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人間国宝

大師匠が人間国宝になった。

昼に歯医者に行って、
1時間半くらい治療をしてもらって、
家に帰って、
歯がジンジンして稽古も捗らないので昼寝をして、
起きたら人間国宝になっていた。

噺家同士で「次の人間国宝は誰だろうね」という話はよくしていて、
それには『技術』『落語界への貢献度』『弟子の育成』が重要という事で、やっぱり大師匠の名前は挙がっていた。
技術はもちろんのこと、【お富与三郎】【双蝶々】のような世話噺を演り、そして私の師匠を始め弟子が皆売れっ子だからだ。(こう書くともはや順当という気さえする)
だけど、その話題で私はいつも

「いやぁ、どうなんでしょう」

なんてことを言っていて、
これは知り合いが、身近な人が、
いつもお世話になっている人が、
いきなり『人間国宝になる』という想像が出来なさすぎたからだ。

また、人間国宝は王道を歩む人がなる印象で、大師匠は己の道を歩んでいる感じがする。

暫く人間国宝は現れないんじゃないか──なんて思っていたら人間国宝になった。
あの時の自分に、そしてあの時の誰かしらに、

「どんなもんだい!」

と言ってやりたい。

皆さんは実際に近しい人が人間国宝になったらどう感じると思いますか?

これね、めちゃくちゃ嬉しいんですよ。

称号とか名誉って、与えられた人だけの物という認識だったけどそうじゃない。
「すげぇなぁ」「めでたいなぁ」くらいかと思ったらそうじゃない。
こんなに自分まで幸せな気持ちになるとは思わなかった。
勢いで鰻を食べたくらいだ。

この度大師匠が人間国宝になられたのはとても大きい。
生意気だけど、『良い落語の定義』がグッと拡がったと思う。
大師匠の通った己の道が王道になった。
頂上までのルートが新しくたくさんできたよう。
名前にかけて上手いことを言えそうだけど、恥ずかしいからやめておこう。

自分のやり方は『正解かどうか分からないもの』だったけれど、
「間違っちゃないんじゃない」と後押しされた感じがする。
なんだかワクワクするなぁ。
孫弟子として何か花を添えたい。


お恐れながら、雲助師匠に「おめでとうございます」とメッセージを送ってみた。

拝観料を請求された。

痺れるだろ。

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