バラード

Ballads / John Coltrane

かつて、これほどまでに神格化されてしまったミュージシャンは、彼の他にいないでしょう。おそらく、それは日本独自の現象であって、米国人の間では間違いなくジャズの巨人の一人ではありますが、one of the best jazz giants としての扱われ方をされていると思われます。
ジョン・コルトレーンは、マイルス・デイビスのグループに参加していた無名の時代「あの下手クソ野郎をやめさせろ!」とファンから散々非難されました。実際、若いころに録音された彼の演奏は、“野暮ったい”というか“乱暴”というか…音がデカイだけのサックスに聴こえます(このようなことを書くとコルトレーン・ファンが烈火のごとく怒り出すでしょうが…)。
しかし、彼は批判をものともせず自分のサウンドを追求し続けました。もちろん、その音楽は時代と共に大きく変化しており、私はその変遷を“まるで修行のようだ”と感じています。麻薬に溺れてバンドをクビになってしまったこともありましたが、実際には強烈に真面目な人だったのでしょう。「神の啓示を得た」とか、「私は聖者になりたい」などといった、凡人には戯言としか思えないような内容のインタビューが残されています(麻薬で頭がイカれちゃったんじゃないの!?というのが私のホンネ)。そのようなこともあって、同じようにクソ真面目な日本人ファンの間で徐々に神格化されていったのでしょうね。
では、コルトレーンの演奏が何解で小難しいハチャメチャ音楽なのかというと、決してそうではありません。彼は、あるとき自分がイメージする音が出せなくなるスランプに陥りました。そのとき、プロデューサーからマウスピースを変えるようアドバイスされ、新品のマウスピースを使って試しに録音したのが、この「バラード」です。それは、「超」が付くほどの名盤の完成でした。
落ち着いた雰囲気、スローなテンポ、美しく柔らかいメロディーに満ちたこのアルバム、私の場合は心が疲れたとき、頑張ったとき、都会が恋しくなったときに聴く傾向にありますが、どのようなシチュエーションで聴いても気持ちいい癒しのサウンドですよ!例えば、日頃から長距離の移動がお仕事のドライバーさんにもおすすめ。高速道路のパーキングで休憩しているときに聴けば、身も心もリフレッシュすることでしょう。また、ドライバー仲間から一目置かれる存在になること請け合い。是非みなさんにも聴いていただきたいおすすめの1枚です。

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