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【18禁】短編小説「さみしくなったら電話して 第0話 -プロトタイプ版-」(没案件)

10光年より遠い遠いはるか彼方のライター星に住んでいた時代、地元の風俗店のペラペラの情報誌に連載前提の企画を提案する際、「お前が書けるよな?」と急に振られたのを機に書いた短編小説です。
未知の世界を想像だけで、勢いよくなんとなくそれっぽい雰囲気をふわっと書いてみた「お試し版」です。お仕事はいただけず没ることになりました。
せっかく書いたのに読まれることのない作品というのもかわいそうなので、この度は、なんとなく言ってみただけの「noteに投稿して恥を晒すか」ですが、勢いだけで有言実行しちゃいます。黒歴史が増えて美味しい!
そう開き直れる強メンタルが欲しい。以上、お豆腐メンタルでした。

第0話 はじまり(主人公はあや, やる気のないデリ)

「行ってきまーす」
とりあえずの挨拶。
そして私は大きめのバッグを肩にかけて殺風景なマンションの一室を出る。
今日は風邪ぎみで何もかもが面倒くさい。
まあ今日に限ったことじゃないんだけど。
この仕事は気を付けないとすぐ風邪をひいちゃうんだよね。
こういうのを職業病っていうんだっけ。

「さむっ」
思わず口から出ちゃった。だめだ、気が遠くなる。
おーい!眠ったらだめだ!死ぬぞ!なんて熱く自分を励ましてみる。
くだらないことでテンション上げなきゃやってられない。
そのくらい寒かった。まだ12月だっていうのになにこれ。凍りそう。
年末には寒波がやってくるなんて知らなかった。
知ってたらこんな日に生足でいるもんか。
私はコートのポケットに手を突っ込んだまま体をすくめて駐車場まで走った。

赤くて四角くて古くてナンバープレートが黄色くて、
私がとにかく気に入らないことばかりを詰め込んだ車が、
よりによって私を待っていた。
持ち主は余程この車が好きなんだろう。いつ見てもピカピカに磨かれてる。
それが余計ダサいんだってことにお願いだから気付いてよ。
こんなのに乗った姿は誰にも見られたくない。
申し訳ないけどこれが本音。
でも寒くてそんなこと言ってる場合じゃない。

「よろしくお願いしまーす」
ドアを開けて運転席に向かって形だけの挨拶をする。
目は合わせない。座ったらすぐに閉じてしまう。
話しかけられたくない時はいつもこうしてる。
今日は客以外に愛想は振りまかない。今決めた。
体力を少しでも残しておきたい。
接客業って本格的な風邪だと仕事にならなくなるでしょ。
それじゃ困るもん。

「明日は雨が降るみたいですね」
そんな気持ちは全然伝わってないみたいで普通に話しかけられた。
もちろん寝てないのはばればれなんだろうけど返事はしない。
運転手もそれ以降は喋らなくなった。

車が走り出して10分くらいたった頃だった。
「がっかりおっぱい」
は!?
何か言われた気がするけど空耳かも。まさかね。
気にしないようにすればするほど気になって仕方がない。
ていうか今絶対言ったし。がっかりとか意味わかんないんだけど。
どうしてそんなこと言われなきゃいけないのかわからなくて腹が立った。
でも面倒なことは避けたくて、それからも寝たふりを続けた。

「あと5分ほどで着きますよ」
運転手に声をかけられ、びくっと体が震えた。
いつの間にか本当に眠ってしまっていたらしい。
最初から目は閉じてたけど、寝顔は見せるつもりじゃなかった。
そう思うと急に恥ずかしくなってきた。
「あ、はい。ありがとうございます」
そのせいかついつい普通に答えてしまう。
「飲み物、暖かいの買っとくけど何がいい?」
「え、お茶?」
「何茶?」
「えっとカフェイン入ってないやつ、かな」
「わかんないわ、ごめん適当に買っとく」
それから後は普通に話してた。
さっき無視してたこともセクハラ発言も、お互いなかったことにして。

5分も経たないうちに目的地に着いて、私は車を降りた。
ドアを閉める瞬間、また空耳が聞こえてきた。
「スク水、がんば!」
めちゃくちゃ笑ってたし。今度は間違いなく言ってた。

ええ、今からスクール水着を着たまま90分もローター責めですよ!
てか貧乳で悪かったな。見てるだけで寒そうですかそうですか。
濡れていく水着が見たいんだとさ。寒いのに熱い趣味だよね。

終わったらあいつに何て言ってやろうかと考えながら、
手慣れた様子で呼ばれた部屋へ足早に向かう。
その部屋の手前で一度立ち止まって、ゆっくりと息を吸った。
こんな日は冷たい空気が頭の芯を冷やしてくれる。

ね、このドアの向こうには何があると思う?
絶対的な肯定が続く世界だよ。なーんて言ってもわからないよね。
私も難しい言葉使ってみたかっただけで、実はよくわかってない。

常識や世間体のために我慢してることって誰でもあるでしょ?
みんな、知らないうちにガチガチの鎧を心にまとってるんだよね。
私はそんな常識も、理性も、人間性すらも剥ぎ取って、
大の男の心も体も丸裸にするのが大好きなんだ。

仕事だから時間は短くて、あっという間に過ぎちゃうけど、
一緒にいる間だけはどんな夢だって叶えてあげたい。
二度と会うことはない相手が多いからこそ、良い出会いにしたいの。
だから帰る時に、少しでも寂しがってもらえたらほんとに嬉しい。

今日の相手はどんな人かな?優しい人だといいな。
楽しんでもらえるといいなーなんて思いながら、ドアをそっと叩いた。

(第0話 おわり)

用意だけはしていた全話の設定

  1. あやの仕事(やる気のないデリ)

  2. かずやの電話(あやの客, さやかの彼氏)

  3. さやかの過去(かずやの彼女, たちばなの元彼女)

  4. たちばなの片思い(たちばなの元彼, 生徒のななに片思い)

  5. ななの選択(教師のたちばなに片思い, はやとに告られる)

  6. はやとの悩み(ななが好き, まりえの幼馴染)

  7. やすのぶの一日(まりえ本命, らんのヒモ)

  8. らんの引退騒動(本番疑惑のデリ, 故郷で見合いしたい)

  9. わたなべ、走る。(運転手, らんがやすのぶから逃げるのを助ける)

  10. ん、いいよ。(主人公はあや, 先輩の引退を見て迷うが続けると決める)

タイトルは1文字目の縦読みで続いていき、
主人公は最終話で最初に戻ることだけは、決めていました。

以上、どう見ても黒歴史です。
これでようやく作品として成仏させられます。
気持ち的に整理がつきそうです。執着を手放せます。
本当にありがとうございました。[完]


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