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日本にも欲しい、大人が納得できる「モード」で「サスティナブル」なレンタルサービス

今まで「レンタル」というとダサくて古臭い、人にバレたくない、冠婚葬祭ですか?、みたいなところがあったけど、モノよりコト消費、と言われる昨今、着飾る楽しみ方も多様化してきた。 「シェアリングサービス」とか「サブスクリプション」と言うと、多少は今っぽくなるのだろうか(それすら古い?)? 

デザイナーズブランドにおけるレンタルサービスの草分け的存在であり、時価総額10億ドルにまで成長したユニコーン企業、と言えば「Rent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)」だろう。2009年、ハーバード・ビジネススクールに通っていたジェニファー・ハイマンとジェニファー・フライスによって創設された「レント・ザ・ランウェイ」は、所有よりも共有を好むアメリカのミレニアル世代を中心に支持されており、現在約900万人の会員が参加していると言われている。

レンタルといえば、結婚式のお呼ばれや卒業式など、いわゆるハレの日をイメージしがちだが、「レント・ザ・ランウェイ」ではトレンドを盛り込んだ旬のデイリー服もオンラインでレンタルできる。メゾン マルタン マルジェラやヴィクトリア ベッカム、パコ ラバンヌ、3.1 フィリップ リムなど、ファッション好きならおなじみのブランドが、サブスクリプション型のサービスでお手軽に利用できるのが売りだ。そして、この「レント・ザ・ランウェイ」の登場が、レンタル=ハレの日用という概念を覆すきっかけになったようにも思う。

現在、「レント・ザ・ランウェイ」では700近いデザイナーズブランドを取り扱っているが、69ドルのトライアルに始まり、ひと月4着まで借りれる毎月89ドルと、ひと月何着でも借りれる毎月159ドルのプランを用意している。また、必要な時に必要なものだけ借りたい人向けに1着につき30ドル〜のプランもある。なお、気に入ったアイテムはメンバー価格での購入も可能だそう。

「レント・ザ・ランウェイ」の人気の秘密は、20〜30代の女性が普段なら何着も買えないような高価な服を気軽に借りれるところにあるのではないだろうか? 毎シーズン●十万もするドレスやコート、相当思い入れがあるなら購入すべきだが、欲しい服を全部手に入れられるわけではない。そして、女性とは様々なファッションを取っ替え引っ替えしたいもの。また素敵な服を着たら人に見せたいという少なからずの承認欲求もあり、毎回同じ服を着ているとも思われたくない。となると、消費者目線としてはレンタルが何気に便利だったりもする。

また、これまでハイセンスなデザインを提供するブランド側はレンタルに対してブランド価値が下がる、と懐疑的な視点を持っていたが、消費者の価値基準の変化に合わせて態度が寛容になってきた。まずはレンタルで服を試すことからブランドの存在を認知してもらい、ブランドに対して消費者が興味・関心を持ってくれれば、将来的に新作を購入するかもしれない新規顧客の開拓にも繋がるからだ。ある意味、ブランド側にとってテストマーケティングの場所とも言える(レベニューシェアも入ってくるし? ちなみに、下記はアメリカ版『VOGUE』のエディター、NAOMI ELIZÉEがレンタルをおすすめしているところ。そのお召し物は、もしやパコ ラバンヌですね?)。

また「レント・ザ・ランウェイ」の場合、「レンタルは、リサイクル」というビジョンを掲げており、レンタルすることをサスティナブルな行動、と捉えているところも魅力的に映るのかもしれない。過剰な生産と廃棄を繰り返すファッション業界の悪しき慣習……そのような社会課題の解決に繋がるビジネスを推進する姿勢が、環境問題への意識が高い若年層に支持されている。ストック管理から返送があった服の検品、汚れ除去、スチームクリーニングや修繕にいたるまで、品質管理を徹底しているそうで、その日に戻ってきた服はその日のうちに次の人へ届けるというスピーディな循環経済も、消費者のニーズにマッチしているのかもしれない。

先行き不透明な状況が続く中、「レント・ザ・ランウェイ」も御多分に漏れず新型コロナウイルスの影響は受けており、NYにある旗艦店を含め、サンタモニカやサンフランシスコ、ワシントンにある実店舗でのサービスを終了した。ただ、元々デジタルファーストでCXに注力してきたこともあり、今は痛手でも挽回は早いかもしれない。これからは完全にデジタルに舵を切り、顧客起点のDXを加速させるとのこと。そうそう、それがニューノーマルの時代には妥当だと思う。

そこで。レンタル(シェアリングサービス)、サブスクリプションで成功事例を作ったこともあり、売り切り型ではなく継続的なマネタイズ手法として「レント・ザ・ランウェイ」をベンチマークする日本のアパレル企業も多いかもしれないが、はい、ここで挙手。

「もっと、感度の高い大人のためのサービスを作ってください」

日本でも服のレンタル市場シェアがどんどん伸びているのは、すでに周知の通り。ではあるのだが、大人にメチャカリは少々違和感感じるし、EDIST. CLOSETはミニマルでいいのだけれどちょっと安全圏すぎてモード好きにはもの足りない? なんだろう……個人的欲望としては、エアークローゼットみたいにデータサイエンティスト駆使してます的なUI/ UXで利便性を追求しつつ、ハイファッションの世界から飛び出してきたようなセンスの服を、片っ端からあえて日常で好き勝手にコーディネートしてみたい(借りるだけなら余計試し甲斐を感じるというもの)、と妄想するのである。

ちなみに、本気で極上のドレスアップをするなら、ランウェイ直送のモードなドレスを揃えた「Armarium(アルマリウム)」がおすすめ(あぁ、ここにも大好きパコ ラバンヌが。。!)……だったのだけれど、新型コロナウイルスの影響なのかどうなのか?今年3月にクローズしている。余談ながらこちら、メンターの一人と私が勝手に仰ぐ、グローバルファッション業界の裏のドンの一人で大富豪、カルメン・ブスケツ女史が初期に出資しているスタートアップで、思わず変な回想に浸ってしまった(カルメン様は昨年だと思うが?LVMH Prizeの審査員もしている)。

日本だと、個人的にはまだ試したことはないけれど「HAUTE rent to runway(オート・レント・トゥ・ランウェイ)」が、モード好きにはググっとくるのではないだろうか。ただ、どちらかというとオケージョンが本当に結婚式の披露宴や二次会中心でデイリー服を格上げ、という感じではないし、サブスク全盛のいま、費用対効果がどうなのか?という疑問もあり。(しかし、サブスクだとお眼鏡に叶った服が見つからない。。私はデルポゾが大好きなので、もっとラインナップがあればいいと思ったりもする)。

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(出典:https://shop.hauterenttorunway.jp/ic/rental

私が「レント・ザ・ランウェイ」を知ったのは、2015年の時だ。それから紆余曲折、創業者のジェニファー・ハイマンは、アメリカの『TIME』が世界で影響力のある人を毎年発表する「TIME 100」の2019年度版で、ビジネス部門から選ばれた唯一の女性起業家となった(毎回、ジェンダーフリーの観点から「女性」という冠は付けたくないのだが、ここではわかりやすくという意味であえて付けている)。

とにかく、今回はひとまずレンタル軸でパッと頭に思い浮かんだことだけ書き綴ってみたものの、他にも知らないことがたくさんあると思うので、マス向けだけではない、センス良し、ビジネス興味深し、なサービスがあればどなたかぜひシェアを!


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