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6年ぶりの政権交代となったニュージーランドドル相場の行方!

先月の総選挙で、国民党が勝利し、6年ぶりの政権交代が実現した。足元、騰勢を強めるニュージーランドドル円相場の今後を占った。


1.新政権の政策運営

6年ぶりに政権奪取した国民党は、減税や歳出削減による小さな政府を目指すことで、景気浮揚を図る方針を打ち出している。また、金融政策に関しては、ニュージーランド準備銀行(以下、ニュージーランド中銀)の役割として、物価の安定にのみ注力し、雇用面での役割を除外すると発表している。

2.ニュージーランド中銀の金融政策目的変更の意図

ニュージーランド中銀は、インフレ高進時に積極的な金融引き締めを行う一方、景気後退時には、雇用拡大のために利下げも行うといういわゆるFRB(米国の中央銀行)型の金融政策を実行してきたが、今後は、景気後退時には、政府による財政出動などによる需要拡大策で雇用拡大を図ることを意味する。

3.日銀の金融政策との相違点

日本銀行(以下 日銀)は、本来、「物価の安定」と「金融システムの安定」を政策目的としているが、バブル期以降のデフレ下でも、政府による積極的な財政出動は手控えられてきた経緯がある。その結果、日銀による異次元の金融緩和策という、伝統的な政策手段からは逸脱した金融政策が実行されてきており、景気浮揚のための金融政策に過度な負荷がかけられる、いびつな金融政策運営が施行されてきた。
今後、ニュージーランドでは、現行の5.5%の政策金利が当面維持されることで、実質金利の上昇が続くことが想定される一方、日銀は、既にマイナス4%に達している実質金利のマイナス状態の解消が遅れることで、ニュージーランドと日本との実質金利差が拡大していくことが予想される。

4.ニュージーランドドル円相場の行方

ニュージーランドでは、図表1の通り、インフレ率の持続的な低下局面に入っていることに加え、コロナ禍やウクライナ戦争の影響で大幅に悪化したニュージーランドの経常収支も、足元の原油価格の下落により、徐々に改善傾向に向かうことが予想され、今後ニュージーランドの実質金利が加速度的に上昇する事も考えられる。こうした実質金利と経常収支の改善は、今後、趨勢的にニュージーランドドル相場を下支えしていくことが想定され、日本円との実質金利差を勘案すると、図表2の通り、現在90円台を回復したニュージーランドドル円相場であるが、今後、2014年以来の94円台を目指すだけなく、リーマンショック前の97円台後半の水準を回復していくことも十分可能なポテンシャルを秘めていると思う。

(図表1 ニュージーランドのインフレ率推移チャート Trading Viewからの引用)
(図表2 ニュージーランドドル円推移チャート 右軸:単位 円 Trading Viewからの引用)

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20231124執筆 チーフストラテジスト 林 哲久


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