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ピンチをアドリブで乗り越える技 71/100(エヴァ)

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


先週は3回に分けて「忘我の境地」とは何かを考えてきました。

これは思いつきなのですが、役との距離感や、それによって『己』が侵食されていくという感覚が、『新世紀エヴァンゲリオン』を想起させたので、今日はそこを少し探っていってみようと思います。

フィクションの世界の中で、ここまで親和性の高いものはないような気がします。『ガラスの仮面』なんかよりも、よっぽど演劇的かもしれません!

エヴァをまったくご存知ない読者の方には申し訳ないのですが、私も別にそこまで詳しいわけではないので、しばしお付き合いくださいませ。

また、エヴァをよくご存知の方にとってみれば、私の解釈が間違っていると思われるかもしれません。

あくまでも、作品の中に出てくる表現や考え方が、イギリスの演技論を理解する手助けになるのでは?という仮説からの戯言と思っていただければ幸いです。

シンクロ率
EVAとパイロットとの神経回路の同調率のこと。この値が高いほどにEVAを自在に動かせるが、フィードバック(EVAの損傷などに伴うパイロットの痛みなど)も大きくなる。ゲーム『新世紀エヴァンゲリオン2』によれば、シンクロとはパイロットの意識(自我)を拡大し、EVAの意識に干渉させることとも示唆されており、第拾九話でEVA初号機がシンクロ率400%を記録した際には、パイロットは自我境界=A.T.フィールドを失い、肉体はL.C.L.(生命のスープ)に還元され、魂はEVAのコアへと同化した。

https://www.weblio.jp/content/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AD%E7%8E%87

なんのことやら?
ですよね。

エヴァのパイロットは、エヴァンゲリオンという物体とシンクロすることによって、操縦を行います。

ここに
シンクロ率
という表現が出てきます。

シンクロ率は高くないと、操縦することが出来ませんが、高ければ高いほど、痛みや衝撃も操縦者に伝わってしまいます。

エヴァンゲリオンでのシンクロ率は、神経回路の同調率という意味合いなのですが、私は『己』と役の関係性を距離感で表現しています。

台本に書かれている(もしくは即興で作り上げた)役と、自分の距離は、近いほど本番前の準備が容易になります。

でも、これをシンクロ率に置き換えるならば、エヴァという役があった時に、その役と自分のシンクロ率が高いかどうか?という考え方もできると思います。

役とのシンクロ率は高いほど楽です、しかし高すぎると、イギリスの演劇学校で行った創作劇の例にもある通り、ダメージを受けやすくなってしまいます。

シンクロ率の高い役が、作品の中で大きな困難に直面したり、傷を負った時、役者が受けるダメージも大きく、その役と自身の境界線はどんどんと薄れていきます。

エヴァンゲリオンでは、こういった場合、強制的にプラグを抜いてパイロットを守ったりするわけですが、演技の世界ではそうはいきません。

そのため、『己』を十分に確立させておくことによって、戻る場所を確保しておき、いつでもそこに立ち返ることが出来るようにしておきます。

とはいえ、シンクロ率の高い演技には、その危うさによってもたらされる魅力もある、というのが難しいところです。

魅力に関していえば、A.T.フィールドという単語も登場します。

これは、誰しもが持つ心の防御壁(バリアー)として表現されますが、これは作中では使徒とエヴァ(敵と味方?)、双方が持っているものとされています。

A.T.フィールドはこの連載で度々言及している、社会で生きていくために私たちが築き上げてきた、分人的な人格なのではないでしょうか?

演技をするという行為は、このA.T.フィールドをコントロールするのと同義なような気がします。

自らを装ったり、偽りの別人格を表現するのではなく、8角形で表現されるA.T.フィールドの一面だけを表層化させて表現したり、
時にはこのA.T.フィールドを極限まで弱めて、その中心に宿る核の部分を垣間見せたりします。

エヴァの作中では、この核の部分というのは少年少女の魂です。そこに迫る境を、自我境界線と表現しているんです。(シビレませんか?!)

自我の芽生える前の、幼児性が魅力であるという話をこの連載の中でもしてきましたが、エヴァに乗ることが出来るのが少年少女であるのと同じように、私たちの真の魅力は、
その幼児性にある、
でもA.T.フィールドで守られていない、露出されたそれは、あまりにも無防備なものでもあります。

ちょっと、お遊びが過ぎましたかね…明日からはちゃんと真面目路線に戻ります!

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