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アート独り言。(勅使河原三郎・ワルツ)

愛知県芸術劇場芸術監督・勅使川原三郎さんの2023年新作「ワルツ」を観てきた。

勅使河原三郎さんは、山口小夜子さんの映像作品「T-city」の監督をされていて、度肝を抜かれたので(山口小夜子さんのダンス、尺の半分がピンぼけ、シルエットのみというトンデモ映像)一体どんな演出をみせてくれるのだろう?

振付・演出・装置・照明・衣装:勅使川原三郎

アーティスティックコラボレーター:佐東利穂子

ハビエル アラ サウコ

ほとんどのパートを勅使河原さんが担当していた。

3人のダンサーが、軽快なワルツに合わせて交互に軽やかに踊る。

見た目はとても優雅だけど、全身を大きく使ったダイナミックなダンス。

大ホールという大きな舞台を3人で埋める、空間の使い方の上手さ。

舞台装飾などは一切なし。無駄なものを全て削ぎ落とし、舞台にある暗幕を上手く利用していた。

おそらく、舞台では隠すべき場所を露わにしてしまった…
舞台袖にある幕が全て上がったのを初めて見た。

幕がこんなにも複雑な構造だということにも驚いた。

一番後の幕も全て上がり、バックヤード?までも披露された。

広い舞台が更に奥行きが広がり、3D空間のようにも見える。

出演者でないと見ることが出来ない場所を、演出として上手く使われていた。

とても衝撃を受けた。

照明も美しかった。見たことない照明の演出。

こちらも1色のみが使われて、客席からどのように見えるかをちゃんと考えられている。

映画のスクリーンのように見えたり、絵画のフレームに見えたり。ダンサーのエッジが浮かび上がるように計算し尽くされていた。

ずっとダンサーにスポットが当たらずにサイドからの照明で強弱が付けられていた。

一体どうなっているのだろう?

舞台袖の幕が全て上がった時に照明も全て見えた…
照明の数の多さに驚く。

音楽はワルツ。音量が絶妙だった。

軽快なダンスの「動」
ゆっくりな動きの「静」

静の時は音楽がかすかに遠くで聞こえている。

なんという悲壮感…

私には舞台に出たかったのに出れなかったダンサーが、会場の外から漏れる音を聞いているかのように見えた…

激しい動きにも関わらず、足音は全く聞こえない。静の時も聞こえなかった。
途中、足を踏み鳴らして音を響かせる演出が、とても引き立っていた。

シンプルでありながら、壮大な演出だった。
公演後鳴り止まない拍手。

何度も何度も挨拶に現れるダンサー。

腕がダルくて痛くなるまで拍手したのは初めてだった。

おわり

↓T-cityについて書いています。


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