大人たちの勝手なやり方で、訳も分からずここまで来させられ、訳もわからず一人で悩み、何とかしようと必死になってやってきたのに、訳の判らんオッサン二人組に絡まれる。

色々なことがいっぺんに押し寄せ、いま、自分を押しつぶそうとしている大人たちの理不尽さに我慢することが出来なかった。


「なにー?おい、お前こっち来い」オッサン二人に胸ぐらをつかまれて、ブースの外通路に引き出された。

「おい、お前なめとんのか!こら!やるんか?」


むぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!!!!!!!!!


「おう!やっちゃるわい!ジジイ来いやぁーーーーーー!」


叫んだ・・・。



どうせここには誰もいない。


親も、先生も、友達も、誰も。


ひとりぼっちだ。


大人二人組に引きずり出されて、囲まれて、ケンカ売られて、めちゃくちゃ怖いけど、自分はひとりだってことは変えようがない事実。

どうなろうと構わない。


オッサン二人組から腕を押さえられ、胸ぐらをつかまれた。いよいよやられるなと覚悟したとき・・・。


「ちょ、ちょっと!やめたって下さい!」

と、胸ぐらをつかんだオッサンの腕を振りほどくようにして、誰かが割り込んできた。


それは、H商会のスタッフさんだった。


「相手は子どもやないですか!勘弁したってください!」

「せやけどな、このガキ!こいつなめとんじゃ!おい!聞いとんのか・・・。おい・・・。こら・・・。・・・・・。・・・・・・。」

相変わらずオッサンたちは、H商会のスタッフさん数人に囲まれた中でギャーギャーわめいていたが、その後どうなったかは、あまりよく覚えていない。


けど、自分は


ボロクソに泣いていた・・・。



H商会のスタッフさんに促され、ブース奥の休憩室に座らせてくれたが、これまで高ぶっていた気持ちが、いっぺんに折れたというか。もう何もする気になれなかった・・・。




暫くブース奥の休憩室に座っていたが、さっきのオッサンたちがどうなったのか気になった。それに、ワゴンの商品もそのままだし。おそるおそる表をのぞいてみると・・・。


ウチのみすぼらしい青いチラシを、H商会のスタッフさんたちが手分けして配っていた。




その様子を見て、また涙がでた。



「お。どうや。ちょっと落ち着いたか?」

奥から様子を伺っている自分に気付いたスタッフさんは、優しく声をかけてくれた。

「あ、はい。・・・。なんかすみません・・・。」

「兄ちゃん。いいキモしとんのぉ~」

と、少し呆れたような顔で笑い、またチラシを配りはじめた。

そして、自分も、またチラシを配りはじめた。



*  *  *  *  *


それから、どれくらいの時間がたっただろうか。閉会時間まぎわに、オヤジの会社の社員さんが現れた。

「おっ!やってる?」くらいの軽々しさで現れたのだが、内心ホッとした。その社員さんは、H商会のスタッフさんと暫く談笑し、会場を後にすることになった。その日は、その社員さんの親戚の家に泊めてもらうことになっているようだ。

あれだけあったチラシも、H商会さんのお手伝いにより全て配り終え、モニター募集に使った商品も、全て無くなっていたことから、翌日は新幹線で帰るだけとなった。

14歳で経験した、社会の仕組みってヤツ。

こんな経験をすることは、なかなか出来るものではないと思うが、今思い返しても、とても魅力的で興奮した数日間の出来事だったと思う。学校や日常では決して学ぶことは出来ない、大切な社会の仕組みを身をもって体験した。


あえてこの経験をさせてくれた、

父と母に感謝・・・。


するわけねーーーーーし!

































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