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バズるショートフィルムの演じ方(について考えてみた)

#TikTokLIVEバズるショートフィルムのつくり方
では、映画『カメラを止めるな!』の上田監督が、清々しい切り口でバズらせ方をシステマチックに論じています。

3回に分けて「#1 バズる脚本の書き方」「#2 バズる撮り方」そして「#3 バズる編集」を展開してらっしゃるのですが、じゃあ…

「# バズる演技」

って、なんだ?
と思ったので、考えてみようと思います。

(この記事をバズらせたいから乗っかってるわけではありません!決して!…たぶん)

まずは完成動画をご覧ください。

これ、ループで見ると
「じゃ、本番行きます」
から、冒頭の
「好きです、付き合ってください」
に続くのが鳥肌ものですよね。

いやぁ、流石だなと思いました。

さて、ここで私が演技のダメ出しをするつもりはありません!

それは映画監督の仕事で、私はそこに対してとやかくいう立場にはありません。撮影現場は分業制で、チームワークです。
それぞれの専門家がしのぎをけづり自分のパートに専念します。そして、その交通整理をするのが監督の役割です。

でも、一つだけ言わせてもらえれば、誇張がありつつも非常に自然で、違和感のない演技だなと感じました。

そこで、役者として、どうすればこういう演技が出来るのか、システマチックに考えてみたいと思います。

イギリス演劇では、「なんとなく」を忌み嫌います。
「確信的に」クオリティーの高い演技を繰り返すことができる。そんな職人的な演技術が特徴的で、それがハリウッド映画でもイギリス俳優が重宝されている所以です。

少し長くなりそうですが、お付き合いください!

どこから来て、どこへ行くのか

上田監督は、
「いかにスワイプされないか、最初、2~3秒が命」
と言ってます。

芝居の世界に置き換えると、舞台袖から出てきた瞬間から、何か惹きつけられる魅力を持ったキャラクター、そういう演技を目指します。

有名な逸話だと、かのローレンス・オリビエは、まだ若い頃、セリフが数個しかない召使の役で、脚光を浴びたと伝えられています。

ひとつには、役者としての魅力があると思います。幼児性や、動物性、予測不可能性が関わってくるのですが、詳しくは連載中の別投稿で…
(ほら、見出し画像も魅力的じゃないですか?)

もうひとつ重要なのは、シーンが始まる直前、どういう状況にいたのか?どこからきた人物なのか?を明確にしておくことです。

観客に、
「ん?何かすでに起こっているな?!」
と思わせなくてはいけません。

オーディションテープなどで目に止まる役者は、これが出来ています。
何かはわからないが、その人物の脳内ですでに何かが起こっていることが読み取れる演技が求められます。

一番手っ取り早い方法は、前のセリフを考え、さらにそこから遡ります。
今回は
コウヘイ「はい!次!もういっかいやってみて?」
だったようなので、

すでに何度かこの練習が続いている
→ある程度ヒートアップしている

と思って挑んだほうがよいでしょう。

最終的には使われないと分かっていても、シーンが始まる数十秒前の会話からやらせてもらえると、やり易いと思います。


ハイテンポな演技

ハイテンポな演技が求められているとき、最初からテンポを上げて演技することはお勧めできません。

演技は、真実の再現なので、わざと遅いテンポで練習するのは疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。
でも、役者としての脳は、決められた思考回路を、確実に踏んでいかなくてはいけません。スピード重視で流しても薄い演技になってしまいます。

これは、即興でやってるならば別なんですが、台本がちゃんとある場合、またそれを何度も撮影のために繰り返す必要のある場合は、思考回路を明確にしておいたほうがいいです。

そのためには、碇のように、要所要所の思考を確認しながら、ゆっくりとシーンを何度か稽古します。

慣れてきたら、それをスピードアップさせます。

指でや足で早いリズムを取りながセリフを言うのも、一つの手です。キャラクターの思考回路の回転数を上げるイメージですね。

逆に、思考回路は無視して、ただただセリフだけを最速で言ってみる稽古もおすすめです。これを滑舌良くやれば、発声練習にもなります。

何度かやると、相手役とのタイミングも合ってきて、音楽的に心地よいパーカッション的なリズムが生まれてくるでしょう。

でも、これをこのまま撮影すると予定調和になります。

あくまでもこれは、稽古。
本番では相手のセリフをよく聞き、対話に集中します。


身体表現の綱引き

土井さんは、
「サイレントでも楽しめるように」
とおっしゃってますね。

ここでは、字幕をつけるという意味で言われてますが、身体表現で関係性とストーリーを伝えるという意味合いもあると思います。

メラビアンの法則では、
コミュニケーションとは
「言語情報7%」「聴覚情報38%」「視覚情報55%」
であると言われています。

何を言っているかよりも、どう表現しているかのほうが重要です。特に、人間は聴覚よりも視覚からの情報を優先させる傾向にあります。

ドラマや映画を、ミュートにして見てもキャラクターたちの関係性や、話の内容がある程度理解できるか?が、良いバロメーターになると思います。

棒立ちの、ただセリフをしゃべる「口だけの演技」をしていると、これが出来ません。

エキササイズは色々とあるのですが、相手との距離感を意識するのも良いでしょう。

今回の動画では、女性が前のめりになったら、男性は少し引いてますね。
相手の役者の表現に「傾聴」が出来ているのだと思います。

ほかには、この本を活用するのも良いかもしれません。


小道具を持て

演技をしているとき、結構困るのが手のやり場ではないでしょうか?

これは、役作りが綿密に出来ていると、自然と定まってくるのですが、短時間でショートフィルムを作ろうという時には不向きです。

そこで提案したいのが、「小道具を持たせる」という手法です。

今回は、土井さんが水のペットボトルを持っています。
実はこれ、手のやり場が定まる以上の効果があります!

演技をしている時、とくに台本を読み込み、役作りをする十分な時間がない中で、本番を迎えなくてはならない時、陥り易いのが

セリフに気を取られている状態

です。

演者の集中が、セリフをどう言うかに120%侵食されていると、どうしても下手に見えます。
そこに、意思がないし、セリフが体に入ってないからで、前述の「口だけの演技」も招きます。

ここで、小道具を持つことによって、役者の意識はそちらにも分散され、暑苦しい演技から脱却しやすくなるという構造です。

これ、非常に即効性のある便利なツールなんです。


意思を止めるな!

「心の動きを追うように編集してみましょう!」という上田監督の編集者としての発言もありました。

この「心の動き」を英語では「Thought」と言い、私は「意思、意図」と訳しています。

イギリスの演技方法では、感情の演技はしません。

「もっと感情を込めて!」とは言わないです。
(この脚本の中ではセリフとして言われてますが…!)

感情の変化ではなく、キャラクターがどういった意志を持っていて、それがどう変化していくかが最も重要だと言われます。

誤解を恐れずに言えば、感情の演技、たとえば「悲しい」という演技をしてしまうと、暑苦しかったり、浅い演技になり易いです。

感情は、キャラクターの意思や意図から、自然と溢れて観客に伝わるもので、役者が意識的に前面に出すものではないという考え方です。

例えば、今回の台本をもらった時、私なら何をするか、試しにやってみました。

今回は、2役分を書き込みましたが、通常は自分の役の分だけですし、ここまで詳細には書かないで、記憶を思い起こす程度に抑えて、見やすくしておきます。だって、本番中にさっと思い起こすために確認できる状況にしておきたいからです。
上のは、見にくくなってしまっていてすいません。

あと、青と黒のペンしか持ってなかったので、見にくくてすいません。

よく見ていただければ、キャラクターが何を考えているのか、とくに相手のセリフ中に何を考えているのかが書かれていると思います。

意思で表現できない部分は、「はじく」などのアクション・ブックからの動詞がメモされています。

右上の、役作りは簡潔に。右下は現場で監督に質問するかもしれない項目です。

矢印で、思考回路の変化と、それに伴う相手との関係性(化学反応)を記しています。

セリフを覚えるのはもちろんですが、この思考回路を覚えることが非常に重要です。そうすることによって、繰り返しになりますが、「口だけの演技」になることを避けられます。

最後に、一番重要なことは、やっぱり…

本番になったらこんなこと忘れて、相手のセリフをよく聞け。

です!

長々と講釈を垂れましたが、実際本番になってみると、なかなか上手くいかないものなんです。そんな時に必要なのが、「傾聴力」「即興力」そして「度胸」だと、私は思います。

この記事が、どこかで誰かのお役に立てば幸いです。

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