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14歳で経験した、社会の仕組みってヤツ(中編)

やあやあ!筋六です!

前回からこのテーマで書いてるんですが、いやぁ~

長い。

あまりにも長いので、前・中・後の3編作にすることにしました。読んでる方々も飽きちゃうしね。どうもすみません。

でも、でもね。

この話は、脚色なしの全部実話です!


前回のあらすじ

半ば強制的にフェリーに乗せられ、キーワードクイズ程度の情報だけを頼りに、なんとか目的地の大阪見本市会場までたどり着いた、14歳の筋六少年。
目的のH商会まで、チラシを運ぶだけの旅だと思っていたのだが、本当の試練はここからだった・・・。

中編のはじまり~


さて、目的であった見本市会場に、なんとか到着することができ、H商会にチラシも無事に届け終えたのだが、ここで新たなアイテムが登場!


ワゴン!どーん!

謎の段ボールが!どどーん!


・・・んで?どーすん?

到着早々、謎のアイテムを渡されるが、まぁったく状況が飲み込めない。ただ呆然と立ち尽くします・・・。

それを見かねてなのでしょうかね。H商会のスタッフさんが声をかけてくれました。

「ほら。兄ちゃん、ワゴンのそっち持ちーな。」

「え、あ、はい。」

・・・・。

「ここでやったらええ。」

「はぁ。ありがとうござい・・・ます?」

H商会のスタッフさんは、自社の巨大ブースの前にワゴンを運び、わたくしに場所を提供してくれました。ワゴン1台分の小さなスペースでしたが、通路に面したブース最前線のところです。


周囲の大人たちに促されるまま、ここまで来たのですが、しかし14歳の筋六少年には、いま何が起きているのか?ちっとも理解できていません。


てか、見本市ってなに!?


そもそも筋六少年は、見本市というモノに行ったことすらありませんでした。

ここは何をするところなのか?入場料を払って来るお客さんは、何を求めてやってきているのか?何のためにこの見本市会場まで来たのか?

なぞだらけ。


とりあえず、自分が置かれた状況を確認するため、まずは会場内を見て回ることにしました。

広い見本市会場の中には、おそらく100軒くらいはあったでしょうかねぇ。色々なメーカーさんの出展ブースがひしめき合っていました。

特に目立つのは、大手メーカーさんのブースです!!眩しいほどの照明で商品をライトアップし、巨大なモニターからは商品のPR映像が、カッコいい効果音と共に映し出されます!

揃いのスタッフジャンパーに身を包んだ男性スタッフさんは、商品について熱心に説明を行い、美人のコンパニオンさんは、ニコニコ顔で豪華なカラーカタログを配っています。

スチール椅子が並べられた特設コーナーでは、その筋のプロ?らしき人がセミナーのようなものを行っており、実際に商品を使って行われる実演コーナーや、実験装置が置かれたブースまでありました。

まるで、その筋のお祭です!

わたくしは初めて見る光景に、驚きと戸惑いの目でキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていると、メーカーのスタッフさんやコンパニオンさんから、カタログやチラシをどんどんと渡されます。いつの間にか、両手いっぱいのチラシやカタログを抱えることになりました。

カタログやチラシのほかにも、小袋に入った商品やグッズ、ステッカーなどをゲット!

おお!よくわからんけど、色々もらえたぞ~!

と、とりあえず、ブースに戻ろう・・・。広い会場なので、自分のブースに戻る間にも、どんどんとカタログやチラシを渡されます!

もう、持ちきれんし・・・。

ほんの僅かな時間の状況判断タイムではありましたが、出店メーカーさんとお客さんの熱狂ぶりがよく伝わってきました。ひいきのメーカーさんのカタログやステッカー、ちょっとしたグッズなどをタダでゲットできるんだから、そりゃあお客さんは熱狂的にもなりますよね。

新商品や人気商品をバイヤーさんや店舗経営者さんに直で見てもらい、商品を仕入れてもらう。一般のお客さんは商品を実際に手に取って確かめ、実際の購買に繋げる。


なるほどなぁ~。だから見本市なのね。よくわかりましたよ、言ってる意味が。

さて、うちの特設会場はと、



ちーん。

ポク、ポク、ポク、ポク

なんまいだー。なんまいだー。


ちっさいワゴンが

ぽつーん。

じ、地味。

しかも暗っ!


H商会さんのブースは広い会場の中でも、比較的端っこに位置していました。大手メーカーや気鋭のメーカーさんのブースは会場の中央ばかりに集中しているせいか、ここは通る人もちょっと少なめです。

状況から判断すると、どうやらウチの会社は、H商会さんのブースの一角を間借りしているようです。

なるほど、だから誰も手伝ってくれないし、へんに余所余所しいんだな。そりゃあ仕方ないよね。ウチのような中小零細の駆け出しメーカーが、こんな立派な会場でブースを出展することなんてできないだろうし・・・。

いきなり、業界の最前線に立たされたわけね。なるほど~


しかーし!ウチの社員はどこっ?


こんな立派な会場で、場所まで与えられたチャンスなのに、ウチの社員はどこにも見当たりません。さらに状況を悪くさせているのは・・・。




アホな中坊がひとりだってこと!




どうどうどうしよう・・・。誰も手伝ってくれそうな人もいないし、うちの社員もいない・・・。

と、とりあえず、この場は逃げるか?いやいやいや、逃げるところもない。ここは大阪。帰るに帰れない状況・・・。天涯孤独。四面楚歌。孤立無援。断崖絶壁。


!!!ピカーン!!!

そうだ!あの謎の段ボール箱を開けてみよう!

会場に着いたときに、「荷物届いてるで~」って言ってたし、なにか必殺アイテムが色々と入ってるはず~!


業界最前線の見本市会場ですからね。なんとか戦うための武器がなければ、どうにもこうにもなりません。かなりの期待を込めて、謎の段ボールを開けてみることにしました・・・。べりべりべりーーーーっ!


箱の中には

ウチの商品が50個。


50個だけ・・・。



あとは何も無い。


こんな、煌びやかでお祭騒ぎの会場でですよ。バイヤーさんや熱狂的なお客さんを前にして、箱の中にはうちの商品が


たったの50個あるだけです。

せ、せめて、のぼりや横断幕など、ブースを彩るレイアウトグッズが入っているかと期待しましたが、そんなものは一切ありませんでした。

いいいぃぃぃーーー!むぎぎっ・・・。

とりあえず、貸して頂いたワゴンの上に、ウチの商品を並べてみることにしました。

う~ん。

しょぼ。


こんなブース、誰も見らん。


今ある物でなんとかしようとしましたが、アホな中学生では、やれる事にも限界があります。誰かの支援や応援もない。手元にあるのはワゴンと商品とチラシだけ・・・。


チラシか。

チラシ配りでもやってみるかな・・・。


とりあえずチラシを配ってみることにしました。今はこれしかすることが無いですからね。


お願いしゃーす。

お願いしゃーす。

おなしゃーす…。


その時はじめて、チラシ配りというモノを初めてやってみたんですが、そう簡単に受け取ってくれません。そりゃあそうです。他のメーカーブースで配ってるのは、綺麗な写真印刷で刷られたパンフレットや豪華なカタログです。

かわゆいコンパニオンでもなければ、かっこいいスタッフジャンパーを着こなしたプロっぽい男性スタッフでもない。

わたくしの手には、黒一色だけで印刷された、どぎつい青のぺらぺらチラシ。


くそダセぇ・・・。

でも、いま、これしかないんだよなぁ~。戦えるアイテムがね・・・。

勝てる見込みは全くない。もう止めちまおうかなぁ・・・。しかし、チラシ配りを止めたところで、他にすることがないんですよ。

どうにかして、チラシだけでも貰ってくれないかと、色々とやってみることにしました。

プラン①とにかくでかい声を出す!

えー!〇〇と申しま~す!よかったらどうぞー!

①の結果

ビビる。後。スルー。

むぎぎっ・・・・。

プラン②笑顔でやさしく話しかける!

あのぅ~ どうぞ~ えへへっ

②の結果

チラ見。後。スルー。

むぐぐっっ・・・。

プラン③軽快に配る!

どぞっ!どぞっ!どぞ!どぞ!

プラン③の結果

びっくり。後。チョイ取り。

お!効果あり!しかし、チラシはまだまだ死ぬほどある!このペースじゃ配り終えないよう~ もっと効率を上げなければ!

プラン④チラシ配りの極意発見!

でーん!とうせんぼ!

今やったらダメなんですけどね。とうせんぼ大作戦です!つまり、通行する人の前に立ち、チラシを取らなきゃ前に進めない方法をあみ出したんですね。

プラン③軽快に配る作戦をやっていたさなかに、偶然効果があったとうぜんぼ大作戦でした。めっちゃ嫌な顔するオッサンもいましたが、十中八九は受け取ってもらえます!大量にあったチラシも、すごい勢いで消費していきます!

うっひょ~たのし~ チラシ配り~!

【この作戦のおかげで、高校生の時にやったマッチ配りのバイトで、高収入を得ることにつながりました。懐かしいですね。マッチ配り!】


チラシを受け取ってくれた人の中には、「へえ~。なんやねん、これ?」と食いついてくるオジサマが現れるようになりました!そんな素敵なオジサマには、ワゴンに連れて行き、実際の商品で説明をします!

「これはですね~、うちの地方で流行ってるんですが・・・。これをこうして、こうして、こうするンです!」

「へ~そうなんや~。使ってみるわ~」

「ほんとうですかぁ!あ、ありがとうございます!」

「ほんなら、サンプルちょうだい」

「サンプルですか・・・。」

そうか。サンプルか・・・。うちのワゴンに並べてあるのは、本製品の大袋が50個のみ・・・。本商品を渡してしまうと、ただでさえショボいワゴンがさらにショボくなってしまいます・・・。

「すみません・・。サンプル無いんです。」

「そうなんや。じゃこれいらんわ」

と、受け取ってくれたチラシまで突っ返されました・・・。


商品を売りたいなら、まずは商品を知ってもらう。興味を示したお客さんに説明をする。それで、ちょっと使ってみてもらう。良ければ買ってもらう。お金を手にする。物の流れってこういうことなのね・・・。

この購買ロジックは、30年以上も前から変わらない。いや、もっともっと、ずっとずっと前から。

そして現代でもね。

こんな一大チャンスにサンプルも用意せず、汚いチラシと50個の商品のみで戦いを挑んだ、うちの会社って、もしかして・・・。




バカなの?


後半につづく・・・。




















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