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映画独り言。(ダンサーインザダーク)

「ラース・フォン・トリアー レトロスペクティブ2023」が名古屋のシネマスコーレで上映されていた。
私は大好きなビョークが主演のダンサーインザダークを観てきた。

メンタルがあまり強くない私はミッドサマー鑑賞を友人に止められた。ダンサーインザダークも、「救いのない究極の鬱映画」と言われていたので観るのを避けていた。
しかし、3月に生で聞いたビョークのミュージカル映画を観ないなんて…しかも映画館で上映するなら、観に行かねばならないと思い行ってきた。
↓来日時のnote

早めに映画館に到着して整理券をゲットし、開場時間に戻ると人が沢山いた。

映画のあらすじ
アメリカで暮らすセルマはチェコからの移民である。
息子ジーンと借家のトレーラーハウスで生活するセルマはとても貧しいが、隣人や仕事仲間たちに支えられつつましく生活していた。
視力が悪く、常に眼鏡を身に着けているセルマは大のミュージカル好き。
通っている小さな劇団の講演会では主役に抜擢され、ミュージカルの舞台で歌って踊るという夢を叶えるために練習に励んでいる。
しかし、セルマには誰にも言っていないある秘密があった…。

公式ページより

※以下、ネタバレ含むのでご注意下さい。

劇中にはビョークが歌うシーンが何度も出てくる。
確かに内容は暗くて悲しいけれど、ビョークの美しい歌声で掻き消されていた。

カメラのアングルも独特で見ていて楽しかった。手持ち撮影なので少々酔う。

ミュージカルシーンも美しい。
ビョークの歌声に癒やされながらも、物語はどんどん不幸になっていく。
遺伝性の目の病気のため、せめて息子には手術を受けさせようと必死にお金を貯める。しかしその大切なお金は友人に盗まれ、ありもしない事をでっち上げられてしまう…
このトラブルが悪化し、セルマは犯罪者となってしまう。
目が不自由な事により避けられない事態に…
なかなかしんどい内容だった。

ドラマシーンはリアル、空想のミュージカルシーンとは大きく違い、不幸を吹き飛ばす勢い。工場の音が楽器のようになり、汗流して働く人が歌い、踊る。

どこから鬱映画になっていくのだろう?そんな期待をする、薄気味悪い自分もいた。
ハッピーエンドよりも後味悪い方が好きである。
前情報なしに見た人は、一体どんな気持ちなのだろう?

しかし、甘かった。

ラストシーン、ここまでは描かないだろうという所まで描かれていた。
ビョークの迫真の演技に持っていかれて、まるで目の前でそれを見てしまったかのような衝撃…

少し気分が悪くなってしまった。
心臓も、ドキドキしている…
ご飯食べられない…

後部の座席からはすすり泣く声が聞こえた。
一体、何を選択すれば良かったのだろう…脱力してしばらく立ち上がれなかった。


ラース・フォン・トリアーはデンマークの映画運動「ドグマ95」提唱者の1人。
ドグマ95は映画10箇条で、カメラは手持ちであることや、全てセットを使わないロケ撮影であることなどのルールがある。

映画に詳しくないので、憶測だけれども、ドグマ95は若い映画作家を救うために提唱されたと言われていて、ハリウッド映画のようなものである必要ではない事が訴えたかったのだろうか。

だから、きっとこういうラストなのでは?という観客の想像の、遥か斜め上を行く映画にしたかったのかなと思ったら、そういうラストになるのも不自然ではないかな、と思った。

それを知らずに見たら、酷い、あんまりだ、悪趣味だ、で終わってしまうかもしれない。
この映画の訴えたいことは、きっと別の場所にあるのだろう。

処刑場に向かうまでの107歩は本当に素晴らしかったし、この歌は最後の歌ではないと、渾身の歌声を聞かせてくれたこと、当初予定されていた結末(息子の手術が失敗した後に絶命する)があんまりすぎるとビョークが監督に交渉したというエピソード。

全体的にはとても良かったが、私にはかなりキツイ内容だった。

しばらく映画について考える日々が続く。

久しぶりに、書き終わるのに時間が掛かってしまった。沈んでしまったわけではないけど、いつもまとまりのない文がさらにまとまらずにいた。
前日に「目の見えない白鳥さん、アートを見に行く」を観ていたのでギャップが凄かった…
観る順番、逆が良かった。

あたまの中を文字にするって難しい。ビョークの歌声は素晴らしい。


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