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寅さん神社

俳優の渥美清さんは、仕事がなかった頃に小野照崎神社に禁煙を誓って願掛けをしたことで、映画『男はつらいよ』の主役が決まったんだそう。
そんなわけで現在、小野照崎神社は『寅さん神社』と呼ばれ、連日参拝客で賑わっている。


この話、私はなんだか腑に落ちない。
タバコを吸い始めたのは自分なのに、それを自分で断ってご利益を得るってマッチポンプが過ぎやしないだろうか。
タバコを吸って散々良い気持ちになっておいて、やめて健康と御利益?
都合が良すぎる。

ご利益の内訳も気になる。
神様は平凡な人間に力とチャンスを与えたのか、それとも力のある人間にチャンスだけ与えたのか。
前者だと、なんだかズルい。

また、この話は神社側と渥美清さんによる創作なんじゃないか? なんて邪推もしてしまう。
既に『男はつらいよ』の主役は決まっていたが、お世話になった神社ということで

「願掛けをして主役が決まったことにすれば、参拝客が増えるんじゃないですか?」

なんてんで、まんまと参拝させられているんじゃなかろうか。
なんだったら経営の立ち行かない神社なんかは、売れている芸能人やYouTuberに声をかけて、参拝して売れたことにすればいいと思う。
そうしたらお賽銭ガッポガッポだ。


なんてことを思いながら、令和五年三月三十一日、寅さん神社で断ち物願掛けしてきました。(行ったんかい)

落語の【堀の内】曰く、「乗り物に乗って行くと御利益が薄い」とのことなので、四時間ほど稽古しながら歩いて行ってきました。(信心ぶけぇな)

お賽銭を五百円玉にしました。(御利益欲しくてしょうがねぇんだな)

私はこういう眉唾は散々疑った上で信用するタイプだ。

ちなみに私が断ったものはスマホゲーム。
何じゃそら、と思われるかもしれないが、私的にはタバコと同等だ。

よく「ストイックだね」なんてことを言われる。
何だかずっと稽古をしていると思われているらしい。
だけどそんなことはなくて、私はストレスが溜まるとすぐにスマホゲームに逃げる。
落語会の前日とか、ネタ下ろしの前に現実逃避でスマホゲームを朝までやって、上手くいかないことなんてザラだった。

スマホの履歴を見てみると、六年間で800近くのゲームをインストールしていた。
勿論全部遊んでいるわけではない。
雰囲気だけ見てアンインストールなんてのはよくある。
が、5個の内1つは、ことによると何十時間と遊んでしまう。
そしてある程度達成したら、アプリをスマホから消して、本当に何にも残らない。

2021年は酷かった。
あるゲームにハマり過ぎて、寝る時間を割いて、ご飯を食べている時も風呂に入っている時も、とにかく起きている間中ずっとゲームをやっている時期が六ヶ月ほどあった。
その間は稽古もしなかったし一席も噺を覚えなかった。
ゲームのやりすぎでスマホが熱くなり過ぎて、保冷剤でスマホを冷やしながらプレイしたら水没扱いになった。
まあ、それはそれである意味ストイックだったかもしれない。

そんなわけで、スマホゲームを断った。
『男はつらいよ』級の御利益は今のところない。
力とチャンスが欲しい。
平凡だから。

いつか小野照崎神社を『寅さん神社兼黒酒神社』にしたい。

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