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ひまわりは夏の花

週に一度の外出の日。
夏花は迎えに来た父と街へ散歩に出かけた。
今週はなでしこ通りを散歩した。
先週は若葉通り。その前の週はしののめ通りだった。
その日の夜、夏花は病院の屋上に上り、夜空を見上げた。
薄曇りの空に、夏花は星を探した。
「あった。」
南の空に星が三つ並んでまたたいていた。
「宇宙人さん、迎えに来て。お家へ帰りたい。」
”お星さまがキラキラしているのはお日さまの光を反射してるからだ。”
父がそう教えてくれた。
夏花はポケットから消しゴムを取り出し、目をつぶってミントの香りを嗅いだ。
あの渓谷のひまわり畑に行く時、父はいつもパッケージにペンギンの絵が描いてあるミントのガムを買ってくれたのだ。
去年の夏。見渡す限りのひまわり畑を、親子二人で眺めていた。
「ひまわりはみんなお空を向いてるんだね。」
「ああ。きれいだろ。」
夏花は返事をしなかった。
「どうした。きれいだろ。」
「ひまわりは何を見ているの。」
夏花は父の声を遮って言った。
「天国?」
父は身震いした。その声は幼い子供のものとは思えないほど虚ろだった。夏花の顔は麦わら帽子に隠れて見えない。
父はしゃがみこんで、夏花の手を握った。
「ひまわりはな、お日さまの光が大好きなんだ。いつでも光の方を向いて生きてるんだよ。」
そう言うと、夏花は笑った。
「だからきれいなんだね。」
夏花の小さな手が父の手を握り返していた。
弱い力だった。ほんわりと熱い手だった。

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