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ガラスペンとインクで紫式部の時代に思いを馳せる

平安時代の女流作家であり、大河ドラマ「光る君へ」の主人公・紫式部が注目を集めています。

「源氏物語」「紫式部日記」といった、現代に語り継がれる物語や随筆を古くから綴ったその存在は誰もが知るところです。

そのほか、彼女が生涯にわたって残した歌と詞書を収めた「紫式部集」や、ドラマの劇中に登場する漢詩・和歌にも関心が寄せられています。
和歌に親しみがなくとも、ドラマから興味を持たれた方も多いのではないでしょうか。

それらをより味わえるのが、ガラスペンとインクによる書写です。
今回は書写を通して、紫式部や「光る君へ」に登場する歌と詞の楽しみ方をお届けします。

書写に必要なもの

まずは紫式部の作品がなければ始まりません。
「紫式部集」は岩波文庫から出版されており、安価で購入できます。

ガラスペンは幅広い価格帯で売られています。
2023年に100均のセリアでも販売されるようになりました。

筆者が唯一持っているのは「今日からはじめるガラスペン インク&ペンセット 翡翠」です。
ガラスペン、ペン置き、ミニサイズのインク瓶がセットになっており、初心者でもすぐに始めることができます。

若干書き味にムラがあるものの、書き心地は比較的なめらかです。
シンプルな軸のグラデーションとフォルムも、1500円以下の価格帯に見合うデザインとなっています。
紫式部のイメージに近いのはこちらの「藤紫」です。

インクはお好みのもので構いません。
筆者はこの機会に、PILOTの色彩雫シリーズのミニボトルを買いました。
「紫式部」の名を冠したインクは一見濃密な紫かと思いきや、紙に乗せると藤の花を思わせる鮮やかさと柔らかさ。
歌の世界に没入するのにふさわしい一品です。

そのほか、ペン先を洗うための水と入れ物も用意します。

今回はガラスペンを用いますが、書写自体はつけペンや万年筆、ボールペンでも問題ありません。
使っていて気分が高まるものが一番です。

和歌の書写をするのにおすすめなのが、「MDノート 新書 方眼」です。

本文に使われているMD用紙はインクのにじみ・裏抜けがすくなく、書きやすいです。

また1ページの筆記面積が和歌一首に最適で、見開きの片方に和歌、もう片方に訳を書けば一目でどのような歌なのか分かります。

ノートを和風に飾り付け

せっかくなので、ノートの表紙を紫式部のイメージで飾り付けします。

・GAIA デザインシール 金色和風
・ハピラ ブック型マスキングシール 空 サンセット
※いずれもセリアで購入

MDノートの表紙を覆っているグラシン紙をあえて残し、透明カバーをつけました。
平安時代の高貴な女性が簾で顔を隠していたのをイメージしています。

このノートには紫式部集以外に、ドラマの劇中で藤原道長がまひろ(紫式部)に送った漢詩や歌も書写しています(後述)。
裏側は劇中の道長のイメージカラー・水色を基調に飾っても良さそうです。

実際の中身

自室で書写するのでいつもと違う机

書写は一つの見開きにつき一首です。
右に歌、左に現代語訳を書きます。

細かいフォーマットは自由に、ただし一定のルールを設けて書いたほうが見返したときに整って見えます。
実例では和歌を一段ずつ下げて書き、訳は行頭を揃えて適宜行替えしています。

最初の見開きは、新古今和歌集や百人一首にも選首されている有名な歌です。
紫式部は恋歌より、友人とのやりとりや日常の場面を切り取った歌の方が多いようです。

あまり馴染みのない古語を書いて親しみ、単に訳を調べて終わるだけでなく、書き写して理解が深まる。
さらにインクの微妙な濃淡や、紙を滑るペン先の硬質な感触が心落ち着くひとときをもたらしてくれます。

現代語訳はこちらのサイトを参照・引用しています。
『紫式部集』解読

書写に便利な「ウカンムリクリップ」

本の書写にあたり役立つのが、サンスター文具の「ウカンムリクリップ」です。

書面台やブックスタンドを使っても良いのですが、場所を取る上に持ち運びが不便です。
その点、ウカンムリクリップは手頃なサイズで、本を傷めないようにページを開いて留めておくことができます。

※人気商品につき、Amazonの価格は高騰しています(定価は660円)。
あくまで参考のためリンクを貼っておきます。

劇中の漢詩や歌も書写して浸る

ウカンムリクリップはノートを押さえるのにも便利

「光る君へ」6話では、藤原道長が漢詩の会で披露した詩と、主人公のまひろに宛てた「伊勢物語」の歌が登場しました。
これまで「歌はいらぬ」と宣言していた道長でしたが、どちらもまひろへの想いを現したものです。

元の詩や歌を全く知らなくても、どのような想いが込められているのかは知っておきたいもの。
まずはテレビの字幕を参考に、ノートに書き写します。
後日ネットで検索した内容を含めて書写したのが画像のものです。

ペン先をインクに浸し、紙に滑らせる行為は、墨と筆で半紙に書くのと何ら変わりありません。
想いをしたためる登場人物と自分が重なるような、奇妙で心躍る感覚を味わえます。

おわりに

商品そのものに惹かれて購入したはいいものの、意外と使う機会がすくないのがガラスペンです。

書写のためのお題が提供されていたり、ガラスペンでなぞるための本が出ていたりしますが、何に興味を持つかはその人次第。
せっかくであれば理解を深めたい題材を書いて楽しみたいものです。

大河ドラマをきっかけに和歌や詩を書写し、平安時代の文学に親しんでみると、実際の人物や劇中の登場人物の胸中により深く思いを馳せられます。
同時に、書くことは今も昔も思いを言葉に託す行為なのだと気づけたのでした。


今後も手帳・文具関連の記事を予定しています。

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