イニシェリン島の精霊
何度も泣いてしまいました。
いや、もう良い映画でしたよ。コリン・ファレルが孤独で朴訥で「良い奴」なんですけど、ある日、親友だと思っていたおっさんから
「もう自分にしゃべりかけるな」
と言われてしまう話です。
全編美しいアイルライドの僻地の風景と、それから遠くの戦争と、コリンさんがただただ「元親友」に拒絶される映画です。
たぶん、ある種の感性がなければ退屈で死にそうになる映画かも…?万人向けじゃないかもしれませんが、私はハマりました。予想通りですね。
コリンさんは数頭の牛の世話をして生活していて、朝起きて、それからお昼の2時にはパブでビールを飲みながら友達とおしゃべりするのが日課です。
その日課の、なくてはならない生活の一部だった友達にある日拒絶されてしまうのです。
理由は…
「自分の残された時間を大切にしたいから」
とか言うだけで、そんな理由で二度と自分に口をきくなと言われます。コリンさんには、その理由が理解できない。だって別に喧嘩したわけでもないのに。
絶対に他にちゃんとした理由があるはずだし、何かの間違いだと思うんですけど、いくら聞いてもそれ以上の答えが返ってこないばかりか、一言でも話しかけたら自分の指を切り落とすとか言うのです。
私的には途中からきっとハリウッド的な展開があるんじゃないのかな?とかずっと疑いながら見てたんですけど、半分を過ぎるあたりからこれは、そういう展開にはならないんじゃないかな?とか、さすがに理解してきました。
まあ、コリンさんがそれ以上の理由をおっさんから聞き出せない、とあきらめたあたりからですかね?
例えば、新幹線とか乗ったときに、ものすごく田舎の山の中を通ったりするじゃありませんか。で、こんなところに人なんて住んでないでしょう?とかいうところに、遠くにポツン、ポツンと民家が建ってるっていう。
景色の中の一軒家だけど、あのポツン、ポツンのところに住んでる人たちっておそらくお互い知り合いですよね。それ以上の人たちと知り合う機会って、そこに住んでる限りあんまりないのでは?
そんな中で住む人たちの話ですけど、もしかしたら都会でも結局のところ同じなのかもしれません。死を意識しだした初老の男の孤独の話なのかも。
もしかしたら監督のマーティン・マクドナーさんの自分自身の話なのかもしれません。だから、それがリアルで胸が締め付けられる所以なのかもしれませんね。
ちなみに、先週公開で一日中上映してたのに、今週になったとたん、早朝とレイトショーしかなくなってました。
今週中に観ないと、映画館ではもう観れませんよ。
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