【映画】感想『夜明けのすべて』
監督・脚本・出演・原作・あらすじ
監督:三宅唱
脚本:和田清人、三宅唱
出演:松村北斗、上白石萌音、渋川清彦、芋生悠、藤間爽子、久保田磨希、足立智充、りょう、光石研ほか
原作:瀬尾まいこ『夜明けのすべて』(水鈴社/文春文庫 刊)
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感想
三宅唱監督の最新作「夜明けのすべて」を観ました。まだ三月ですが、今年トップ3に入るのではないかと思うほどいい映画でした。
この作品は、淡々と物語が進みます。しかし物語の進行とは対照的に、非常に濃密な作品になっています。その濃密さを支えているのは、以下の2点ではないかと考えました。
一つ目が、主演の松村北斗さんを筆頭に、役者陣の演技です。
主人公の山添くん(松村北斗)がパニック障害の発作を起こすシーンは作中一度しかないですが、松村さんの演技には、発作への恐怖、悔しさ、諦め……等、さまざまなものが滲んでいました。
この映画は、冒頭こそ藤沢さん(上白石萌音)の語りから始まり、ある程度彼女の置かれている状況を把握できるものの、それ以外の人に関する説明はほとんどありません。つまり当人の心情や状況は演技で語られるほかないのです。そのような中で、松村さんの演技はとても説得力のあるもので、余白を上手に使う素晴らしい演技だったと言えます。
光石研さん、渋川清彦さんも圧巻の演技でした。特に山添くんが辻本さん(渋川清彦)をプラネタリウムに招待する場面、辻本さんの涙するシーンは胸を打つもので、こちらも目が熱くなりました。同時に、辻本さんの涙から山添くんが一歩進んだことが分かるといういい場面でもありました。
また最後に藤沢さんが辞表を栗田さん(光石研)に渡す場面でも、辞めてしまうことに対しさびしさ等さまざまな感情がある中で、新たな一歩を踏み出そうとする決意を邪魔しないようにと努める様子が伝わってきて、胸にくるものがありました。
二つ目は、きわめてわかりやすいストーリーです。
――人生や社会に対し諦めのような感情をもっていた二人が、最初は誤解があったものの、それを乗り越えていき、最終的に二人で協力して移動式プラネタリウムの成功を目指す――これがこの映画の骨子です。その中で二人はそれぞれの決断を下していくことになります。
ストーリーのシンプルさゆえに、そこにひっかかりを覚えず、登場人物の心の機微等に集中できる・感情移入しやすい。これが作品の濃密さを支えているのではないでしょうか。
以上だらだらと感想を述べましたが、『きみの鳥はうたえる』『ケイコ 目を澄ませて』の三宅唱監督は、今作も見事に期待に応えてくださって最高でした。今後の作品も楽しみにしたいと思います。
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