読書感想文『最後はなぜかうまくいくイタリア人』

きっかけ

なにかしらのソーシャルメディアの広告をみて、気になった本。

”最後はなぜかうまくいく” という部分にも惹かれるが単純に ”イタリア人” 自体も気になってしまい1-2ヶ月自分の中で寝かしていた。

気になった理由がそこまで明確にあるわけではないが、なんとなくイタリア人に共感を抱いていたのだ。

勝手な想像だが、あまり堅苦しいことは気にせず寛容な感じが自分のフィーリングに合うのでは、と感じていたのだ。

おそらくその背景には Bruno Munari の存在が居たと思う。

彼の著作などから、ナンセンスさ、役に立たないこと、を面白がるセンスを感じていてそれが自分のフィーリングに合っていると感じていたのだ。


気づき


イタリア人はもともと義務意識が弱い国民で、自分のものとして感情移入できないことには関心が持てないし、熱中できないのである。

これはまさに自分のことを言われているのではないかと感じた。

自己分析を過去にした際に、自分のこの特徴に気づいていた。

確かに義務の意識でやっていることもあるし、義務意識を明確に意識できない状態で何かをやっていた時期も自分にはあるが、無理をしていたと思うし、ストレスを感じていたことは、振り返ると間違いないと思う。

他の日本人の友達に話を聞いてみると、社会のため、他人のためになることが自分の喜びだと話す人がいた。

それは美しいことだなと思ったし、なんなら自分もそうありたいと思ったし、そうなろうと力んでいた時期もあった。

しかし、なんとなく、それは気質なんじゃないかと気づき始めたタイミングがあった。

僕自身も他人や社会に貢献したいとは思うが、あくまでそれは自分の気持ちが満たされていることが前提なのだ。

この自分の考え方に対して、僕という人間は自己中心的だなぁと感じることがままあって、それをどう直せばいいのか考えたり、迷ったりした。

ただ、国民性としてそういった特徴を持っている集団がいることを知ると、自己中心的であることに貼られた ”良い”、”悪い” のラベルを一度剥がして、自分自身でそれを観察してみようという気持ちになれた。

言うなれば、”別に自己中心的でも他人のためになっているのであればいいじゃない!” という視点も獲得できた。

考えてみると、自己中心的な人は何人か思い浮かぶが、そのすべての行動が100%自己中心的であることはないし、必ずしも忌み嫌われる存在であるわけでもない。

うむ、一度イタリア人とお話をしてみたい。



いま自分が行っている作業が、全体にとってどのような意味があるかが見えないと、意欲がわかないのである。

”根本的に欠けている分業の概念”、という文脈での著者の意見である。

”全体にとってどのような意味があるか” という点が、僕のフィロソフィーと重なる部分があって大きな頷きがあった。

特に自分の仕事の中での行動原理は、これに集約されるかもしれないと言っても過言ではない。

全体にとっての意味、をベースに課題を発見したり、改善を提案したり、新しい企画を考えたりしている。

逆に僕は、説明なしに指示された全体の一部の作業を行うのが、本当に苦手である。

まず第一にモチベーションが上がらない。なんのためにやっているか分からない、もしかしたら徒労に終わるかもしれないことに自分の時間を使いたくない、という気持ちが強いのだ。

そして、迷いが生じた際の判断の場面で、考える基準がわからなくなってしまう、というのもそれが苦手な理由だ。目的がわからない作業では、どのような結果が望ましいのかがわからなくなってしまうので、結局どうでもいいよね、となってしまいがちである。

自分の哲学に沿っている活動は、自分なりの問いが都度生まれて、考えて、新しい気づきも芽生える。

もし可能ならそういった人たちに囲まれて仕事ができたら、幸せを感じる場面がありそうだなと想像する。


やること

自分は日本人であるが、日本人の一般的な特徴がすべて当てはまるわけではない。

むしろそんな人の方が少ないとさえ思うが、それがより顕著なのが自分なのではないか、と今回の読書体験を通じて感じた。

だから、自分が日本人らしいと言われる価値観を持っていなかったりしても、それに疑問を持ったり責めたりする姿勢はやめよう。

それは、他人に対する姿勢にも共通する。

他人をフレームで判断しない、フレームに当てはまらないことを非難したり、責めたりしない。ただ、純粋に個人として付き合うことを大切にしたい。


一応記しておくが、僕は日本人であって日本文化は大好きだ。

なんなら日本文化に積極的に誇りを持っているとさえ自負している。

自社仏閣に訪れたり、織物に触れたり、家紋や和柄、建築が好きだったり、日本で育った文化が好きだ。

いつか、いつかイタリアに行ってみたい。


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