見出し画像

病院のドクターや地域連携室の方へ(更に製薬企業や保険会社の方など課題感をお持ちの方々へも)

以前、以下のような記事を書かせていただきました。これはクリニック院長先生向けの記事でした。今回は病院のドクターや地域連携室の方向けに書かせていただきます。

いわゆる大きな病院への紹介状なし受診のハードルが上がっていますよということです。それはクリニックでの経過観察が増えるということです。
これは2つの課題があるのです。

クリニックは大きな病院にとりあえず患者さんをお願いするということができなくなります。(診診連携:クリニック間の紹介)
②大病院は病状が落ち着いている患者さんを地域の診療所にお願いしたくてはならない(逆紹介が大切:大病院からクリニックへの紹介)

課題なんか無いじゃないか?


*医療機関数の少なく、その地域でその診療科のクリニックが少数しかなくあらゆるサブスペシャルティをカバーされておられる先生方には頭が下がります。しかし、以下の議論は同じ診療科の医療機関の数が多い大きな都市圏を前提としておりますのでそのあたりご理解をお願いします。

いくつかの側面のmajorな課題を書かせていただきますね

紹介状なしの受診ができない医療機関数の増加

この朝日新聞の記事にもありますように
R4年10月1日からは特定機能病院と地域医療支援病院の受診患者さんに紹介状を持たずに大病院を受診した場合に支払う「特別料金」の増額が指示されました。これは健康保険でカバーされない自費負担です

①特定機能病院:R4年12月1日時点で88施設(主に大学病院など)

紹介率50%以上、逆紹介率40%以上

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001018536.pdf

②地域医療支援病院:R4年9月1日時点で685施設

以下のいずれか
ア)紹介率80%以上
イ)紹介率65%以上、逆紹介率40%以上
ウ)紹介率50%以上、逆紹介率70%以上

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000902407.pdf

そしてR5年3月からはさらにその特別料金を徴収しなければならない医療機関が追加されました

③紹介受診重点医療機関:R5年10月1日時点で495施設(*これについては上の①②と異なり数字がはっきりとは厚労省の資料になかったのでGOOGLE BARD調べです)

紹介率50%以上かつ逆紹介率40%

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001102730.pdf


88+685+495=1268施設だけ?

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/21/dl/11gaikyou03.pdf

この厚労省のR3年10月1日時点のデータからの抜粋ですが


病院 8205
一般診療所 104292
となるので病院:一般診療所=1:13くらいですね

その病院8205のうち1268というのはクリニックや患者さんから見れば
1268/8205=約15.5%ですので 85%は特に気にすることなしに受診してもらえるじゃん!と思われるかもしれません。
しかし、表題に書かせていただいたように今回は、上記の①②③に当てはまるような病院のドクターや地域連携室の方々向けの記事です。そういった方にとっては100%の課題なんです。病院全体として逆紹介率を上げろ!とハッパを掛けられているかと思います

かかりつけ医


【「かかりつけ医」をお探しの方は、診察時に担当医にご相談いただくか、当院地域医療連携室までお問い合わせください。】というようなメッセーが病院の地域連携室のページには記載があります。

・担当医が長くいらして、地元の診療所などの先生のサブスペシャリティなどをご理解頂いている場合には素晴らしいです。しかし、逆紹介条件を満たさなくてはならない病院というのは広域から患者さんがいらしているのです。地域を超えた場合にはそういったかかりつけ医を探せるかというとなかなか難しいのです。(地域超えの問題)

・地域医療連携室の方も、診療科の地域分布は掴んでおられるとおもいます。おそらくそういった連携施設の診療科情報をもとに逆紹介をされていると思います。個々の先生のサブスペシャルティまで理解されているかというと難しいのでは無いでしょうか?(専門性の問題)

つまり、地域と専門性を超えると紹介が難しいのです。


元の医療機関に患者さんに戻ってもらえばいいのでは?

逆紹介というからには紹介元があるわけです。戻ってもらえばOKでは?そういうわけには行かないのです

ここで紹介の分解をしなくてはならないのです。

紹介の理由としては単純化すると3大別できます。
A:ハードの格差(知っているけど設備が無い)
B:ソフトの格差(診断・経過観察に困る)
C:ハードとソフトの格差(診断・治療設備も無い。知識も無い)

Aの場合には診断や治療が終われば元の施設で経過観察可能です
Bの場合には一旦診断が出来た場合には経過観察だけであれば元の施設で可能な場合と、わかっても経過観察も出来ない場合もあります
Cの場合には戻されても経過観察出来ないのです。
つまり、全例を元の施設に戻すのは患者さんのためにならないのです・

勉強が足りない?投資が足りない?

「そんなの医者の怠慢だ!もっと勉強しろ!もっと設備に投資しろ」という声も聞こえます。しかし、前の記事でも書きましたがみなさんが企業に働いておられたとして業務の全部に精通しておられるでしょうか?
以下のリンクでも書きましたがその先生のサブスペシャリティが異なる先生が地域で集まることでその地域全体で患者さんの疾患をカバーできるわけです
【XXさんはお仕事として何をされていますか? 銀行にお勤めですか? では貸付 ATMの修理 人事 M&A 不良債権の回収などすべてを把握はされていませんよね? 部署のお仕事に注力して 数年に一度人事異動で異なる経験を積み重ねてこられていると思います。しかし、キャリアパスが異なる同期入行の方と話をされると 同じ銀行でも仕事に対するスタンスが異なっていたり 経験が異なっていることもありますよね? それは違っていることは悪でしょうか? 違うからこそ企業が成り立っていませんか?ATMマシンが壊れていたときに 受付の担当の方が 工具を持ってきて ATMマシンのログを見て いきなりプログラムのコードを書き直すことを期待されるでしょうか? やはり機械担当の方が来るのが自然と思いませんか? 企業と同じで身体やクリニックも有機体ですので担当が異なっています。シャーマン医学とは異なる時代ですので 知らないこともあります 他院とは異なることもあります。 一箇所で 苦手なことも克服しようと注力をしすぎると 他の患者さんの診察が滞ってしまうこともあり 得意な先生に紹介という形を取らざるをえないこことも残念ながらあります」と(心のなかで解釈をして)患者さんのご理解度に応じて説明していくことしかないと思います。】

現実的な解決策を


・逆紹介は必要
・そのまま戻すだけではだめ
・医療機関情報を(謙遜や盛ったりする自薦ではなく)
・他薦
・しかし、スーパードクターや神の手を他薦ではない
・逆紹介では急性期を超えて安定している症例のなのでその診療科の中のあるスペシャルティの一般的な専門性情報が大切(ドライ情報)
・かかりつけ医とは長い付き合いなので人間性もある程度必要(ウェット情報)
・そのようないつもの紹介先情報は無い
・しかし、それそれのクリニックの先生は少数だがそのような情報をお持ち
・そのような情報を少しずつ全国でシェア

そのまま戻すだけではあまり意味が無いという以前の記事


なぜ改めてこんな記事を?


先日、YAHOOリアルタイムで 「医者の給料」というキーワードがランキングに有りました。これは色々な視点があります。
勤務医の先生 開業医の先生、そしてその中でも色々なばらつきがありますので一括りにはなりません。しかし、いろんな経済的な負担の上に医療が成り立っているのでそのような外部の視点にさらされる職業であると思います。そして、今後日本の税収や社会保障費の増加などによって 
・フリーアクセス
・出来高制

という患者さんにとっても医師にとってもなんとなく都合の良かったシステムが変わっていく可能性もあるかと思います。その際にやはり患者さんや疾患対応にためにもやはり適切な医療機関に患者さんを繋いでいくことの必要性が議論になるかと思います。 そういった大切さを病院のドクターや連携室の方々、そして製薬企業や保険会社の方もご理解いただいているかな?と思っております。 ご興味をいただければ幸いです。なにか一緒に一歩でもお手伝いいただける企業・個人・団体の方連絡をお待ちしております。

NYAUWの活動リンク

連絡先情報はここにあります


KINDLE出版








よろしければサポートお願いします。 NYAUWの活動は現在マネタイズを考えずに意義のみを追求するフェーズです。 ニッチな分野のやせ我慢プロジェクトですので お気持ちだけでも嬉しいです。