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【ホンナビ】現代の日本経済を見つめ、「ビジネスの未来」を考える #テンカイズ

今夜のプレゼンターは、NewsPicksエディター・プロデューサーの野村高文さん。
野村さんがおすすめする本を要約し“読んだ気にさせる”企画「野村高文のホンナビ」をお届けします。

1. 経済は成長しきっている?

野村:今回は、昨年12月に刊行された山口周さんの著書『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』という本です。

山口周さんは、独立研究者、著作家として活動されています。有名な著書が2017年に刊行された『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』という本ですね。

山口さんが、ここ1年間をかけて構想を作られた大著がこの『ビジネスの未来』。私としても「面白いな」と思ったので、今回ご紹介します。

まず問題意識としては、「ビジネスって何ですか」という話です。だいぶ抽象的ですが(笑)
答えとしては、ビジネスは「人々の課題を解決すること」だと山口さんは定義しています。

例えば、食べ物を売るのは、「人々のお腹が空いたという課題」を解決している。iPhoneは、「簡単に情報が見たい、もっと気軽に人と繋がりたいという課題」を解決している。

基本的に、世の中に課題がないとビジネスは成立しません。何か困っていたり、何かこれが欲しいなと思っている人がいないといけないんです。

これまでの世の中は課題だらけでした。100年前、50年前は、食べ物に困っている人、綺麗な場所に住めない人、海外旅行に行きたくてもお金が足りない人……と、いろんな課題がたくさんありました。

ただ、今の世の中は課題が無くなってきているんです。そんな感じしませんか?

宇賀:むしろ困っていないのに、次から次へと新しいものが出てきて「どうしよう、どれから手つければいいの?」っていう状況ですよね。

野村:おっしゃる通りです。我々はもう新しいものを買わなくても、十分豊かな生活ができちゃっているんですよね。

ただ一方で、企業としては上場企業である以上、株価を気にしなければいけない。株式市場では常に前年比の成長率で株価が決まっています。つまり企業は、"宿命的に"前年よりも業績を上げなければいけないんです。だから何かしらの「これが世の中を変えるんだ」みたいなロジックをつけて、常に新製品を作る。特に世の中の人が欲しいと思っていないものを広めることを、宿命的にしなければいけない。それが今のビジネスです。

宇賀もう成長しきっているのに、成長し続けなきゃいけない。もしくは成長しているフリをし続けなきゃいけないということですね。

野村:ネガティブな言葉で言うと、「低成長社会」。でもポジティブな言葉で言うと、「成熟した社会」なんです。

山口さんは、この状態を「高原社会」と表現しています。
今まで我々は、山道を大変な思いをしながら一生懸命登っていました。その分成長して、今は山の頂上まで来ています。すごく見晴らしが良い、「良い」ところに我々は立っているんだということ、そうした現状認識をすることから始めようと山口さんはおっしゃっています。

数字ばかりを伸ばしていくゲームは限界に来ている。これからは、社会にとって良いものや、多くの人の心を満たすものを作っていかなければいけないんです。
それは必ずしも大量生産・大量消費のようにビジネスとして一番儲かるモデルではないのかもしれない。それでも確実に、働いている人も、消費している人も心が満たされるものはあるはずです。そうした消費へと経済を寄せていかなければいけないという話もされています。


2. 進む経済による二極化、勝ち組に近づくためには?

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野村:先日、作家の橘亮さんという方の取材をさせていただきました。その時に、「現代社会では、人並みに成功することが難しくなっている」とおっしゃっていたんです。

例えば、数十年前まで「お茶汲み」みたいな仕事がありましたよね。でも今は無い。そうした単純な仕事が世の中から消えていて、お給料を稼ぐためのハードル、それに必要な要件というのが上がっているんです。

一方で、グローバル化とテクノロジーの力によって、世界中の顧客に対して商売ができるようになりました。GoogleやAppleはアメリカだけで商売をしているわけじゃなく、世界中の人たちがGoogleやAppleを使っている。圧倒的な勝ち組ですね。

そう考えると、多数の経済的に苦しい人たちと、少数の圧倒的な勝ち組で世の中が二極分布していくのは「構造上、仕方がない」と橘さんは話されていました。

僕の意見としては、圧倒的な勝ち組の人の富が増え続けるので、そこから何割かもらって再配分していかないと世の中は安定しないと思っています。

働き方も当てはまります。
与えられた目標を達成するだけのゲームは際限がないし、どんどん無理ゲー化している。目標はどんどん上がっていくけど、経済はもう満たされているから、目標を上げるほど売れるわけがありません。
それよりも「自分は今、この仕事をしていて心地がいい」「これは自分が良きものだと思ってやっている」「社会にとって何らかの意味を見出せている」というところで仕事を選んだ方が、こうした高原社会ではみんなが豊かになるんじゃないかという見解です。


3. 「自分がどうありたいか」を考え続けること

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宇賀:でも、どうしたらいいんでしょうね?

野村:第一歩は「自分が何に価値を置いているのか」を、かなり解像度高く知ることだと思います。

宇賀:私もそれが一番大事だと思います。自分は何が好きで、どうなりたいか、どうありたいかを真剣に考えている人から抜けていくのかな。

野村:他人が評価するのは即効性があります。しかも客観性があるように見えるんです。そのため他人の期待に応え続けているというのは、短期的な満足を得られます。でも長期的に見た時に、「あれ、こんなに目標達成したのに、自分はどうなりたいんだっけ?」と思うタイミングが来てしまうんですね。
自分が本当にやりたいこと、自分の心が喜ぶことが何なのかを一度振り返るのは良いことです。

ただ要注意なのは、「お金を稼ぐこと」に快楽を持っている人。自分はそうだと認識していたら、やはりお金を稼ぐ場に身を置いた方が良いです。一時的に楽をしようと別のところに行っても、段々と欲求不満が溜まってきます。

やはり、自分への解像度がすごく大事な時代になってきますね。

宇賀:私も悩んじゃいます。
「働き方、生き方を変えてみたいです」なんて大きいことを言って会社を辞めたのに、結果めちゃくちゃ働いてるぞ!?と。気付いたら日曜しか休みがないけど、その日曜には原稿書かなきゃ!みたいな状況になってて。
ただ私もずっと温泉に浸かっていたら退屈しちゃう。やっぱり自分がどうなりたいか、どうありたいかを逃げずに考え続けることですね。

野村:他人に与えられた目標をクリアし続けるということに我々は慣れすぎているんです。生まれた時から、教育を受けていくとそうなりますよね。

もちろん他人の期待に全く応えないというのは、単なる自分勝手になってしまいます。ただ、今応えている他人の期待は、本当に自分が心からやろうと思っているのか、それともしょうがないからやっているのかを認識するだけでも大きく違うと思います。

宇賀:忙しくて自分自身について考える時間がない!という人も多そうですね。

野村:ただこういう家にいなければいけない時というのは、そういうことを考えるいい機会かもしれないですよね。

宇賀:確かにそうですね!今回は野村高文のホンナビでした!


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