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webtoonとインディー音楽の共通点とは? ~出版・取次・電子書籍プラットフォームが取るべき施策はこれだ!~


1.はじめに

webtoonとは、スマートフォンで読みやすい縦スクロール型のデジタルコミックのことです。韓国発祥のこのコミック形式は、世界中で人気を集めており、2028年には3兆円市場になると予測されています。日本でもwebtoonを掲載するアプリが増えており、国産化への動きも活発化しています。この記事では、webtoonの特徴や市場動向を概説した上で、出版社や取次、オリジナルwebtoonIPを獲得したい電子書籍プラットフォームを主な対象としてどのような施策を講じるべきか考察します。

2.WEBTOONの特徴

まず、webtoonの特徴としては、以下の点が挙げられます。

1.スマートフォンで片手で隙間時間に読める
2.フルカラーでビジュアルに訴求力がある
3.ストーリの刺激が強く、人間の欲望に忠実
4.縦スクロールでページ遷移がなく、ストーリーに没入しやすい
5.ある程度ストーリーが進行するまで無料で閲覧できる

こうした点がタイパ重視でリスク回避能力が高く、できるだけ短時間で刺激的な漫画を購入・閲覧したいという意識の強いZ世代やα世代の嗜好とマッチし、ヒットしています。例えば、「俺だけレベルアップな件」は韓国発の異世界ファンタジー作品で、日本でも人気を博しています*1。「偽装不倫」は日本の人気漫画家・東村アキコさんが描く恋愛ドラマで、グローバルで5億Viewを突破しました*2。 どちらも上記の点にとても気を使って制作されていることが分かります。
また、webtoonの特徴としてUGC(ユーザ生成コンテンツ)の割合が高いことも挙げられます。

そして、webtoon市場は、今後も拡大すると見込まれています。調査会社のQYResearchは、2021年の約4400億円から2028年には約3兆1500億円に達すると予測しています*3。この市場規模は、日本の電子書籍市場を上回る規模で、既存の電子書籍運営企業や出版社にとっては大きなライバルとなる可能性があるのです。

3.WEBTOONの未来予測

では、ここでwebtoonの将来を予測してみたいと思います。ズバリ、クリエーター側のバーゲニング・パワーが増していくでしょう。根拠として、音楽業界では一足先にこういった現象が起こっていることが挙げられます。過去数十年、音楽業界では出版社と取次の役割を担う「メジャーレーベル」の存在が大きく、2017年にはspotifyで配信されるコンテンツの87%がメジャーレーベルによるものでしたが、2022年に75%に後退しています。そしてメジャーに属さない人の受け皿となったのが「ディストリビューター」と呼ばれる存在で、彼らはクリエータの支援をほとんど行わない一方、印税分配や権利の保持について柔軟な契約を提示することで近年シェアを伸ばしています*4。これは、メジャーレーベルがCD時代の利益率を前提として楽曲の権利や手数料の要件を算出しており、それがクリエイターの不満を高めているからだとされます。また、インターネットの普及によって企業の力を借りずともクリエイター自ら音楽を配信できるようになっていることも大きいでしょう*4。
そしてこうした流れは出版業界でも起こる可能性があります。なぜなら紙の本の流通を前提として発達してきた出版業界はメジャーレーベルと同様の問題を抱えているからです。出版業界では権利譲渡や印税に関するクリエータの不満はそこまで高まっていないようですが、小説・漫画投稿サイトの成長やそこに投稿された作品のメディアミックス事例増加を見ると、出版社や取次・電子書籍プラットフォームの相対的地位の低下は避けられないように感じます。

4.WEBTOON台頭への対応策

さて、こうした環境の中、出版社や取次、オリジナルwebtoonIPを獲得したい電子書籍プラットフォームはどのような施策を講じるべきでしょうか。これにもインディー音楽の台頭に対するレーベルの動きが参考になると思います。例えば音楽レーベルとして世界大手のソニーは契約の柔軟性や手数料の面である程度クリエーターに譲歩しつつも、データを基にしたコンサルティングやメディアプロモーション、タイアップのコーディネートやマネジメント、ライブやイベントの開催コーディネートなどメジャーレコード会社ならではの「得意分野」をセットにすることで、ディストリビューターと比べた際の割高感を解消しています*5。実際に、ソニーは米国でYOASOBIがヒットする兆しを発見し、現地のインフルエンサーへ働きかけることでヒットにつなげるなどの実績を上げており、アーティストからの評判も上々です*5*6。このようなことは出版社や電子書籍プラットフォームにもできるし、やらなければならない時代に突入しつつあると私は考えます。すでにwebtoon最大手のピッコマはターゲティング広告はもちろん、twitterとの連携を通じてオリジナル絵文字やTwitterライブ番組を提供することでピッコマに関するツイートを162%増やすことに成功しており*7、こうした事例が今後webtoon業界でも増えてくるのではないかと思います。

以上から考えられる具体的施策について以下に示します。

具体的に考えられる施策

  1. webtoon作品を自社プラットフォームだけでなく、他社プラットフォームにも幅広く流通させる。

  2. 印税を大幅に下げる。

  3. クリエーター(制作会社)向けのデータ分析ツールを提供する。これは全面的にソニーの例が参考になる。特にSNSデータの解析機能は必須。

  4. webtoonのプロモーションを企業が積極的に行う。特にSNSへのターゲティング広告やタイアップは有効。

  5. クリエーター(制作会社)に必要に応じて人材リソースの提供や機材のリース・使用法サポート等を行う。

  6. タイアップのコーディネートやコンサルティング、漫画家の精神ケアを始めとしたマネジメントを行う。

  7. アマチュアユーザが自由に投稿できる場所を設けることでUGCの流通を促す。すでにwebtoon発祥地の韓国では個人制作のwebtoonが人気上位に多数食い込んでいるとされる。時々賞を開催することもアマチュアの参入を増やすだろう。(ただし、著作権面の審査を行うことは必須。テラーノベルの事例参照。)

5.まとめ

以上の通り、webtoonは今や日本の漫画市場において無視できない存在です。出版社や電子書籍プラットフォームは、メジャーレーベルのように、クリエーターをサポートする「黒子」としての業務を拡大することで新たなwebtoonIPの獲得はもちろん、一つ一つのIPから得られる収益を最大化することができるでしょう。以上、この記事が誰かの役に立つことを願って結びとします。

※この記事はリソース削減のためGPT-4と共同して執筆しています。データの真贋性や著作権には細心の注意を払っていますが、万が一お気づきの点がありましたらコメント欄にお願いします。

参考文献


*1:  LINEマンガを抜き売上日本No.1になったピッコマで2020年最も読まれた作品から見えるもの 飯田一史

*2:  不倫に復讐を…グローバルで5億回読まれたスカッとマンガが日本で人気、「不倫現場への踏み込み方」にお国柄 オリコンニュース

*3:  2028年には3兆円市場の予測も──韓国発「ウェブトゥーン」はなぜ世界を席巻しているのか DIAMOND SIGNAL

*4:  AS MAJOR LABEL MARKET SHARE FALLS ON SPOTIFY, CAN WE EXPECT EVEN MORE INDIE INVESTMENT FROM THE ‘BIG THREE’? MUSIC BUSINESS WORLDWIDE

*5:  ソニー系の音楽配信代行会社 アーティストのマーケ支援を本格化 日経クロストレンド

*6:  The Orchardが変える音楽の届け方 音楽ナタリー

*7:  Twitter活用事例 リーチ拡大とオリジナルツイート増加に成功!ピッコマに学ぶ、会話を醸成するTwitter活用法 X Corp.


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