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裏切る、裏切られる。

「でもね、Tちゃん、この子があなたのこと裏切ると思う?」

上司のTと共に顧客のA先生の事務所へ訪問していた時の話だ。

A先生は元従業員の方から訴えられていて、あんなに手塩にかけて育てて、こんなことになるなんて、悲しくてやりきれない、という様子で話をしている。
「先生は優しすぎるんですよ・・・。」
Tが話す。私はかける言葉がなく、黙って聞いていた。

「でもね、Tちゃん、この子があなたのこと裏切ると思う?」
A先生は私を指さし、意地悪く聞いた。

「思います。」
Tのこの言葉にA先生は驚き、私も内心驚愕した。
最初は先生のフォローのために発した言葉かと思ったが、その言葉にはその場しのぎの言葉ではなく、確かな意思を感じた。

私にとってその上司は尊敬すべき人物であり、自分自身では裏切る気持ちなんて毛頭ない。そんな関係性で、それは上司もわかっていたはずだが、「思います。」と言った言葉の真意をその場では聞くことが出来なかった。

部下に裏切られる

大なり小なりあれど、管理職になったら皆が感じるストレスの一つだと思う。
「期待していたのに」裏切られた
「約束していたのに」裏切られた
「目をかけていたのに」裏切られた
色々な裏切りがあるが、基本的に「TAKE」が返ってこないというストレスですね。

ここにはもしかしたら「部下にナメられる」というものも入ってくるかもしれない。

この類のストレスからはどうやって逃れたらいいのだろうか。夜はらわたが煮えくり返って眠れないほどのストレスを抱えることがある。
(相手は何にも感じてないのに、なぜ、俺が、こんなに腹を立てなければいけないんだ!!)
頭の中で自分の正当性をグルグル考え、「次はナメられないように」という対策を立てる。

必ず「TAKE」を取るアプローチ

そう、これを究めれば自分のストレスはなくなるのだ。
・期限を定め
・数値を定め
・期限から遅れる、数値から足りない場合は居場所を無くしてしまう
上記が満足にできるようにたっぷりと時間を与え、「できない」と言わせない環境を作ってしまうのだ。
上司にはそれができる。
「必ずTAKEを返してください。仕事ですから」

組織のコントロールはとれ、仕事も前に進む

対策をしてから「TAKE」が返ってこないストレスは減ってきた。
それでもできない人はできない。「できない人」というレッテルをうまく使って「できるようにするにはどうしたらいいか」という「GIVE」を与えてみた。
私は、GIVEアンドTAKEが成立していると思っていた。

ついてこれない部下が多発

チームが整い、数字も出てきた感覚があった矢先、ポツポツと風の噂が聞こえてきた
「言っていること、やっていることは正しい、正論だけど、いい方が冷たい」
顧客からも「もう少し部下に優しくしてあげないと、辞めちゃうよ」
ちらほらと陰口が聞こえてきた。

詰めが甘いというかなんというか、誰が何を言っているのかというのがこちらにわかるというのも腹立たしく「ナメられている」という怒りがまた込みあがってくる。
「ようし、そうか、そう来るのであれば、俺はこうしてやるぞ」
とまたもう一つ打ち手を考え、対象の敵に対して目の前から排斥するような活動をし始める。

「あの時、こんなことしてやって、あんなことしてやって、この件だってこうしているのに、裏切られた!!飼い犬に手を噛まれるなんて、正にこのことだ。どこかで仕返ししてやる。どこかで仕返ししてやる・・・!!」

ある部下は体調を崩し休みがちになり、ある部下は精神科の診断を盾に休職代行サービスを利用。傍から見ると崩壊してそうなチームだが、そんな状況になってもなぜか実績はあがる。表面上は普通なのだ。

こうなったら、もう解散するしか心に平安が訪れない。
It’s Over.君たちとはもうおしまいだ。

このチームはこれで終わりで別にいいけど、あれ、待って。じゃあ次回編成はどう立ち回ったらいいの?
中間管理職って、ずっとこんな感じなの?
うまくいかないことをずっとやり続けるって・・・。そんな、辛すぎないか。

GIVEとは何か

多分、ここだ。
GIVEがないのだ。
いや、何かしら「相手のためを思って」GIVEしていたよ。
でも、そのGIVE、自分の都合に合わせたGIVEじゃなかった?
自分の作戦、メソッドに合わせたGIVEは相手に対する「特別」にならない。

いや、もちろん、心底相手から尊敬されていて惚れられているならそのGIVEは「欲しい!」のだろうが、残念ながら私は相手に愛されていない。
その事実も「ナメられている」と感じるかもしれないが。仕方がない、事実だから。

なぜ・・・?

なぜなら「GIVE」していないからだ。

裏切ると思う

元上司のTと近況を話し合った時があった。
「Tさん、あの時まっすぐ「裏切ると思っている」って言いましたよね。衝撃的でした・・・」
「私は、本当に裏切ると思っているわけではなく、「信じすぎない」ということを言っているんだと理解したのですが、どうですか?」
苦笑するTさん。私は続けて
「例えば、仕事の期限も皆が守ればもちろんいいが、守れない人がいても仕事に支障が無いように立てつけることが大事で、その辺り含めて「裏切ると思って」意思決定すると解釈しました。」
うなずくTさん。その通りだという回答を得て、私は得意げになり、調子に乗りもう一声
「私、部下に対して気持ちを入れすぎてしまうんです。相手を信じてしまうというか、入れ込んでしまうんです。信用しすぎてるんですかね・・・。」

そこで、Tさんがすかさず
「それはな、お前違うぞ。すべてがお前の思い通りになると思ってやっている。それは信用しているのとは違う。お前は部下を一切信用していない。都合よく解釈して被害者面したらいけない。そういうところだ。」

言葉を発した瞬間に言われると思ったし、言われた言葉の半分も頭に入っていなかった。おそらくその時の私の心自体もTさんは感じただろう。

振り返ってみても、敵わないなぁ。。。

「そういうところだ。」

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