「好きな人を言う合戦」を体験したことない人には伝わらない話だけど、高確率でわかってもらえると信じて書き記す。

あの合戦に意味を感じたことがない。

合戦場第1位は修学旅行。刻は就寝時間後。誰からともなく仕掛けてきて好きな子の名刀を振り合う。

みんなが同じクラスの女子の名前をぶつけ合う中、僕は大抵「小泉今日子」と有名刀を振っていた。そして枕の集中砲撃を喰らった。

最初はボケとして受け入れるけど、僕が「じゃあ、中山美穂」とか言い続けるものだから、合戦場にはどんよりとした雲が漂い始める。

「全員言ってんだから言えよ！」やいのやいのと敵武将たちの威嚇が飛び始める。

「いやいやお前、自分が言いたいから言ったんだろ？」と僕は応戦する。

冷戦が始まる。

僕のやや捻れた人間性を先にお伝えした上で今から話たいのは、「どんな人がタイプ？」という会話は必要か？不要か？て話。

もちろん僕は不要だと思っている。

「どんな人がタイプ？」という会話がこの世から消え去ったら困る人が世界に何人いるだろうか？そんなにはいないと思う。「え？別にあってもなくてもどっちでもいいよ」という意見が大半だろうし、「必要とか不要とか・・・お前そんなこと考えてるの？怖いよ♪」と言われる未来が見える。無くても問題ないはずなんだ。

誰がどんなタイプだよを知ったとしても、すぐに世界は平和にならないし、すぐにどこでもドアは開発されないし、すぐにブラピにはなれない。逆も然りだ。どんなタイプだよを知らなかったとしても何も変わらないはずなんだ。

なのに、女優の名前で答えたら、「ああ、面食いなんだぁ・・・」とか、「細い人がね・・・」とか、胸がとか可愛い系がとかモデル体型がとか、「見た目で判断ねぇ・・・」とか聞いたくせに誰を答えても何かしら嫌味を言ってくる。少し外し目で言うと、「あぁ、センス出したいのねぇ笑」とか言われる。

あぁ、腹が立つ。

まったくもって不要だし、正解無いし、そもそも別に言いたくないし、Roland様ぐらいのスキルが僕にあれば「君だよ」と言うかもしれないけどそんな技も器も持ち合わせていないし、タイプど真ん中が目の前にいる確率って宝くじよりやばいだろと思ってしまう。

しかも、そういうこと言う奴に限って、「私は高田純二かな。おしゃれだし、面白いし、センスありすぎ！」みたいなこと聞いてないのに言ってくる。

おう！おう！おう！「高田純二さんは！」な！センスあるよ！「高田純二さんは！」な！別にあなたがセンスあるわけじゃないから！高田純二さんがセンスあるだけだから！と、子供の頃に散々友達を失った捻れ賢志が飛び出してきそうになる。

だから、やれやれ面倒だなと思いながらも、基本的には「ジブリヒロインをローテーション」で答えるようにしてる。好きな理由は「芯があるから」で、ほとんど全員対応できる。あと、ちょっとは嫌われる。統計で言うと、「千尋」と答えると悪手。

誰を答えても、何を言っても合戦になる会話って必要だろうか？これ以上、友達を失いたくないので、出来ることならこの世からなくなってほしい。だって、努力して今後全員に「君だよ」と答えたとしてもヤバいやつ扱いだろうし、伝家の宝刀「母親」を振りかざしたとしても事態を好転させるとは思えない。

昨日、昔のバイトの女仲間から連絡が来た。彼女は結婚し子供もいて、その子供が、仮面ライダーセイバーにハマってくれたらしく、ファルシオンで遊んでる写真なんかがLINEで送られてきた。

僕も世の中の為になってる。

生きている意味がある。

と、幸せを感じていたら、遠くから兵の足音が聞こえてきた。

「まだひとりでしょ？ずっとひとりで生きて行くの？結婚しないの？」

機会があれば、なんだかんだと回避しようとすると。

「どんな人がいいの？例えば有名人では？」

法螺貝が鳴り響いた。

合戦の合図だ。

久しく会ってないとは言え、苦楽を共にした仲間に、「ナウシカ」と答えるのはさすがに合戦放棄と捉えられるだろうし、とうとう頭が・・・と思われそうだし、なんとかライトな終戦に持ち込むべく、自分なりに、狙いすぎず、ド直球ど真ん中のわかりやすいボケ刀で斬りかかり、「www」とかツッコミ刀貰って、スタンプ刀のやり合いを経て、穏便に終わらせる作戦を実行した。

「有村架純♡」

すると。

「きも」

すかさず超絶明るい『呪術廻戦』の五条悟「お疲れサマンサー！」スタンプを送ったが、まったく返信はない・・・。

残念！！！！！

あんた結局この会話向いてませんから〜！

ロリコン認定で〜仲間も失う斬り〜！！！！！

じゃじゃん。

●出演情報●

舞台『RUST RAIN FISH』

『BANANA FISH』The Stage -後編-

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谷口賢志