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#4 どんどん生まれる「〇〇デザイン」。美大卒じゃないけどデザインをしたい人の場合

大学生の正体は?

先日、大学生の女の子が弊社にデザイナー志望で面接に来た。
美大ではなく一般大だが、デザインの仕事に興味を持ったので、休学してデザインの専門学校を卒業した後、復学したとこらしい。なかなかバイタリティーがある。
いざ面接が始まり、話を聞きながら履歴書を読み進めていくと、趣味・特技欄に書いてある文字に目を疑った。

「ミミズレスキュー」

ツッコミ待ちだろうと思いつつも、ついつい目が離せなくなってしまい、最初の質問で聞いてしまった。
「このミミズレスキューって、どういう意味かな?」

「はい、私の大学に行くまでの通学路にミミズがたくさん落ちてるんですが、そのままだと人に踏まれてしまうので、葉っぱでミミズをヒュっと掬って(救って)、端っこの方によけてあげるのを日課にしてます!」

な、なるほど。。。それは、たしかにミミズレスキューだ。

「高校生の頃からやってたんですが、当時は友達がミミズを見つけたら私を呼びに来てました」

そ、そっか、、、友達含め、慈愛の塊みたいな高校だったんだろう。ミミズにここまで愛を注げるなんて。なんだかこの子が聖母マリアに見えてきました。


「お、デザインについてはイラレもフォトショもインデザインも使えるんだね!キャラクターデザインやイラストまでできるのか。しかもプログラミングもHTML, CSS, JQuery勉強したんだね、すごいね~。それに加えて神話もできr、、、え、、、神話?(二度見)」

「はい、小さい頃から神話が好きでして、インド神話、オリエント神話、ギリシア・ローマ神話、シュメール神話、バビロニア神話、、、」

セールスポイント欄に書かれてる「神話」という文字も、決して目の錯覚ではなかったようだ。

「ちょ、ちょっと待ってね。そっか、じゃあ例えば、シュメール神話はどんな話なのかな?」
「そうですね、シュメール神話のストーリーはバビロニア神話とほぼ同じなので、読まなくても大丈夫だと思います!」

えーっと、、、とんちなのかな?
これはあくまで僕の予想だが、バビロニア神話はどんな話?って聞いたら、シュメール神話とほぼ同じですって答えが返ってくる流れだよねたぶん。


「それじゃあ質問を変えると、なんで神話を好きになったのかな??」

「はい、小さい頃にグリム童話が好きだったことがきっかけです。童話や神話って色んな国で作られてるんですけど、全然違う国の話でも実はストーリーが同じで設定が違うだけってことがよくあるんです。それが面白くて高校生の頃にハマってしまいまして、たくさん読んでるうちに、幾つかの普遍的な物語に分類できるってことに気付いたんです。」

おや、良い着眼点。
というか、もはや神の視点だ。
世界の物語に共通する普遍的なフォーマットの存在に気付くというのは、メタ的な視点で物事を見れるということ。この歳でそんなこと考えてるなんて、末恐ろしい。。。
先ほどこの子が聖母マリアに見えてきたといってしまったが、撤回します。この子は、神の子イエスです。


どんどん生まれてくる「〇〇デザイン」

「では、これからどんなデザインをしていきたいですか?」
趣味・特技の話だけでもご飯三杯いけそうだったが、時間も限られてるのでそろそろ本題に入ることにした。

「それなんですが、、、」
ミミズレスキューと神話の時と比べると、打って変わって歯切れが悪くなった。

「もともとグラフィックデザインが好きだったんですが、学校でWebデザインも勉強し、今インターンで通ってる会社ではアプリデザインやキャラクターデザインもやらせてもらってます。また、最近はソーシャルデザインや環境デザインにも興味が湧いていて、正直自分がどのデザインをやりたいのか、、、そもそもどれかを選ばないといけないんでしょうか?

うんうん、わかります。
もともと絵を描くことが好きだったからデザイナーを目指し始めたけど、いざデザインの世界に足を踏み入れてみると、デザインの種類ありすぎだろ!デザインってなんだよ!と感じたのだろう。


僕が大学生だった十数年前は、今ほどデザインが多くなかったように思う。ちょうどKMD (慶応メディアデザイン) ができた頃で、「うお、メディアデザインってなんだなんだ!?なんか響きがかっこいいぞ!!」とワクワクしながら見ていたもんだ。

が、今は「○○デザイン」のオンパレードで、ワクワクというかむしろちょっと避けてしまう時もある。新しくてキラキラした「○○デザイン」が出てくる度に、「やばい、またなんか出てきた、どういう概念なのか早く覚えないといじめられるー」と焦ったり、「よし、とりあえず知ってるふりしてスルーしよう」と諦めたりw

そんな世の中で、(どんな世の中だw)
彼女はちゃんとデザインに向き合っていこうとしてるように感じた。ミミズと接するようにデザインにも愛情をもち続けることができるだろうし、神話の構造を俯瞰して見れるようにデザインの構造を見抜くことができるだろう。
大学生の頃からデザインの定義をこんなに広く考えられてること自体、純粋にすごいなーと感心してしまう。それって実はすごくデザインのことを理解してるんじゃなかろうか。


ポジティブなチャレンジに変換する -前方斜め上に飛ばす-

「僕はチカビというデザイン会社の代表だけど、いわゆるグラフィックデザイナーとかWebデザイナーではないです。だけど、自分もある種のデザイナーだと思ってる。つまり、経営もデザインだと考えてるんです。でもそんなこと言っても世の中全員に理解してもらえるわけではないから、大事なのは自分の中でデザインの定義を磨いていくことだと思ってます。広くデザインを考えることはとても大事なことだから、いま無理に決めなくてもいいと思うよ!」

この学生さんは何か面白いことをやってくれそうだ。単純に、何をするのか見ていたいという好奇心もある。

「これから、勉強と実践を繰り返しながら、それぞれのデザインをもっと深く知っていくと、だんだん自分の方向性が絞られていくんじゃないかな」

でも個人的には、彼女に神話の研究を続けてもらって、企画のアイディアやコンセプト設計など何でもすべて神話をベースにするという神話系おもしろデザイナーになってもらいたい!どういう仕事を依頼されるのか全く想像つかないが(無責任w)、神話を作るとかではなく、神話の切り口を活かして新たなものを生み出してほしい!

いま僕が作ってる観光施設に、何かしらの形で神話を取り入れてもらおうかな。普通に観光施設に来たつもりが、気付いたら神話の主人公みたいな体験しちゃうとか。

いずれにせよ、彼女のこれからが楽しみである。

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