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新人教育とOJT

OJTの教育計画

4月になって新人さんが入る企業も多いと思います。新人教育もあります。
4月中は会社の全体を理解してもらうためにさまざまな部署で少しずつ体験したり、人事部が計画した研修をするところもあります。
そんな新人教育をしていきますが、新人さんの方はそういうものかと受け入れています。人事部などが計画する教育というのは準備がある場合が多いです。会社の成り立ちや組織の構成を説明します。といってもその時だけの話で、それをどうするか?とまでは言いません。人事部もそういう仕事としか考えていないでしょう。
それぞれの仕事場に配属された直後はその部門での教育があります。こっちの方が曲者です。多くの場合、OJT(On the Job Training)と称して先輩と一緒に仕事をして覚えます。このOJTですが現実はほぼ無計画です。一緒にやっているうちに覚えるからね、というだけのこと。これには多くの失敗も含みます。学生など、自分の成長のために失敗して、経験から学ぶことは有意義でしょう。しかし企業で既に確立されている製品やサービスを提供する際に失敗するのはただ損失でしかありません。

企業組織の教育に必要なこと

企業組織では教育が必要です。好きなようにやって良い、という組織もあるでしょうが、それでも完全に自由ではありません。企業組織で教育するためには何をしたら良いでしょうか?
教育内容を決めるにあたって、スタートからでなく、ゴールを決めます。何十年後じゃなく、その仕事場でその作業に必要な知識や技量です。それを身に付けてもらいます。
必要なことをリストにします。個別の知識もあれば、作業手順もあります。手順書があるならそれを使うこともできます。まずは、何を教えるか、を決めます。

教育手順書

しっかりとした教育をするために、教育手順書を作ってみましょう。特定の部署ならあるかもしれません。通常の「現場」では無さそうです。知っている人が教えて、分からないことはその時に聞けば良いじゃない?と考えていると思います。この問題点は、
・必要なことを確実に教えるかどうか分からない
・期待通りに「分からない」状態にならない
・出来るようになっているか分からない

OJTでいつも作業している人と一緒に作業をして覚えようとします。教える側は作業方法を知っています。これは意識的なものもあるし、無意識で行うものもあります。自分が常識と思っていることは、相手も常識なのかどうか分かりません。学校で習ったことだから知っているはず、なんてものは全く通じません。作業に必要なことは全て教えます。手順書無しのOJTでは必ず不足が出ます。そして、知らないことをきっかけに失敗する時がきます。他の人が失敗して、それから学ぶかも知れません。そのときに指導者は、「言わなかったかも知れないけど、ちょっと考えればわかること」などと言い訳します。そのことこそ「考えればわかる」ものです。作業に必要なことは「知っているだろう」ということでも教えるべきなのです。

失敗した人に「分からなかったら訊かなきゃダメ」と言います。失敗した人は分からなかったらわけじゃ無いのです。それで良いと思って行動しています。必要な知識を与えないで期待通りに分からなくなることはありません。

手順書を作る

実際に通常業務の手順書を作ることは簡単ではありません。

書式を決めるのが大変。
組織で手順書の書式が決まっていない場合、どういう書式にするかから始まります。自由でも構いませんが、良い書式を決めておいた方が作成する側もやりやすいです。上手い人もいますが、苦手な人もいますので。表紙、目次、適用範囲、内容などです。

決められた書式に合わせるのが大変。
しっかりと作ろう!と張り切る組織もあります。フォントはxx。見出しは、第x章、第x条、それぞれインデントはどうで、フォントサイズはこうして・・・。綺麗に出来そうです。ところが実際にやってみるとワープロ操作が大変です。よくあるWord地獄に陥ります。自由な文字入力ならほとんど苦労はしません。でもしっかりした文書体系になると、付番してくれたり、インデントされたり、やりたく無いことを勝手にされます。
これらはいくつかのやり方を覚えて設定することで、使いにくかったWordが使いやすいWordに変わります。

手順書を見て出来るような手順書が作れない。
手順書を作ってみると、手順書を見ても作業が出来ないことが多いです。これは、やることを書いているけど、やり方を書いていないのです。ああそうか、とやり方を書こうとすると意外に面倒くさいです。完全にやり方を覚えているわけではなくて、作業をしながら記憶から呼び出しているのです。熟練者が機械操作の手順書を作ろうとしても、記憶だけで作成することは困難です。機械を見て操作しながらだから出来るものです。初心者であれば、機械を見てもさっぱり分かりません。そのため手順書で操作を確実にしようとしたら、写真を入れて、操作の順番や、確認手順など、全てを記載しなければなりません。それを記載していなければ操作しない、確認しないかもしれません。書かなくてもやらなきゃダメなんて都合の良いことは無いのです。

作業手順が明確になっていない
実際に手順書を書いていると、この作業は私はこうしているけど、他の人は違うかもしれない、と感じることがあります。はっきりしていないのです。あの人にはこうすると言われたけど、他の人は別の方法だった、ということはあります。初心者では、一体どうすれば良いのか?と困ります。そのくせ、自由にやればやり方が違うと言われるのです。必要な作業は手順書に記載します。手順書に書いてないけどやってください、という作業は作らないようにします。

手順書を作る時間がない
実際に手順書を作ろうとすると、時間がないです。そもそも暇なわけではありません。それでも手順書を作ろうと決めたなら、なんとか完成させたいです。1人当たりの労働時間を増やすか、他の人材を頼るかを、組織がコストをかけることを前提に検討して決めなければなりません。そしてこの手順書作成作業は、どのくらいの時間がかかるのかがはっきりしません。かと言って、いつ出来るかも分からないのも好ましくありません。大雑把でもスケジュールを立てて、進捗管理(スケジュール見直しも含む)をしながらやっていきます。

それでも手順書を作るべき

手順書を作ることは簡単ではありません。それでも手順書は作るべきです。それが組織の成長になるからです。熟練者にとっては、すでに出来ることをわざわざ文書化するのはめんどくさいことに感じます。しかも長年かけて得た知識、経験を、初心者が簡単に習得してしまうリスクがあります。だからこそ、組織(会社)がしっかりと保護しなければなりません。もし、組織が手順書があるから誰でもいいんだ!という態度をとれば、従業員もそこでは手順書を作ってくれなくなり、人材も流出してしまいます。

明確な手順書を利用して、新人さんのOJTを行えば、教えやすく、理解しやすくなります。ある程度の努力は必要ですが、必要以上に苦労したり失敗したりする必要はありません。教育方法を見直すことで、組織のレベルアップを行いましょう。


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