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あなたがくれた、愛しい世界

その人は4歳年下だった。

・・・

訳あって、退職した小さな会社に30歳で再入社した私は、その彼と二度目の入社時に出会った。

社長や上司にも物おじせず自分の意見を言い、なぜが空きデスクで駄菓子を売り始める、ハチャメチャでやんちゃな男の子。
まだ大きな仕事も受け持っていないのに、社長や上司からの評価がよかった。

若くて変な子、そう思った。

・・・

しばらくして、同じ仕事を担当することになった。
彼は営業、私は業務として。

一緒に仕事をしてみると、仕事には真摯に向き合い、トークには機智とユーモアがあった。
周りからの評価がよい理由がわかる気がした。

単なる変な子から、仕事のできる男の子に印象が変わった。

そして気づけば、仕事のほかに趣味の話などもするようになっていた。
その頃は寺社仏閣巡りが好きで、ここがよかったとか、こんなイベントがあるとか、そんな話を。

・・・

ある日、メールが届いた。

二人で嵐山に行こう、という内容だった。

デート?

男性が苦手で、長年恋愛から遠のいており、これがデートの誘いなのかどうかもわからなかった。

どうしよう。

でも、4つも歳下の子が三十路の私に興味を持つことはないだろうな。
単なる遊びなら、それはそれでよし。

そう思って、誘いに乗ってみることにした。

今思い返すと、この時点で、私はすでに彼に好意を持っていた。

・・・

デートは楽しかった。

彼は優しくて紳士的で少しシャイ。
普段とは違う印象だった。

そして、仕草のあちこちから好意を感じた。

だから、メールで次のデートの誘いの連絡が来た時、嬉しかった。

けれど、焦り、困ってしまった。

私の会社は、社内恋愛禁止の暗黙のルールがあった。

いや、たとえそんなルールがなかったとしても、何かあればお互い仕事をしづらくなる。
もちろん、小さな会社なので、周りにもすぐに知れ渡るだろう。
影響がないとは思えない。

そしてなにより、彼が社長や上司から将来を期待されていることは日々感じていた。
そんな彼を、万が一潰してしまうことになってはいけない。

彼とまた一緒に過ごしたいと思った。

けれど、彼の誘いに乗るということは、会社への影響も考えなければならなかった。

どうすればいい?

携帯を前に、自室でずっと悩んでいた。

MISIAの曲を流しながら。

・・・

結局、この気持ちが本当かどうか確かめたくて、再び2人で会った。

ただただ、私はこの人を深く知りたいと再認識したにすぎなかった。

そして3回目のデートで、私は彼に告げた。

会社への影響、そして私の年齢のことを考えても、ただ遊ぶだけというわけにはいかない。
付き合うかどうかはっきりしてほしい。
それも、結婚を前提として。

たった3回のデート、しかもまだ遊んでいたい20代の男性にはシビアな内容。
けれど、彼は受け止めてくれた。

・・・

それから一年も経たないうちに私達は結婚した。

結婚報告をするまで、会社の人達には気づかれていなかった。

結婚式のBGMのひとつには、MISIAの「少しずつ 大切に」を選んだ。

恋心に気づき悩んだあの日から、会社におおやけにできる日までずっと聞き続け、私を支えてくれたMISIAの曲を。

・・・

そして今。

4か月の息子の夜間授乳を済ませ、3歳の娘に布団をかけ直す。

そして布団に潜り込んだ後、iPhoneの音量を下げて、久々に「少しずつ 大切に」を聴いた。

愛しい世界よ 聞いてください
何よりも 心から伝えたい
ありがとう あなたを愛しています

あなたと会えてよかった。

あなたのおかげで、こんなかわいい子どもたちにも巡り会えた。

大変なことも多いけれど、あなたと一緒になれて私はとても幸せだよ。


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こちらは、たぬきの親子さんの企画【#愛した人・愛する人が重なる曲】参加記事です。

普段はすっかり忘れがちな日々の幸せを改めて感じることができました。

たぬきの親子さん、ステキな企画をありがとうございます♡


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ちなみに後日談だが、思い出話になると夫はいつも「行き遅れにだまされて結婚してしまった!」と言う。

付き合うかどうかの話を私がするまで、私の年齢を知らなかった夫。

「何も知らずに誘ってきたのはそっちでしょ!」と、いつも返す。

でも、そのおかげで今の楽しい毎日があるのだからいいじゃない(笑)。

だましたつもりは、全くないけどね♪



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