最近観た映画の感想

ここ最近おもしろい新作映画がどんどん公開されていて全然追いきれていないのですが、自分がこの1ヶ月ぐらいの間で観た5作品の感想をまとめておきたいと思います。

『BLUE GIANT』

あらすじ
ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の高校生・宮本大(ミヤモトダイ)。
雨の日も風の日も、毎日たったひとりで何年も、河原でテナーサックスを吹き続けてきた。

卒業を機にジャズのため、上京。高校の同級生・玉田俊二(タマダシュンジ)のアパートに転がり込んだ大は、ある日訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈(サワベユキノリ)と出会う。

大は雪祈をバンドに誘う。はじめは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する大のサックスに胸を打たれ、二人はバンドを組むことに。そこへ大の熱さに感化されドラムを始めた玉田が加わり、三人は“JASS”を結成する。

楽譜も読めず、ジャズの知識もなかったが、ひたすらに、全力で吹いてきた大。幼い頃からジャズに全てを捧げてきた雪祈。初心者の玉田。

トリオの目標は、日本最高のジャズクラブ「So Blue」に出演し、日本のジャズシーンを変えること。 無謀と思われる目標に、必死に挑みながら成長していく “JASS”は、次第に注目を集めるようになる。「So Blue」でのライブ出演にも可能性が見え始め、目まぐるしい躍進がこのまま続いていくかに思えたが、ある思いもよらない出来事が起こり……

公式サイトより

音楽モノの映画ということで良い音響のDolby Atmos上映で鑑賞。

ジャズに関して自分は全くの門外漢なんですけど劇中で主人公たちのバンドが演奏する曲や劇伴を自分でも知ってるレベルのビッグネーム・上原ひろみさんが担当しています。この曲たちがとにかくかっこいい!
音楽を扱っている映画なので曲の良さが作品自体の説得力にかなり重要な比重を占めるかと思いますがジャズ門外漢なりの感想ですがとてもよかったです! サントラはサブスク配信もしてくれているのでありがたい。


原作のマンガは未読の状態で映画を観たのですが終盤のとある展開に「どうしてこんなことに!」と気持ちが高まってしまうぐらいに大、雪祈、玉田の3人のことが好きになっていました。

ただひとつ「う〜ん…」という点を挙げるとするならば演奏シーンにおけるキャラクターのCGですかね。特に引きのシーンとかでは2023年に公開されたアニメ映画にしてはちょっと「あれっ…」となってしまいました。(比べたらダメだと思うのですが『THE FIRST SLAM DUNK』を観てしまったあとだと……)
ただ、目に見えない“音”を視覚的に表現するアイデア、魅せ方が本当に素晴らしいのでプラマイゼロ、むしろプラスぐらいになっているのでまだ映画を観れていない方はぜひとも観に行っていただきたい作品でした!


『少女は卒業しない』

あらすじ
廃校が決まり、校舎の取り壊しを目前に控えたとある地方高校、
“最後の卒業式”までの2日間。
別れの匂いに満ちた校舎で、
世界のすべてだった“恋”に
さよならを告げようとする4人の少女たち。
抗うことのできない別れを受け入れ、
それぞれが秘めた想いを形にする。
ある少女は進路の違いで離れ離れになる彼氏に。
ある少女は中学から片思いの同級生に。
ある少女は密かに想いを寄せる先生に。
しかし、卒業生代表の答辞を担当するまなみは、
どうしても伝えられない彼への“想い”を抱えていたー。

公式サイトより

『桐島、部活やめるってよ』『何者』など映像化された作品も数多くある直木賞作家・朝井リョウの同名短編集の映画化。

学校がこの世界のすべてだと思っていたあの頃。
卒業式の前日と当日をそれぞれ境遇の違う4人の少女たちの目線で切り取った青春群像劇です。

・「卒業したくない」/「卒業したい」
・卒業することへの「希望」/「後悔」
・高校生活の「甘さ」/「苦さ」

など様々な思いを抱える少女たちだけど“卒業”は全員に等しくやってくるもの。登場人物それぞれのお別れが丁寧に描かれています。

学生という身分じゃなくなって数年が経ちましたが、この映画を観て忘れていたあの頃の感覚を思い出しました。

僕の学生生活は映画みたいに全然綺麗なものじゃなかったけど自分の経験した卒業に思いを馳せてみたくなった。
それもひとえに原作者・朝井リョウさんと中川駿監督の学生に対する解像度の高さが要因になっているな~と思いました。

学生同士の何気ない会話のシーンだったり仕草だったりリアルでみずみずしい空気感がスクリーンからにじみ出ていました。

やっぱり朝井リョウさんにこの手の小説を書かせたら右に出るものはいないだろうし、中川監督のディレクションも素晴らしかったんだと思います。

僕が特に好きな登場人物はメインキャラ4人のうちのひとり、女子バスケ部部長の後藤とその親友・倉橋の女子二人組ですね。
少年マンガを読んでいるかのようなカラッとした友情・関係性がたまらんかったです!

そしてなにより主演の河合優実さんが本当に凄かった! 役どころとしても非常に難しかったと思うけどお見事でした!

演技が素晴らしいのはもちろんスクリーンに映ってるだけで画になる存在感も凄かった…!

ここ数年『サマーフィルムにのって』や『佐々木、イン、マイマイン』『愛なのに』などなど話題作に多数出演されていた河合さんは若手最注目女優だと思っているので今後さらに飛躍すること間違いなし!

僕はこの作品を2回観たのですが2回目だと「あれはそういうことだったのか!」と分かる仕掛けになっているのも面白かったです。(なぜあのキャラクターはずっと夏服を着ていたのかなど)

最後に余談なんですけどアイドル好きの目線でいうと、前述した後藤の親友の倉橋がBEYOOOONDSの小林萌花さんに似てたり、軽音部の後輩の女の子が日向坂46の丹生明里さんに似ていたのがちょっとおもしろかったです。笑

『少女は卒業しない』はこれから毎年3月に観たくなる大切な映画になると思いました。


『シン・仮面ライダー』

あらすじ
“人類を幸福に導く”と謳う組織〈SHOCKER〉によってバッタオーグに改造された本郷猛は、緑川弘博士とその娘、緑川ルリ子とともに組織を裏切り、逃亡する。追ってくる敵を“プラーナ”によって得た力で殺してしまったことに苦悩する本郷。しかし、緑川弘が殺され、死に際にルリ子を託されたことで、『仮面ライダー』を名乗りルリ子と共に〈SHOCKER〉と戦うことを決意する。

MOVIE WALKER PRESSより

”特撮TO(トップオタ)”庵野秀明が描く仮面ライダーからは本郷猛が改造人間になってしまった悲しみ、苦悩を仮面の下に隠して人々を守る姿に当時のテレビ版や石ノ森(石森)章太郎先生のマンガ版など原点へのリスペクトを強く感じました。

今回の『シン・仮面ライダー』で池松壮亮が本郷猛役になったと発表されたときは正直「大丈夫か?」と思ってしまったのですがいざ映画を観てみるとこれが超納得! 今作の繊細で倒した敵に黙祷を捧げるような優しさを持つ本郷猛にはこの人しか考えられないレベル。劇中でもルリ子から言われてた“コミュ障”演技がお見事でした。

“シン”の名が付くシリーズで1作前の『シン・ウルトラマン』で怪獣を1体倒したらすぐまた新しく怪獣が登場するテンポの早さが個人的にあまり好みではなかったのですが、『シン・仮面ライダー』では怪人(オーグ)を1体倒すとちょっとした日常パートが句読点を打つようにはさまっているのがちょうどいいテンポ感でよかったです。

また、本郷とルリ子が様々な場所を転々として物語が進行していくロードムービーだと思うのですが庵野監督が大好きな『仮面ライダー555』序盤の展開に似ていたのでオマージュなんですかね? 個人的にロードムービー大好きなのでよかったポイントのひとつでした。

『シン・仮面ライダー』で描かれていることは大雑把に言っちゃえばほぼエヴァなんですけど逆に言えばそれだけ語りたいテーマ性に一貫性があってブレてないってことですね。
それだけに庵野秀明のエッセンスがガッツリ入ってるのでそもそも庵野秀明の作品が苦手って人は『シン・仮面ライダー』も苦手かも。

『シン・ゴジラ』『シン・エヴァンゲリオン』『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』の4作がすべて公開され、この次に庵野監督がどういう作品を作るのかがとても楽しみです!


『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

あらすじ
経営するコインランドリーの税金問題、父親の介護に反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン。そんな中、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”から、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託される。
まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにジャンプ!
カンフーの達人の“別の宇宙のエヴリン”の力を得て、闘いに挑むのだが、なんと、巨悪の正体は娘のジョイだった…!

公式サイトより

通称「エブエブ」と呼ばれているこの作品は2023年の第95回アカデミー賞で最多7冠の受賞を果たした注目作。

あらすじにもある通り、冴えない主婦が世界の救世主となる壮大なスケールの作品なのですが救世主になるに至る理由づけもしっかりとしていて納得感があったのがとても良かったです。

様々なマルチバース(多元宇宙)にいる自分の力を借りて世界を救おうとするのですが、各バースにジャンプ(繋がる)方法が笑っちゃうぐらいくだらないものなんですけど「それぐらい突飛なことをしないと無理か〜」という謎の説得力があってとてもよかったです。笑

僕たちが生きているような世界とは別の世界のアイデアや見せ方がとてもユニークでとても面白かったです。岩の世界とか指がソーセージになる世界とか発想力がすごかった。

マルチバースというマクロ的で壮大な話になったかと思えば急にひとつの家族単位のミクロな話になったり、“視点の飛躍”があってこれが非常につんくさんの歌詞の世界観を想起しました。
例えばモーニング娘。が2001年に発表した『ザ☆ピ〜ス!』の

青春の1ページって 地球の歴史からすると
どれくらいなんだろう?
あ〜 いとしいあの人
お昼ごはんなに食べたんだろう?

という歌詞があるのですが、46億年ある地球の歴史という壮大な視点から急に好きなあの人がお昼ごはんに何を食べたのか?という超ミクロな視点になるつんくさんの作家性が「エブエブ」にも共通しているな〜とふと思いました。


『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』

あらすじ
ちさと(高石あかり)とまひろ(伊澤彩織)は、また途方に暮れていた・・・。ジムの会費、保険のプラン変更、教習所代など、この世は金、金、金。
金がなくなる・・・。時を同じくして殺し屋協会アルバイトのゆうり(丞威)とまこと(濱田龍臣)兄弟も、途方に暮れていた...。
上からの指令ミスでバイト代はもらえず、どんなに働いたって正社員じゃないから生活は満足いかない。この世は金、金、金。金が欲しい・・・。そんなとき「ちさととまひろのポストを奪えば正規のクルーに昇格できる」という噂を聞きつけ、作戦実行を決意。ちさと・まひろは銀行強盗に巻き込まれたり、着ぐるみバイトをしたりとさあ大変。そんな二人にゆうりまこと兄弟が迫りくる・・・!育ってきた環境や男女の違いはあれど、「もし出会い方が違えば仲良くなれたかなぁ」なんて思ったり思わなかったり、ちょっと寂しくなったりならなかったりする物語である。

公式サイトより

決して大きいバジェットとは言えなかった前作が口コミを中心に火がつき池袋のシネマ・ロサという劇場では9ヶ月以上にも渡るロングラン上映。それから約2年、満を持してスケールアップして作られたのが今回の2作目。

まず何よりも主役の殺し屋コンビ「ちさと」と「まひろ」の2人にまた会えたのがうれしい!
『ベイビーわるきゅーれ』の魅力である何気なくてゆる〜い日常パートやオフビートな会話劇も健在で最高でした。

そしてもうひとつの魅力であるアクションシーンもとてもいいんですよね。
特に冒頭の銀行のシーンでは電話やファイル、キャスター付きの椅子など日常的によく見かけるアイテムを武器にしたり、狭いアパートの部屋の中での戦闘など日本という舞台ならではのアクションが繰り広げられていてアイデアがとてもおもしろかったです。

今回の敵役となった殺し屋協会アルバイトの兄弟も非常にいいキャラクター。クライマックスのちさととまひろとのバトルシーンでは少年マンガ的で爽やかな読後感をこの兄弟が引き出してくれました。

『ベイビーわるきゅーれ』は正直いくらでも続けられそうなストーリーなので3作目、4作目と定期的に続いてほしいです。

あとパンフレットにはより作品に浸れるドラマCDもついているのでこちらもおすすめ。

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