痛い風のこと vol.1

足を切り落とそうかと真剣に考えたと脅されたり、痛み止めを打ちながら釣りをしたなんて武勇伝を聞いたり、ビールはやめといたほうが良いとか、魚卵だけはよせなんて話を聞いたりした。

いつかは僕にもそんな日がやってくるのだろうと覚悟はしていた。しかし、あんなに何の前触れもなくやってくるものだとは思わなかった。

それはまるで「風のように」やってきた。

ゴールデンウィークは仕事でお世話になっている人や、新卒で入った会社の同期、地元の同級生なんかと楽しく過ごしていたのだけれど、その最終盤の5日の夜に、そいつは音もなくやってきたのである。

最初は小さな違和感だった。

その日は写真家野口と、長身イケメン既婚者くわげと飲んでいた。途中、野口の彼女も合流したりして、過去の話からこれからの話まで、有意義な時間を過ごしていたと思う。

一軒めは焼肉で、二軒目のスペインバルはあいにくテーブルが満席だったので、テーブルがあくまでカウンターで立ち飲みすることにした。
思えばこのときに違和感とも言えない、ちょっとしたやな感じ、予兆のようなものがあった。
左足親指あたりがぴりぴりとする。スニーカーに何かトゲでも入っている。そんな感じがした。飲食店で靴を脱ぐというのは憚られるので、スニーカー内で足の位置を変えてやり過ごした。

そのあとテーブル席があいて、仕事や将来など、わりに熱い話をした。話に集中してそれどころじゃなかったというのもあったが、足の違和感は特に感じなかった。

楽しい宴席も終わり、帰路についた。バス乗り場に向かっているときに、またピリッとした感触がした。うちに着くと、コンビニで調達した内緒のビールと、その前日に酔っ払った自分が買ったであろうペヤングで、よせばいいのに「しめのみ」に入っていた。ここで初めて「痛み」を知覚した。足を床につくと痛みがはしる。

オーケー認めよう。
確実に、なにか思わしくないことが持ち上がっている。


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