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折々の無価値な詩

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無価値なのは無料だからです。
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記事一覧

恋歌七首

初めて嫌いな季節を忘れた、と。それは初恋というやつです 終止線迎えてなおも響く恋 お帰り…

ティラノ
5年前
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没った短歌いくつか

うららかな週の初めの轢死体軌条に咲きし柘榴翳りぬ ほろほろと脂の溶ける夢だった 寝惚け眼…

ティラノ
6年前
2

短歌七首

ありふれた尸を焼きし葬儀屋の背広を清む濃いファブリーズ 無理筋ばかり通しては「悪いね」と…

ティラノ
6年前
1

月と硫黄

鍋に浮き立つ卵を忘れ 生保レディを殴打する午後 真白き襟は赤く血まみれ 俺の腕に絞められた…

ティラノ
6年前
3

「喩えないでくれ 『そのままの君』ですら喧しい ヴォカリーズをやろう ぼくらだけの純粋持続…

ティラノ
6年前
3

行軍

なんという処だ 泥濘みで足が厳しい 微睡みもとうに逃げ去った 襤褸腐った上着に 饐えた垢の…

ティラノ
6年前
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生物史

不遜な脳髄に 紛い物の血肉 同一集合内で順序を定義したがる 二本足の生き物が生まれる前 アノマロカリスが万物を食っていた 繊細に過ぎる 二股の末梢神経で タンチョウのように爪先立つ 忙しない骸骨の時代 見えますか?あれがカンブリア宮殿です 太陽風が穏やかになった頃 アリストテレス→ノストラダムス→ホモサピエンスの順に ネオ・アノマロカリスが食い滅ぼし 数学と預言と余剰の歴史が終わりました 今日の授業はここまでにします

裸者へ

全てを失ったか? まだだ 気道を確保し 拳を固くせよ おまえはおまえとして 始原より最後の個…

ティラノ
6年前
3