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『最後のジェダイ』が、なぜ最高なのか

1977年、1作目『新たなる希望』公開。
田舎で一生を終えるのかと思っていた青年ルークが、夢見ていた宇宙に冒険に出て、「スター・ウォーズ」が始まった。

そして、2019年12月20日、完結編『スカイウォーカーの夜明け』が公開される。

その前に、1つ前の作品『最後のジェダイ』を振り返ろう。

賛否両論ありすぎる問題作。
『最後のジェダイ』がやったことは、スター・ウォーズの破壊だった。


映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の感想。

※以下【ネタバレ】↓↓↓


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先人が伝説を作ったあとの物語

今のスター・ウォーズは、
『フォースの覚醒』、『最後のジェダイ』、『スカイウォーカーの夜明け』
で、1つの三部作。

この三部作のテーマは、「先人が既に伝説を作ったあとの世界で、新世代はどうするか?

主人公のレイは、初代主人公ルーク・スカイウォーカーの冒険を、もはや神話と思っている世代。そんな風にレジェンドに憧れ、自分も冒険する!と宇宙に出る。

悪役のカイロ・レンは、悪のレジェンド、ダース・ベイダーを尊敬している。彼のようになれるか不安に思いながら、悪の道を探っている。


これは、今のスター・ウォーズを作っているスタッフの気持ちそのもの。

昔のスター・ウォーズを見て、憧れて。
自分たちもあんなすごい映画を作るぞ!あんな伝説になれるか不安だけど…
という思いが、そのままキャラクターのドラマになっている。

世界はいつだって、先人が既に何か成しとげたあと。
そこを生きる「後続世代」の応援が、今のスター・ウォーズのテーマだ。

それを、『最後のジェダイ』は強烈な広げ方で展開させた。

幻滅させる初代主人公、ルーク

『最後のジェダイ』でレイは、初代主人公、ルークと対面する。
伝説の人・ルークなら私を導いてくれるはずだと、期待しての対面。

しかし、ルークは変わり果てていた。
ルークは、ジェダイへの理想が高すぎて、それを実現できないジレンマから、「もうジェダイなんて途絶えてしまえ」と、やさぐれていた。

立派に見えた先人も、「完璧」が実現できないことを嘆き、迷っている。

そして、とんでもない事実。
カイロ・レンが悪に堕ちたのは、何も悪さしてないのにルークに殺されそうになったから。

かつてルークは、まだ純真だったカイロ・レンがこれから悪に堕ちる可能性を感じた。そして、それを恐れるあまり、寝ているカイロ・レンを殺そうとした。
このとき、ルーク自身が悪に堕ちていた。

初代主人公でも、ここまでブレる。

若者からは伝説の人に見えても、何も答えなんて持ち合わせていない。

この映画は乱暴なくらい大声で、「先人だって、誘惑に負けて間違う、人間だ」と言ってくる。

「完璧」から解放される

ルークはジェダイの聖典を焼き払おうとするが、やはりジェダイへの憧れや責任が捨てきれず、実行できなかった。

そこに現れた霊体のジェダイマスター・ヨーダが、火をつけ、「そんなものは、ただの本だ」と言う。

ルークのさらに先人の、誰かが書いた本。その人も、ブレながら書いたに決まっている。
ヨーダの言葉で、ルークは完璧を求めることから解放された。

これは、過去作のプレッシャーと戦う現スタッフの、「スター・ウォーズは、ただの映画だ」という解放宣言。

先人も、正解が分からない中で進んだはず。先人が完璧という幻想を捨てよう。

カイロ・レンの反逆

主人公レイと悪役カイロ・レンは、表と裏。

『フォースの覚醒』で、旧作の英雄ハン・ソロに拾われたレイと、父であるハン・ソロを殺したカイロ・レン。

先人に可愛がられて正面から恩恵を受ける人と、迎合したくない気持ちからトガる人。
のし上がるモチベーションが対照的な2人。

そんなカイロ・レンが『最後のジェダイ』でぶちかました。
自分のボス、スノーク最高指導者を、あっさり殺したのだ。

スノークは『フォースの覚醒』で悪の黒幕として現れた、謎だらけの存在。
それを、正体の説明などなく、あっさり殺した。

一生懸命スノークの正体を考察していたファンに対し、カイロ・レンが出した答えは、「こいつの正体なんて、どうでもいい。おれがトップに立つ」。
スノークにも従わないし、映画のセオリーにも従わない。

カイロ・レンは、「シス、ジェダイ、スカイウォーカー…もう何も関係ない!」と、過去の歴史に囚われない宣言をし、新しい悪のボスになった。
ベイダー不在のSWに、頼もしい新悪役が誕生した瞬間。

主人公、レイの秘密

前作で、出生が謎のまま登場し、SWの新しい主人公になったレイ。

皆が気になっていた、レイの親は誰なのかという疑問の答えが、『最後のジェダイ』で明らかになった。

彼女の親は、何者でもなかった。

飲んだくれの親が酒代のために売り飛ばした子供。それがレイ。
自分は特別なんだと思いたかったレイは、ショックを受ける。

カイロ・レンは彼女に言う。「お前は、この話にいなかった」。
SWは、スカイウォーカー家の人間たちによるお話だった。レイは、そこに入る余地のない、何者でもない血筋の子。

しかし、カイロ・レンは続けて言う。「でも、今はちがう」。
血筋に関係なく、レイはもう主人公だ。悩み、怖がりながら、冒険して戦ってきたレイは、観客にとって、もう立派な主人公になっている。

誰だって、壮大な宇宙の主人公になっていい。

田舎でくすぶっていた青年が、冒険に出て主人公になったように。

スター・ウォーズを破壊した先に創られたのは、まさしく『スター・ウォーズ』だった。

完結編への期待

結局、スカイウォーカー家の話?
どこの血筋でもいいんだ!と言っておきながら、完結編のタイトルが『スカイウォーカーの夜明け』。
また、本人が吹っ切れても、カイロ・レンには実際、スカイウォーカーの血が流れている。
最後、先人とどう折り合いをつけるのだろう?

カイロ・レンは悪役としてゴールできるのか
キャラクターとしてカイロ・レンに与えられた課題は、善の心を取り戻すことではなく、悪役っぷりが極まること。
彼が悪役として完成しながら、シリーズはハッピーエンド。そんな終わりが観たい。

サポートは、上空から怪鳥が持っていかなければ、土岡に届きます。