Grandpa's cloud(後書き)
雨の日が嫌いになったのは、あの人が雲になってからだ。
三十三年前、冬、広島。
僕が初めて「死」に直面したその日、空には雲が浮かんでいた。
じぃちゃんが死んで、一人になったばぁちゃんは、その後しばらくは元気に山を守っていました。
あの頃と変わらない笑顔で僕らを迎えてくれました。
しかしそのばぁちゃんも21世紀を迎えてすぐ亡くなりました。
静かな、ほんとうに静かな死に際でした。
「死」というものをはっきりと理解できる歳になっていた僕は、次第に冷たくなっていくばぁちゃんの手を握りしめ、泣き叫びました。
「待って!待って!」と言いながら。
ばぁちゃんの僕に対する最期の言葉は「よっくん、彼女は何人おるんね?」でした。
当時彼女がいなかった僕は返答に困り、苦笑いで誤魔化したのはいい思い出です。
今頃じぃちゃんとばぁちゃんは仲良く暮らしてるんだと思います。
その証拠に、あれから一度もじぃちゃんの雲を見てないんです。
それは隣にばぁちゃんがいるからなのでしょう。
いろんなことを教えてくれたじぃちゃん、ばぁちゃん、ありがとう。
これからも仲良くね。
じぃちゃん、甘いもの食べ過ぎたらまたばぁちゃんに怒られるよ。
あと、植木買うのもほどほどにね。
ばぁちゃんも、元気でね。
そっちでも気をつけて。
そんなわけで、このお話はここで終わりです。
僕が雨を好きではない理由、そして雲が好きな理由、おわかりいただけたでしょうか。
この記事の画像はお借りしたものではなく、下蒲刈島のじぃちゃん、ばぁちゃんが眠るお墓から見える景色です。
見上げた空には、いつもあの人の笑顔がある。
だから僕はこれからも、上を向いて生きようと思う。
どんなに辛くても、どんなことがあっても。
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