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元気な声が聞こえるよ

おやおや?先程から、いぬうた市の、きゅん君と、
ぐーちゃんが自宅のベランダで何やら聞き耳を立てていますね。
きゅん君、ぐーちゃん、一体、何を聞いているんですか?
すると、おふたり、同時に「しいっ!静かに!」
と、言い放って、再び黙り込みました。
しばらくはそんな風にして、お互い耳をピン!と立てて、
いろんな方向に傾けていると、
「あっ、こっちよ!きゅん。この方向!ここから、微かに、オギャーオギャーと聞こえるわ」
ぐーちゃんがその場所を特定したみたいで、
きゅん君に教えるのでした。
きゅん君もそれで、その角度に耳をすませます。
「どれ、どれ?あっ、本当だ!聞こえる!聞こえる!あれは間違いなく、赤ちゃんの声だよ!」
そうゆうことですか。
おふたりは最近近所で産まれた赤ちゃんの、
声を聞いていたのですね。
「そうだよ。いい泣き声だよね。元気でいいね。あの感じだと赤ちゃんはきっと可愛い男の子だね」
きゅん君が自信満々に答えます。
泣き声で男の子だと分かるなんて、凄いですね。
「間違いないね」
と、自信を崩さない、きゅん君に、ぐーちゃんが、
「ぐーだって、実はそう思っていたわ。でも先を越されて、きゅんが言っただけで、本当は、ぐーの方が先に分かっていたんだから」
と、そこからしばし、どっちが先か?
けんけんがくがくと言い合っていたら、
その赤ちゃんの声が、ふと聞こえなくなったので、
「もしかしたら、散歩に出たのかも。それだったら僕の家の前を通るかも」
と、きゅん君が、咄嗟にそんなことを思いつき、
慌ててふたり、1階の外の道路が見える、
窓のところに駆け寄って、今度はそこからしばらく、
赤ちゃんが通らないか?を待ち受けるのでした。
「あれ、あの方じゃない?」
「あれは少年じゃないか。あんなにすぐに大きくならないよ」
「じゃああの方は?」
「あれは赤ちゃんみたいな顔をしたおじさんだよ」
と、ぐーちゃんが聞いては、
きゅん君が答える時間が過ぎましたが、
「そもそもだな。ぐー。赤ちゃんはまだひとりでは歩けないんだよ。だからベビーカーに乗っているはずなのさ」
と、きゅん君が、ぐーちゃんにそう教えるのでした。
でも結局は、その時、ベビーカーは通ることもなく、
ちょっとガッカリとした、ふたりでしたが、
「そのうち、お散歩の時にきっとお会いできるわ。ぐー、楽しみー!」
と、ぐーちゃんが言ったので、
「僕も楽しみだー!」
と、きゅん君もそう返して、
そのあとすぐにママに連れられ、散歩に出た、ふたりです。
すると、あの道の向こう。
真っ直ぐな真っ直ぐな、道の先に見えるのは、
あっ、アレって、もしかして?もしかすると?
きゅん君、ぐーちゃんは果たしてアレに、
気付いているのでしょうか?
あっ、ふたり共、すでにニッコニッコの笑顔ですね。
その笑顔は?
おっと、答えを聞く前に、アレに向かって走り出した、
きゅん君と、ぐーちゃんでありました。

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