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議論検討:赤見かるびさんの「うるさいなぁ」事件

ゆっくりしていってね!

ストリートファイターのプロゲーマーと、有名配信者がチームを組んで新発売のストリートファイター6で戦う『REJECT FIGHT NIGHT』が大盛り上がりだったわね。

――というのは、別にいいんだけど。(興味ない人はないだろうし。)

格ゲー業界のレジェンド・ウメハラ選手とチームを組んだVTuberの赤見かるびさんが過去に起こしたネット炎上がふたたび注目される流れがきているわ。

とはいえ、もう笑い話として消化される段階に入ってるから、おもしろ目線で注目されているだけで、「非難が殺到して再燃!」って感じではないわ。平和よ。

炎上の発端は、多人数参加型の『Rust』(後で説明するわ)というゲームでのマナー違反ね。

それで私がよく取り上げるキャンセル問題になった訳でもないんだけど、この件で赤見かるびさんがShinjiさんという別の配信者さんにお説教される動画があるのよ。(この動画自体も面白いのだわ。)


個人的に「あ、これ『議論の題材』としても面白いな。」と思ったから、超久々に議論解説をする記事を書いちゃうわよ!

※私は3年ほど前、はてなブログで「ネット議論お嬢様」という、お嬢様口調で他人の議論を解説するシリーズをやっていたのよ。

というのも、YouTubeのコメント欄を見たら、「Shinjiさんが正しく良いことを言っていて、かるびさんが屁理屈を言っている。」と評価されてるんだけど(だからこその炎上だった訳ね)、私は評価がまったく逆なのよ。

Shinjiさんは善意の人ではあるんでしょうけど(好感は持ったわ)、発言内容はほとんど間違っていて、かるびさんは相対的に知的・明晰だと思ったわ。

かるびさんの炎上内容

簡単に炎上事件の内容だけ説明しちゃうわね。

まず、『Rust』という、多人数参加型のゲームがあるのよ。内容としては、マインクラフトとApexを合体させたような感じ。みんな同じゲーム世界の中でアイテムを集めて、お家や武器を作って戦うの。

もちろん、他プレイヤーを倒したり、うまくお家に侵入したりするとアイテムが奪えるから、そこが大きな楽しみの一つね。

でも、このゲームシステムの時点で、鋭い人には察しがつくと思うんだけど……。

まあ揉めるし喧嘩になるし、そして、ゲームが用意しているルール以上のローカルルール(マナー)を生み出す人も、当然ながら大量に出現しているわ。

ネットどころかリアル職場でもよくあるけど、いわゆる「自治厨」の問題ね。(もう若い人は知らない言葉かしら?)

マナークリエイターとか今は言った方がいいかもしんない。有名なところだと「お辞儀ハンコ」とか。(だから例示が若い人向けじゃないんだって!)

『「お辞儀ハンコ」日本にはびこる謎のビジネスマナー』より


外から見てるとすごくバカバカしいわよね。でも、これが通用している職場だったら従わないと「お辞儀ハンコになってないぞ。ほら、捺印し直して。」と差し戻しを喰らうわ。

誰かが「こうしないと、さすがに失礼すぎる。」なんてmy正義を言い出しては、しばしば起きる現象ね。

赤見かるびさんの『Rust』に話を戻すと、彼女は他の人のお家に侵入したのね。ただ、その方法が、ゲーム内で「通常の侵入法」とは違って、「ドアにかけられたパスワードを勘で当てて侵入する」というものだったわ。

別にチートでパスワード解析した訳じゃないわよ。侵入したいお家の持ち主がVTuberプロダクション『にじさんじ』に所属する方だったから、かるびさんが「2434(にじさんじ)」がパスワードじゃないかと踏んで試したら当たったっていう。


まるで弊社のようなセキュリティ意識の低さ……。

完全に余談だけど、弊社のとあるシステムのパスワードは「password」だったわ。辞書攻撃開始から0.01秒で終わるパスワード設定してんじゃねえわよ。(※現在は私が情報システム部門にメールを送って変更済みよ。ただし、私が変更するまで数十年これだったのは事実。よく無事だったわね。)

それはさておき。

というわけで、パスワードを勘であてたことで、「Rustにおける"正しい"侵入ではない。」とmy正義is絶対な人々から非難を浴び、更に「そういう行為はやるべきでない。」というShinjiさんのアドバイスに対し、かるびさんが「うるさいなぁ。」と返したことで更に炎上(冒頭の動画がそれよ)。

では、ちょっと前置きが長くなっちゃったけど、この議論の内容を見てみましょう。

議論の検討

「常識」に頼る危うさ

かるびさんは、Shinjiさんから「壁を壊して少しのアイテムを盗んでいくのはこのサーバーでは良しとされているが、パスワードを解除して侵入するのはラインを超えていて駄目だ。」との旨を指摘を受け、「ルールってどこに書いてあるの?」「無いよね?」と返したわ。

まあ、そんな細かいこと書いてないから、Shinjiさんは

「現実に他人の家に入って盗みを働いたりはかるびもしないはず。それは常識的にやっちゃいけないからで、Rust内でも同じだから、書いてない。」

との旨で応答。

……うん。とりあえず、Shinjiさんは法律で明記されている住居侵入罪・窃盗罪を知らなくて、常識(マナー)という観点でだけ盗みをやっていない人だとも思ってしまうご発言ね。(それとも、口が滑っただけかしら? そう信じたい所ではあるわ。)

現実において「どこに盗んではいけないって書いてある?」って聞かれたら、普通に「刑法235条に書いてある。」と答えられるわよ。

だから、この場合のたとえ話としては成立してないわ。最も重要な明記されているか、明記されていないかが違うから。

当然、かるびさんにも説得的に刺さらない。当たり前よ。だって完全に間違ってるんだもの。

そして「常識的に」は議論において極めて危ういワードよ。まず、「Rustにおいて、パスワード解除を用いて他プレイヤーの家に侵入してはいけない。」という常識は、少なくともかるびさんには共有されてなかったわよね? これは端的に事実よ。既に常識の食い違いは発生しているワケ。

更に、リスナーさんのコメントや、他の配信者さんのお話も見てみると、「別にいいんじゃね?」「むしろ面白い。」「Rustらしい振る舞い。」という声も多数あったわ。

つまり、「常識」と言ってみたものの、実はそんなに共有されてない。

実際、常識だと自分では思ってても、他人にとってはぜんぜん常識じゃないことは多いのよ。読者の皆さんだって、窃盗罪が法律で明記されていることくらいは「常識」でみんなが知っていると、すっかり思い込んでた人も多いんじゃないかしら?

それはね、いくらなんでも他人に期待しすぎよ。そんなんじゃ社会でやっていけないわ。

「常識は色々とはいえ、こればっかりはさすがに常識でしょう!」というラインを、世間の人々は簡単に超えてくる。もはやいちいち驚きもしないわ。「自分にとっては常識だったのに、この人にとっては常識じゃなかった。」って経験を1,000回も積めば、1,001回目は「あ~、またか~。」で終わりでしょう。

加えて、仮に何らかの知識が「常識」であったとしても、内容が正しいとは限らないわ。「頭数だけはそろってるが、単に全員間違ってる。」――これも「社会あるある」よ。

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