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どれが似合うか、わからない

十年前に始めた三味線の発表会の為、着物が欲しくて、駅ビルにある呉服屋さんに足を踏み入れるも、着物姿の自分に違和感を感じ、逃げ帰ったあの日。馬喰町の問屋街や浅草あたりの和装小物の店をウロウロしてみるが、いっこうに進展がない。

少しでも着物に慣れたいと思っていた矢先、銀座松屋の催事で「着物カラー診断」なるモノがあることを知り、予約してみた。診断士さんが似合う着物の色を教えてくれるのだという。事前にネットで調べてみたところ、私は肌が黄色いし、二十代の頃から、エスニック系の色を好んで着ていたので、似合う色はイエローベースかな、色白さん向きのブルーベースはないなぁと、予測した。

のが、間違いだった。

デパートの催事場の一角に据えられたパーテーションの裏で、私のカラー診断は始まった。診断士の先生が、ふわりと肩にのせた四枚の布の束を次々と捲り、肌映りの良い一枚を瞬時に選んでいく。束は何色もあって、例えばグリーン系の束の中にも、黄色を少し混ぜたような緑色と、青を混ぜたような緑色が揃えてあって、パッと捲ると、頬がくすんで見えたり、色白に見えたりする。臆するに、レフ板のような役割か?

そして、私が二十代から好んで着ていた色は肌に馴染み過ぎてパッとせず、一着も買った事のない水色や薄い紫色をあてた時に顔が生々して見えるのだ。

私の着物選びはこの日、根底から覆ってしまった。あゝそうか。群ようこさんのエッセイ『還暦着物日記』にも、書かれていたじゃないか。十代の頃から男物の紬を選ぶほどの渋好みだった群さんが、お肌がくすむお年齢になったので、ピンク色にも目が行くようになったと。オレンジが好きだった私にも、群さんと逆の現象が起きているに違いない。あくまでも、個人の見解です。

近頃、セーターの色にネイビーを選ぶようになったのは、そういう理由があったのかと、合点がいったのである。

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