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書評「the four 四騎士が変えた世界」

 今回は古い(古いといっても2018年の)本の書評を書こうと思う。私的な話となるが今回紹介する本である「the four 四騎士が変えた世界」と私の歴史は深い。この本に出会ったのは中学生の頃である。その時の私は経済、ビジネスといった社会科学に興味はあるが、何を具体的に学べばいいのかわからない迷える子羊だった。この本は私に社会科学とブランドビジネスの興味を与えてくれた重要な本だった。

 この本は2018年に出版されたが、2023年現在でも読む価値がある本であると言える。著者の鋭い分析と指摘。そして、これからの世界でどう生きていくべきかという指針は5年たった今でも先進的であると言える。本書は一貫して筆者のユーモアに富んだ表現が盛り込まれているため、冗長と感じる読者もいるだろう。また、データや共通因子を発見し分析し客観的で鋭い意見も多いが、時には主観的な意見も多い。しかし、最後まで読めば学ぶ部分が多いことも伝わるだろう。


本書の基礎的情報

 この本の著書はスコット・ギャロウェイ (Scott Galloway)というニューヨーク大学スターン経営大学院教授である。彼はMBAコースでブランド戦略とデジタルマーケティングを教えている。また、連続起業家(シリアル・アントレプレナー)としても有名でL2、Red Envelope、Prophetなど9つの会社を起業し、ニューヨーク・タイムズ、ゲートウェイ・コンピュータなどの役員も歴任している。

本書の構成

 本書の構成は11章構成となっている。しかし、本当に仕分けると三段構成であると言えるだろう。
 第一は、GAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)といった企業の成功を個別的に分析とそれらの企業が脳・心・性器を対象に如何に影響を与え成功を確立したか。第二に、次なるGAFAとなる企業を予測する。最後に、GAFAが変えた世界でどう生きていくべきかという指針を提示する。
 本稿では本書の全てを紹介することはしない。あくまで、部分的に取り上げていく。具体的には、前半の「GAFAはヨハネの四騎士か?」、「Apple」、「これからの時代に必要なこと」これら三つのことだけを紹介する。是非、本書の全体は自身の手で読んで欲しい。

GAFAはヨハネの四騎士か?

 Google、Amazon、Facebook、AppleといったGAFAは世界に革命を起こし、人々の利便性と生活水準を格段に向上させてきた。具体的には、Facebookは私達の関係性をより密着させ、Amazonのおかげでワンクリックで必需品を手にいられるようになった。だが、彼らには裏の顔があると指摘する。税金を収めず、多数の雇用を破壊し、携帯電話から人びとの情報を勝手に抜き出しているなど。そのため、筆者はそれらの企業はヨハネの黙示録の四騎士(世界に終末をもたらすとされる四人の騎士)であると考えている。

Apple ジョブスという教祖を崇める宗教

 多くの人々にとってAppleは、テクノロジー企業という印象が強いだろう。スティーブ・ジョブズの卓越したデザイン性とスティーブ・ウォズニアックの技術が組み合わさり、様々な革新的な製品が生み出されてきた。iphoneやMacbook Airといった製品を使用しているという人も多いだろう。しかし、筆者はAppleは本質的にはブランド企業であるという。ジョブズのこだわりが反映された直営店舗、シンプルで機能的なデザイン、革新的であるというイメージが消費者の性器に訴えかけハイブランド企業として成功した。Appleの製品を持つことで、自身は特別で、金持ちで、先進的だということを異性にアピールすることができる。そのため、Appleは他のブランド企業と違い製造コストが低い製品を高い値段で売ることができた。 

 また、筆者はブランド企業には共通する5つの特徴があるという。
 1.アイコン的な創業者
 2.職人気質
 3.垂直統合(メーカー直営店)
 4.世界展開
 5.高価格
 上記の特徴がどのブランド企業にも共通してあるという。実際に、Appleもそれらの特徴にあてはまる。

 Appleといったブランド企業は上記でも書いた通り性器を対象とする。性器とは人間の性欲を意味する。人間の本能的に最も重要なことは子孫(より優秀な)を残すことだ。そのため、男性と女性は共に自身が他の男ないし女に比べて優れているということを何らかの具体的な形で示さなければならない。ブランド品はそういった時に重要な役割を果たす。世間で高級、革新的、上品であるとされているブランドの服や製品を身につければ、自身は他人と違うということを簡単にアピールすることができる。ブランド品は性器に直結しているため、どんなに非合理であってもビジネスが成立する。人が人である限り、この世からブランド品がなくなることはないであろう。

これからの時代に必要なものは何か?

 GAFAとグローバル化の影響により、超優秀の人間には最高で、平凡の人間にとっては最悪な世界が形成されたという。労働市場において、グローバル化によって幾千もの労働者が市場に流入し、超優秀なら超優秀の企業に就職することができる。一方、平凡な労働者は幾千もの他の労働者と競争しなくてはならない。また、競争に勝ち抜いても最高の所得や環境が得られることが保証されているわけではない。勿論、企業も最高の環境か収入を提供できなければ優れた人材を確保することはできない。 
 
では、このような時代を生きていくためには何が必要なのだろうか。本書で紹介されているなかでも、特に重要なものを抜き出して紹介する。

1.大学へ行くこと
 2023年(本書が日本で出版されたのは2018年だが)で大学に行くことに価値があるのかと疑問に思う人も多いだろう。大学の学部で学べることは自学で学べることも多いし、サークル活動やよく分からない友達と時間を浪費するなら、高卒で起業するほうが成功できると。そして、高卒や大学中退で経済的に成功を収めている人は現代でとても多いではないかと。
 本書でとても好きな言葉がある。それは、「確かに、ザッカーバーグ(Facebookの創業者)やスティーブ・ジョブズ(Appleの創業者)も大学中退だ。しかし、あなたはザッカーバーグではない」。私はこの言葉が大好きだ。思い上がる自分に常に現実を教えてくれる。また、大学(優れた)で優秀な学生と教授と共に議論などを通じて学問を学び。様々なバックボーンや才能を持つ人々が集まる刺激的な環境で創造性と教養を高めることができのは大学だけだ。さらに、本当に価値があるのかはわからないが学歴として大卒は機能する。大学に行けるのであれば、確実に行ったほうがいいだろう。本書はそう指摘するし、私も強くそう思う。

2.資格・証明
 あなたが他の人と違うと証明するためには客観的で誰もが認める結果、すなわち資格が必要だ。大卒という資格を持つだけで、日本では約50%の人々と差別化することができる。いい大学であれば上位1%に食い込むことができる。勿論、世の中には大卒以外にも社会的に認められている資格はある。TOEFLや公認会計士など。それらを取得するだけでも、容易に差別化することができる。そのため、社会的に価値がある資格を取得するべきだ。

3.都市部にいること
 なぜ、デジタル化が進んだ現代で都市部にいなければならないのだろうか。現代に生きる人々は強くそう思うだろう。だがしかし、2023年の現在でも都市部にいるべきだと主張することができる。デジタルの時代が到来したが、都市と地方の格差は拡大している。富、情報、経済的に成功する機会は都市部に集中している。実際に、東京と地方都市を比べれば圧倒的だ。人、企業、塾は都市部に集中している。また、富も都市部に集中している。2022の日本のGDPの20%は東京から生み出された(1)。

(1)(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kenmin/files/contents/main_2019.html

感想

 この本の素晴らしい点は、荒削りながらも生物学視点からビジネスの本質(私は本質主義者ではないため、この表現は嫌いだが)を分析しているところだ。本稿で紹介した以外にも、Amazonの成功や次なる四騎士の予測など役立つものはとても多い。私自身の文章構成も荒削りなため、この本を完璧に紹介、評価できたとは思わない。是非、皆様の手にとって読んでほしい。
 
 最後に、筆者の他の作品とYoutubeを掲載しておく。興味がある人は、他の本も読んでみてほしい。特に、HAPPINESSは筆者のユーモアと独自の視点からの切込みがとても面白いものとなっている。

著者の他の作品とYoutube



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