キャリア・起業家教育のための日記

新たなビジネスを考えるにあたり、”不”を探す方法が有名である。現在のサービスにおける不満、不便、不安、不信、など。例えば「通販で靴を購入しても届いたら足にあわない」という不満。古典的な事業アイディアの探し方であり、よくリクルートでは使われる方法だ。

だが、既に様々なサービスが安価に提供される昨今では、「明らかな不」は減っているし、あっても見つけづらくなっている。では次に「隠れている不」を目指す方法になるが、「隠れている不」で事業的規模(そこにお金を払う人がたくさんいるかどうか)のあるものを探すのは簡単ではない。

もう一つのやり方として、感動から類推するという方法がある。

感動といっても涙が出るほど感激するものではなくても、ちょっとした驚き、プチ感動でいい。

例えば私の経験で言うと、15年も前になるがアメリカ留学中に友人らとお酒を飲むとき、Samuel Adamsというボストンのビールが非常に人気だった。ブラウン系というのか今のIPAに近いのか、日本のピルスナーと違って香ばしさと苦味が心地よく今でも私は大好きだ。

最初にSamuel Adamsを飲んだときは、それこそプチ感動したものだ。「あー、この香ばしさ最高やん。これが日本にもあればなあ」と。

その頃、日本にはクラフトビール市場はなかった。クラフトビールはおそらく輸入ビールを扱うどこかの店では飲めたし、通販を探せばおそらく買えたのだろう。だが私自身触れる機会はまったくなかったし、そこに市場はなかったと言える。

ではそのときに「ビールに対して何か不満や不安はありますか?」と人に聞いたところで「いや、別に」と沢尻エリカばりの回答が来ただろう。でも当時、留学していた日本人も皆Samuel Adamsが大好きだった。飲んでいると日本のビールが物足りなく感じられると皆言うのだ。だから市場性はあったのだ。

留学を終えて帰国し、数年後くらいから、川越のKoedoビールやよなよなエールを始め多くのクラフトビール、地ビールが市場を獲得していって、主流とまでは言えないが今はビール市場の一角を担っている。

その当時、クラフトビールの市場性を確信してビール事業を始めておけばよかった、というのが私の反省の一つである。

つまり、不満や不安がない業界でも何か感動する経験をしたときに、「これは横展開できるのでは?」「なぜ今まで経験してなかったのか?何か阻害要因があったのか?」「この感動を違う業界に応用できないか?」

初めてGoogleで検索したときもそうだ。「おー、こんな一瞬でこんな精度の高い検索結果が出るものなんやー」とプチ感動した。その当時もYahoo!は存在し、検索といえばYahoo!だったのだが、それしか知らないものだから、検索結果に関係の薄い結果が並んでいても「それが普通」と思っていたのだ。Googleを使って初めて、Yahoo!の検索精度にストレスがあったことに気づく。

Facebookを初めて使ったときも、連絡先が一切わからなかった小学校時代の友人とも繋がることで感動したものだ。それまでは小学校時代(つまりメールもSNSもない時代)の友人は連絡先は昔の自宅電話番号くらいしかなかったのが普通だったから不満でもなかった。だが、一度繋がる感動をしてみると、さらに繋がりたくなるという欲が生まれる。さらにFacebookを使いたくなる。

先日、中国に行ったらAlipayがとうとう海外クレカでも対応開始になっていて、全てをAlipayで支払えた。これまでは現金を持ち歩くしかなく、残額とか気になりながら旅行していたのが、全くストレスフリーになった。確かに小さな店でもタクシーでも露天でもどこでも使える。財布が全く要らない(逆に電池切れが全てを崩壊するのでモバイルバッテリーは必須)。

では、翻って考えるとなぜそれでもパスポートを持ち歩くのだろう。なぜ今でもガイドブックを持ち歩くのだろう(私のケース)。

パスポートがアプリ化されない理由はなんだろう?防犯?でも、盗まれたときのリスクがより低くできるのがアプリ化だったら、理由はなんだ?顔認証、指紋認証の方が安全ではないのか?

ガイドブックを持ち歩く理由は?一度の旅行のために購入するのはもったいないから、Kindleでも購入しない、だから図書館で借りるしかなかったから、か。だったらガイドブックの電子書籍レンタルサービスがなぜ流行らないのか?地図アプリや予約アプリと連動していたら超絶便利じゃないか?

などなど、一つの感動から横展開を類推することができる。旅行だけではなく日常的に持ち歩くという点では、なぜ我々は未だにPCを持ち歩いたりするのか?なぜ学校のテキストブックを持ち歩いているのか?小学生はなぜ教科書を毎日持って行って持って帰って来なければならないのか?

感動体験から翻って考えると日頃普通に思っていることが隠れている不にも思えてくる。

起業を考える人なら、これくらい普通に毎日考えていることと思う。毎日の蓄積が思考を深め、事業アイディアを洗練化させる。

だったら、これを高校生から、大学生からやっていれば凄い蓄積になるのではないか。

高校生や大学生の日常生活も勉強・部活・バイトで忙しく、日々は簡単に過ぎ去ってしまう。だが、毎日日記をつけるようにブログやSNSでもいいので今日の発見や今日の気づきを毎日付けるだけで、その人の思考が深まり蓄積されていくと思うのだ。

学校現場でもよく日誌のように書かせるものがあるが、もっと電子版で簡単にかつSNSのようにFeedback得られる仕組みで毎日の気づきや学び、世の中のサービスに対する不満・不思議、を記録し共有出来るようになればキャリア教育・起業家教育のための深いナレッジ蓄積になるはずである。

どこかの先生、もうやってますかね?



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