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【め #7】視覚障害のある女性ならではの課題

阿部 央美さん(後編)


前編から続く)

 阿部さんは現在、日本視覚障害者団体連合で女性協議会の会長を務めておられる。そのため、女性目線から「日常生活に直結した課題はたくさんあります」と困りごとを教えてくれた。


 例えば、性被害の防止。視覚障害のある女性は、目が見えないからわからないだろうと痴漢やストーカー被害に遭うケースがある。歩行レコーダーが自治体による給付対象になれば、「首から下げるだけで性被害の抑止効果になり、防犯代わりになる」。

 例えば、視覚障害者の外出時に移動はもちろん排せつや食事の援助も提供する『同行援護サービス』。当事者のニーズに沿ってと謳うものの、「地域によっては子供がいると受けられないケースがあったり、コロナ禍のルールそのままに外でのランチはダメとかある。女性なんてショッピングした後にコーヒー飲んでドーナツ食べたりするのが楽しみなのにね。」と可愛らしくおっしゃった。

 他にも、「家の日用品はアマゾンで買うのが間違いないんだけど、一方で私たちは画面を一覧できないもんだから、読み上げた音声を聞きながら買うのはものすごい時間がかかるのよ」など、家事目線のお話もしてくれた。


 改善が求められる場面は他にもある。

 例えば、タッチパネルの操作支援。駅の券売機の脇には視覚障害者などの操作をサポートする電話受話器がついていたりするが、社会全体に急速に広がるディスプレイでの操作に同様の配慮は追い付いていない。例えば、現在始まっている病院におけるマイナンバーカードの読み取りも視覚障害者にとっては顔認証を合わせたりパスワードを入力することが難しい。「ボタンがわかりやすいテンキーとか横に付いているだけでいいだけどねぇ」と教えてくれた。

 他にも、地方の電車は冬になると自動で開かず、乗車には開閉ボタンを自ら押す必要がある。それ以前に電車のドアの位置から把握する必要もある。「駅はエスコートサービスを充実してくれている一方で、無人化の時間帯も増えている」。それで線路に落ちてしまった友人もいる。障害者側で「いかに歩行訓練を身につけても、環境側にも危険が多いのよ」。

 同様に興味深い例を教えてくれた。車椅子利用者にとって便利になる歩道と車道の段差を無くす(厳密には非常に緩やかな坂にする)ことが、視覚障害者にとっては境目が分かりにくく危なくなるのだそう。点字ブロックが車椅子利用者にとって乗り越えづらいといった事象も同じ側面を生む。最近では、そういった課題を乗り越えるために、路側帯を表す白線に凹凸ブロックが使われる例も出てきたそう。


 最後に一つ驚いたことがある。阿部さんがお使いの音声点字携帯情報端末『Braille SENSE』を紹介してくれた。これを使うことで、晴眼者と変わらず、メールを受信し、添付のテキスト文章を点字文章に一括変換でき、編集後にそのままメールで送ることができるといった基本機能はもちろん、Android OSも搭載しているため機能を拡張することも可能だ。

 本当に驚くのここからだ。その端末を見せてくれるとおっしゃって、「(いまWeb会議をしている)Google Meetだとどうやったら画面共有できるのかな。あ、これか。映ってるー?見えるー?」。忘れないでほしい、阿部さんは全盲だ。頭ではわかっていたつもりだが、改めて障害の有無をフラットにするテクノロジーの素晴らしさに驚かされた。



▷ 日本視覚障害者団体連合


▷ Braille SENSE



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