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Twitterの元CEOが現時点でのWeb3領域を批判?その主張とは

Twitterの元CEOであるジャック・ドーシー氏はTwitterを創業したのち、トップの座からは降り、仮想通貨やWeb3領域に投資をしている業界の大物投資家として知られています。そんな彼がWeb3や仮想通貨の領域にかみついたという記事が一時期話題になりました。一体どういう意図での批判なのか、果たしてその批判の内容とはどのようなものなのか、調べてきたのでみなさんに共有したいと思います。

まず断っておきたいのは、ジャック・ドーシーは熱心なビットコインの仕組みを高く評価し、自身もビットコインを多数保有しており、さらにWeb3領域にも積極的に投資をしているという事だ。

Web3について簡単に説明するとWeb3.0の実体は、ざっくり言うとDApps、つまりブロックチェーンを活用した分散アプリケーションだと思っていい。

DApps二は大きく二つ特徴がある。それは、秘密鍵で認証共有のするということと、資金プールの存在である。

秘密鍵はユーザーが管理する。このことが「データやデジタル資産の所有権がユーザー側にある」ことを示す。DAppsへのサインアップやログインは、秘密鍵が手元にあるため、ワンクリックでデジタル署名をするだけだ。

秘密鍵の管理は最初のうちは厄介に思えるかもしれないが、DAppsを使い慣れるとワンクリックでログインできる仕組みはごく自然な操作性に思えてくる。従来のWebサービスのサインアップのように、ユーザーIDとパスワードを決めて入力し、その他求められる個人情報も入力し、確認メールを受け取り、二段階認証を設定して、、、といった手続きが煩雑で頼りなく思える。

ただし弱点があり、秘密鍵を忘れるとユーザーは手も足も出ないという事だ。加えて盗まれてしまう危険性もある。

もう一つが資金プールという特徴だが、こちらは後述することとする。

ジャック・ドーシーは「あなた方(一般の人々)はWeb3を所有することはできない。所有するのはVC(ベンチャー投資家)やLP(資金提供者)だ。彼らのインセンティブからは逃れられない。それ(Web3)は究極的には違う名前が付いた中央集権型のエンティティだ。あなた方は、自分が何に巻き込まれようとしているかを知るべきだ」とコメントしている。果たして、このコメントの真意とはいったいどういう意味なのだろうか。

この批判コメントが向かう矛先は2つある。

1つはVC、投資家への批判だ。VCのやり方は、ビットコインの理念であるディセントラライゼーション(非中央集権化/分散化/分権化)とは正反対だ。情報の非対称性に基づく特権的な資本の運用がVCの本質といえる。従って「VCがWeb3企業に投資しているなら、それはディセントラライゼーションからは遠い」との指摘には一理ある。もっとも投資家側は「エコシステムを加速させているだけで、支配している訳ではない」と反論するだろう。

2つ目がビットコイン以外のブロックチェーンへの批判だ。ドーシー氏が追求するのはあくまでビットコインだ。それ以外のブロックチェーン技術は安全性、分権性、そして分配の公平性でビットコインよりも劣る ーーービットコイン・マキシマリストはこのように主張する。この主張は部分的にはその通りだと感じる。

これらの批判をまとめると、「アプリケーション開発をうんぬんする前に、アプリケーションの基盤をなんとかしろ。劣っているイーサリアムではなく、優れているビットコインにリソースを振り向けろ」と言っているのである。

今回の論点は「暗号通貨やブロックチェーンを認めるかどうか」ではない。ビットコイン「だけ」を認めるのか、ビットコイン以外のブロックチェーンや暗号通貨、とりわけイーサリアムを認めるかどうか、なのである。

たしかに、ジャック・ドーシー氏たちが推し進めるビットコインプロジェクトが過小評価されている可能性はあるだろう。しかし、イーサリアムなどの技術がビットコインより劣っているなら、なぜここまで評価されているのか。それは前述した「資金のプール」という観点が関係してくる。

Web3の注目すべき観点はみんなのお金を運用できるという点である。つまり、皆の資金が共同管理されるという事なのだ。これは便利なものがたくさんあり、革新的な技術である一方、 スマートコントラクトのバグを突いて資金を盗難するハッキング事件はいくつも発生している。また、集まったお金をDeFiの運営者が横領してしまう「Rug Pull」(持ち逃げ)も発生している。ブロックチェーン監視ツールを提供する米Chainalysisの調査によれば、2021年のRug Pullの被害額は28億ドルに上る。

ドーシー氏の一連の発言は、現状のWeb3.0と呼ばれる分野のエコシステムが完璧ではないことを非難するものだ。ただし完璧なシステムがいつ誕生するのかは分からない。可能性に注目するか、ダークサイドに注目するかで、見方はまるで変わってくる。

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