ネコMAM-MA短編集ホトトギス

『甘い果実』
小泉親子……森脇さん
大木幸……猿山君
先生……杉田麻由香

～一人の女小泉親子が、壁にボールを当て始め大きな声で一人言を喋る

小泉　　ピッチャー振りかぶって・・投げました!!バッター三振!!さあ、九回裏２アウト、いよいよ最後のバッターです。ピッチャー小泉親子、大きく深呼吸して・・・投げた!!・・・私は・・いつも仕事が休みの日には野球をする、一人野球をする。これが結構楽しい。一人で想像する。今何アウト？ランナーは？バッターはどんな奴？キャッチャーとのサインはＯＫ？みたいな感じで、一人の世界・・・私の世界だ！バイトが休みの日曜日、アパートの空き地でやる一人野球、唯一の私だけの時間、私だけの大切な世界界・・・だがある日・・この世界に・・・入り込んで来た奴がいる。

～男が登場、じっと小泉を見ている。小泉もその男を見ている。が、壁にボールを当て出す。

小泉　嫌な感じ！いい年した女(男)が壁にボールを当ててんのがそんなに面白いかっつ～の？ああ・・ヤダヤダ、ほっといてほしい。

～男近づいてきて、小泉の真後ろに立つ。小泉は気にせずボールを当てているが段々ムカついてきて

小泉　あのさ!!

男　あの!!

小泉　　・・・・はい？

男　キャッチボールしませんか？

小泉　その日から毎週日曜日になるとこの男は現れて、私はキャッチボールをする羽目になった・・一人野球ではなく・・キャッチボールを。

～男キャッチボールをしながらハケていく、シーン変わり小泉は友人と楽しげに電話で話している

(シーン2)

小泉　　そうなの、おっかしな奴でさあ～、ず～っと黙ったままで、たまにうん、か、うんうんしか言わないの、気持ち悪いっしょ～・・え・・いやいや全然かっこよく(可愛く)ない、ほっそい目しててさ、暗くてさ、あ、ところでさ、今度久しぶりに飲みに行かない？近所に美味しい焼き鳥屋出来たんだよね～、え・・あ・・そう・・・忙しいんだ、うん・・分かった・・ま、私夜いつでも暇してるから・・・電話でもラインでもちょうだい・・うん、じゃね～。

～切る、すると小泉別の友人に電話をかける

小泉　　オス!!元気～？今さ、北川とも喋ってたんだけどさ!!今度皆でさ、温泉でも・・・あっ忙しいんだ？ゴメン!!仕事中だった？悪い悪い!!またかけるわ!!

～切る、少し考えてからまた別の友人に電話する

小泉　　もしもし～・・・・あっ・・(留守電)あの、どうしているかなっと思って電話しました。えと・・またラインするね。バイバイ。

～小泉は電話を切る。

小泉　　最近・・・・学生時代の友人によく電話をかける・・・皆良い子ばっかりだ・・・卒業式の日私達は親友の契りを交わした・・・いつまでもバカやれる４人組でいようねって・・・あれから７年・・・もう・・お互いの住所すら知らない仲だ・・・

(シーン3)