秋の匂い

洗濯物を取り込んだら、なんだか一日の仕事が終わりな気さえする。実際は晩御飯づくりが待ち構えているんだけれど、寝る前に美味しくて素敵なものを食べると決めているから、案外気が楽だ。

ベランダに出ると、もう秋の匂いがする。
実際はなんの香りもしないが、さみしさが体の中に入ってくる。
帰りたいと思う。我が家はここなのに。実家にだろうか。確かにコロナ禍で一年帰れていないけれど、実家にいればそれはそれで、どこかに帰りたくなるのだろう。

人は秋にどこに帰りたくなるのだろう。場所ではない、その人なりの心象風景があるのかもしれない。

泣きながら走った肌寒い土手と夕暮れを思い出しながら、ベランダの窓を閉めた。

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