掛ける僕

僕は眼鏡に憧れている。
子供の頃から視力だけは良く両目とも1.5という記録を維持している。
目が良すぎて中学生の時視力検査を5秒で終わらせたことがある。
そのため眼鏡というものとは全く縁のない人生を送ってきた。
だが縁がないからこそ憧れるものである。
だからといって伊達眼鏡を掛けれるほど調子に乗れてはいないし、お金も無い。
ずっと眼鏡は僕の憧れとして胸にしまい込んでいた。

しかし時が経ち遂にその時が訪れた。
このエッセイをノートパソコンで書いているとブルーライトに目がやられてしまう等の問題が発生したのだ。
となるとあれだ。
僕でも聞いたことのあるブルーライトカットメガネというやつだ。
これなら僕でも掛けることが出来るし、目を守るという大義名分を掲げることのできる一石二鳥アイテムだ。
すぐさまネットで検索し、購入した。
家に届き早速掛けてみる。
眼鏡を掛けながらイヤホンをし、ノートパソコンに向かう姿は中々様になっているのではないかと思い満足した。

それから2か月後の健康診断で事件は起こった。
右目の視力が格段に落ちていたのだ。驚いた。
視力だけが良いことが誇りであった僕にとって大分ショッキングな事件であった。
その視力はというと左目は1.5のままなのだが右目は0.6にまで下がっていた。
それまでは全然気づかなかったのだが左目を瞑り右目だけで周りを見渡してみると確かにぼやけて見える。
測り間違いとすら思ったが身を以って真実だと知った僕は何回も右目を瞑り左目だけで鮮明な世界を見ていた。

ブルーライトカットメガネによって既に欲が満たされていた僕は絶対に眼鏡を掛けたくないという強い意志を持っていた。
一番の理由は経済的な問題だ。
勿論眼鏡自体にもお金はかかるし、眼科へも行かなくてはならないだろうし、もしかするとコンタクトにまで手を出さなければいけなくなってしまうかもしれない。
そうなれば経済的負担は計り知れない。
目を酷使させないために僕に出来る事はスマホやノートパソコンなどを長時間扱わないことだろう。
しかし、最も長時間見ているのは今この瞬間であろう。ノートパソコンでエッセイを書いている時間だ。
全く書かないということは出来ないので、出来るだけ時間を短くすることだ。
一つのエッセイを書く時間を短くする。
……無理そうだ。

僕はエッセイと引き換えに視力を失っていくかもしれない。
もしそうなってしまったら誰かに続きを書いてもらうとするか。

このなんでもないエッセイを。



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