短編を書いたこと、それから

短編の文学賞に出した。短編は小さなテーマを、短い時間軸で、技巧を凝らして書き抜く「引き算」のセンスが必要とされる。

このため、自分は神の不在を前提として、信仰と創作をテーマに、旧石器時代から令和までの時間軸で、神の通史的視点、内的視点の二部構成で書いた。足し算どころか掛け算である。自分はそのようなオブセッションを抱えた過剰な作家である。

個人の震災を「記録文学」として一度描いた後の客観的な視点で、「小説」として書いたのだと思う。物語構造自体が謎として機能するので、読者は東北地方の時間と空間、心の内面と外界を横断しながら、謎を解く旅に出ることになるだろう。

この作品を書いたことで、また長編を描きたくなってきた。

三つの河の流域で起きる、第二次世界大戦から令和までの話になるような気はしている。

テーマは、人が生きること。読後に、ああ生きているな、と感じられたら良いなと思う。

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