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OKRは、このままだとMBOと同じ過ちを繰り返すかもしれない。

OKR(Objectives & Key Results)は組織を運営するマネジメント層や人事を担当している人達に、随分と市民権を得てきたように思う。

特にスタートアップ界隈では、組織運営ツールとして必須になっている空気感さえ感じる。

OKRは、組織を1つにまとめていく(組織の凝集性を高める)ためのとても良いツールだと思う。

でも、中々上手く運用することが難しいツールでもあるので、運用しながら学んだ点で、「あぁこれがもしかしたらエッセンスなのかな・・・」とこの3年くらいで気付けたものを中心に、書籍やWEBでは記載されていない点に絞って共有してみたい。


えんぴつ


そもそもOKRは組織に何をもたらしてくれるのか。


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図の出所:カオナビ ”OKRとは?”

OKRは図のように、意義や目的を感じられるゴール(Objectives)と、その進み具合を測定できる指標(Key Results)を使って、経営の意思と事業現場の意思を摺合せていくためのツールだ。

OKRは、4つの良いこと(=機能)を組織にもたらしてくれる。

詳細は以下の書籍などに載っているが、読んだだけでは4つの何が一番大事か、どのようにつながっているのか、分からない。

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簡単に、かつ重要なものから並べると…

1.アラインメント(Alignment)
企業が進みたい方向と、従業員が進みたい方向を一致させる。
組織・チームとして従業員同士が連動して動ける。

※関係者が集まるミーティングの場面で、理屈面と感情面2つの「合意形成」を大切にするとアラインメントが進む。OKRで最も大事な機能。
2.フォーカス(Focus)
組織・チームとして優先順位が高いゴールへ集中できる。

※ゴールは、総花的にどうしてもなっちゃうから、その組織にとって新しい領域の注力テーマに絞ってOKRを使うのがよい、という見解もある。
※個人的には今期の組織としての優先事項が伝わることが大事であり、新規の注力テーマだけでしかOKRが使えないということはないように理解している。
3.トラッキング(Tracking)
進捗を計測することで、自分たちの現在地を認識できる。
進めてきた活動の良し悪しを振り返り、チームとして学習できる。
4.ストレッチ(Stretch)
達成基準を高くすることで、優先事項へよりフォーカスできる。

※高い基準があると、ゴールがみんなの”共通敵”のようになる。
※あくまで、2.フォーカス(Focus)の機能を輝かせるためにあるもの。
※世の中的にはストレッチが1番大事と認識されているかもしれない。(が、誤解。重要性としては最後。)

ということ。

OKRは組織運営のツールなので、”サイクル”として捉えるのがよい。

4つの機能を、ゴール決め→現在地確認→振り返り学習、というつながりで捉えると、シンプルに理解できる。

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このサイクルを3ヶ月で1回(=1年間では4回)まわす。これがOKR。後述するが、MBOも本当はやりたいことは同じ。サイクルが半年に1回(or 1年に1回)になるくらい。

なお、Trackingは2つに分けて考えるのがよい。

①現在地を確認する:
KRを使って、現在地と1(or2)週間後に目指す状態を週初め等に確認する。
②良し悪しを振り返り学習する:
1(or2)週間の週終わり等に、進んだ点に焦点を当てて確認する。
3ヶ月の終わりに良し悪しを振り返り、次の3ヶ月サイクルで改善することを決める(=チームみんなで「次はこうしよう」と学習した状態に)。


OKRのサイクルの中に抜けている大事なもの。それはアラインメント(Alignment)。


今、みてきたサイクルの中に、アラインメントが入っていない点がモヤモヤしたと思う。自分も最初、「アラインメントって何やねん。ゴールを他部署や全体に公開すること?透明性が大事?」くらいの捉え方だった。

でも、それは大きな間違いだった。このアラインメントが世の中的に最も理解が進んでいない点なのかなと運用してみると分かった。

「OKRのサイクルは、アラインメントがないと回らない。」

今は、心からそう思う。

アラインメント(≒合意形成)がない場合、組織の中で個人個人が連動した動きができない状態になる。

なぜなら、もう今の時代、納得感が低いまま動くことなんてできないから。

昔と違って、ググればすぐに、自分たちの組織よりも良い組織の情報や、納得感をもってモノゴトを進めている情報がたくさんでてきてしまう。隣の芝生とすぐに比較できる時代。

そんな時代には、もう納得や腹落ちを軽視することはできない。

納得や腹落ちを軽視すると、すぐに組織はバラバラになってしまう、という実感はないだろうか?

図示すると、組織がバラバラのまま進むと、組織運営はこんな感じで回る。外形的には回っているが、組織のみんなの心には「赤信号」が灯っている。

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でも、アラインメントがとれていると、組織の心は赤信号から青信号になる。ゴールの意義や目的に合意できた上での行動は本当に力強さが違う。ゴールがみんなで信じることができる「拠り所」のような状態になる。

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なぜ、アラインメントを取ることが難しいのか。どうすればよいのか。

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アラインメントは(特に日本企業の場合には)、「組織で働く人だったら会社と同じ方向を向くのは当たり前でしょ」という前提に立つことが多く、不足していることに気付けない。

モヤモヤした気持ちがあっても、組織としてそこが課題とは表現されにくい。「なんとなく、チームがバラバラだな」とか、「連携がとれていないな」と表出されるが、どうしてよいかイメージも付かない。

分からない


結論として、アラインメントが取れた状態は、「本音の話し合い」をすることでしか成し遂げられない

でも、本音の話し合いなんて、「そんな”話し合い”だけする時間などもったい無い。目の前の仕事で忙しい。」と組織では優先順位が下がりやすい。


つまり、OKRは「本音の話し合い」を重視する組織にしかフィットしない!!

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事業や組織が成長するために、本音の話し合い(ディスカッションや対話)に時間を投資をする必要がある、と認識されている組織にしかOKRはフィットしない。(MBOも実は同じ、後述する。)

「アラインメント」というあまり聞きなれないかもしれないが、是非組織の共通言語として使ってほしい。

ちなみに、このアラインメントの概念は、今から70年前にMBOがそもそもとして実現したかったこと。


OKRは、MBOの子ども。MBOが叶えられなかったことを成し遂げるために生まれた。

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OKRはMBOと同じく、ゴールを”道具”として使うことで組織を良くしていく方法論のこと。

源流はMBOにあるので、MBOが親、OKRが子どものようなもの。

MBOは経営思想家のドラッカーが1950年代に提唱した概念。

一方、OKRは、当時インテルのCEOだったアンディ・グローブが1970~1980年代にドラッカーのMBO思想を大事にしつつ、磨き、進化させたもの。

尚、アンディ・グローブはドラッカーのことを非常に尊敬していたそうだ。

インテルの中では、iMBO(IntelのMBO)と呼ばれて20~30年かけて進化し、その後Googleに導入されたときにOKRという名前になった。OKRは極論だが、インテル流のMBOにすぎない。

MBOとOKRは似て非なるもの、として説明されることもあるが、そうではない。MBOをドラッカーがやりたかった本来の思想通りにワークさせるために生み出されたものがOKRだと理解するのがよいと思う。

OKRは「結局はMBOと思想は同じ」という理解があれば、色々な書籍やWEBに記載されているTips集や方法論に振り回されずに済む。

尚、MBOの思想はドラッカーの著書に書いている以下の内容からも、アラインメントをとても大事にしているのが分かる。(黒字部分

「今日必要とされているものは、一人ひとりの人の強みと責任を最大限に発揮させ、彼らのビジョンと行動に共通の方向性を与え、チームワークを発揮させるためのマネジメントの原理、すなわち一人ひとりの目標と全体の利益を調和させるためのマネジメントの原理である。これらのことを、可能にする唯一のものが、MBOである。」

出所:ピータ・F・ドラッカー
”現代の経営(1954年)”

これが今から70年前に語られていたことに本当に驚く。
(※ドラッカー研究などされている方へ。MBOがやりたいことは、私はアラインメントと理解しているのですが、もし間違っていたらご指摘下さい。)

MBOは1990年~2000年代に日本に広がった。成果主義が大流行の時代に「結果評価のためのツール」に限定して導入されることがほとんどだった。

だから、MBOとしてはとても悔しく思っている。自分の思想を継いでくれているOKRだけはせめて誤解がないよう、アラインメントの概念が広まってほしいと願っている。


最後に、アラインメントが組織運営で非常に大切にされている有名事例を共有したい。アラインメントが重視されてきつつある流れを感じてほしいから。


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組織課題に関わる人達は、5~10年前はGoogleで、2~3年前くらいからNETFLIX社もとても好きだと思う。

NETFLIXでは、主に期初に行う、「ゴールに合意する」というアラインメントにとても時間とコストをかけている。

引用:”NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX”

・会社全体のアラインメントの土台をつくるのはCEOの役割・・・、リード(CEO)のやり方を紹介する。
・それは、「Eスタッフミーティング」と「四半期業績報告ミーティング」だ。ネットフリックスでは年数回、世界中からリーダー層を招集する。
・1日がかりのEスタッフ(バイスプレジデント以上の全員)とのミーティング、続いて2日間にわたる四半期業績報告(ディレクター以上全員。全社員の約10%が対象)。
一連のミーティングの最大の目的は、会社のすべてのリーダーに「北極星」すなわち全員が向かうべき方向性をしっかりと理解してもらうことだ。

3日間まるまるコストと時間をかけて、経営者と経営幹部でアラインメントをとっている。

今回の記事は、組織の業績が伸びること/健康的になること、の両方を目指すボトムアップなアプローチである「組織開発」の観点からOKRをみてきました。

「組織開発」的な眼差しが、今後とても経営含む組織マネジメント者と、人事の双方に大事になると思っており、今後月に1回くらいは組織開発に関する記事を書いていきたいと思っています!

普段は、複数社(5~6社)で人事として働いています。組織開発を世の中に広めていきたいです。





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