妻と文体の変遷

時たま後ろを振り返ると、昔の自分の文章は華美であったなと思う。
それも居心地の悪い華美さだ。まるで誰かが素晴らしいと連呼した価値観を、コピーアンドペーストしたようなものだ。しかも何の疑いもなしに。

純心の特権か、それとも若さ所以の驕りだったのか。

あちゃあ、と頭を抱えながら振り返る。
考えているうち、隣の旦那がころんとこちらに寝返りをうつ。
寒いのかしら、あら足が出た。鼻がかゆいの。眩しかない?
ひとつずつ心中で実況中継するうち、華美さに対する恥が少しずつ霧散する。

無数にある選択肢の中で、少なくともいまはこれが私のスタイルだ。

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