読書感想文『「わかりあいえない」を越える』

きっかけ

正直タイトルがキャッチーだったので、目に付いたのがキッカケである。

ただ、その目に付いた理由としては、ユーザーインタビューなどをしていく上で、そもそも分からない相手のことを知っていく姿勢が必要になると感じていたこと、だと思う。

更に言うと、普段の生活においても自分と違う考えを持つ人と話す機会、というのはどうしても生じるが、そのときのことは今まで諦めていた。

だが、もし「わかりあえる」という世界線が存在するのであれば、それも覗いてみたいと思い、この本を手にとった。


気づき


ここで気をつけたいのは、相手の考えに同意する必要はないことです。
相手の発言内容を好きにならなくてもいいのです。

相手の考えに同意する必要はない、という言葉には勇気づけられた。

そして、好きにならなくても、わかりあえることができる世界線があることに気づいたことが収穫だった。

価値観が違うコミュニケーションを取る場合、容易に想定できるのは

”それは間違っている。”
”その意見は自分としては納得できない。”

というシチュエーションである。

その意見が出た時点で、一つの価値判断が入ってしまっている状態なので、その前に相手のニーズを聞く、本当に相手が求めていることを、自分の判断なしに聞くことが「わかりあう」ためのはじめの一歩なのではないかと思う。


人は、理解されていると感じたとき、他の可能性に対して柔軟になることが簡単になる。

実生活での体験上、人間の真理とも言える言葉だと感じる。

基本的に、人は自分の気持ちを満たしたい。

だけど、それが集団になったとき、すべての人の気持ちを満たすことが現実的に難しくなる。

もしかすると、
理解されていると感じたときに、人間は自分の気持ちが満たされるのかもしれない。

それが自分が最初に願った未来になっていなかったとしても。

これを踏まえると、異なった意見が場に出ている際、またしても価値判断は置いておいて、話しを通じて気持ちを共有する必要が出てくると言えるのではと思う。

そしてこれはおそらく、得意な人とそうでない人がいるのではないか、と現実世界を見ていると思う。

なぜなら、価値判断をしない時間を設ける、ということには時間がかかるからだ。要は、効率が悪い。

効率に価値判断を置いている人、場面においては、必要とされないかもしれないが、躓いた場面に出くわした場合は、この考え方も使えるのではないか。


残念ながら、人はニーズの表現方法を知らない

ニーズとは、例えば、自尊心、平和、信頼、食べ物、などである(巻末にまとめられていたものから抜粋)

人はニーズを表現するのではなく、自分がしたい行為や相手にして欲しい行為、または発言、物理的なモノを表現する生き物だと思う。

これも、ある意味生きる上での効率化の観点からショートカットされている回路なのだろうと思う。

自分も相手もショートカットしているのだから、当然それを表面的な言葉から認識することが難しい、というのは納得感のある説明だ。

だからこそ、私のような人間を探究したいひととか、リサーチャーには言葉どおりで受け取るのではなく、その裏側まで考え、探っていく姿勢が必要なのだと思う。

ある意味、リサーチャーの専門性はこういうところにありそうな気がする。


やること


判断が必要な場面でこそ、時間をかけて様々な人のニーズを聞き出していく。
それはサーベイでは引き出せない可能性があることも知っておく必要がある。

人間への好奇心の蓋をなるべく開けた状態にすることが、その第一歩なのではないかとも思う。

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