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『桜木』

小学生の頃
冬の桜を見て 泣いたことがある
春にはやさしい色で僕らを迎え
夏には緑色した セミのベッドになり
秋にはオレンジ色で夕焼けに重なってた
桜が

冬になって 死んだ
そう思って 泣いた

どしたん?なんで?寒かったん?
とか言いながら
水をやり 掌を当て 耳を近付け
なんとか生き返るように お祈りした


春になって 久しぶりに学校に行くと
そこには
満面の笑みで 僕らを迎える
桜木があった

ちょっとは連絡しろよ
とか思いながら
うれしくて
泣きながら 笑った

静かに待ってたんだよね
春がくるのを
そう
いつかくるんだよね
春は


そんなことを 教えてくれた桜木は
あの校庭に
今はもう ない

けれども
今は 泣かない
待つことのたのしさを教えてくれたから

だから
じっと 待ってようと思う
春になって またどこかで桜木を見たら
あの校庭の桜木と
小学生の頃を思い出して
今度はたぶん 笑う

うん

桜木に教えてもらったことは
ただ泣くことじゃなく
ただ待つことじゃなく

笑うことだったんだね

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