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最後の検査

2020年11月6日


エコー検査のため、病院に向かう途中、信号で止まって前方の空を見ると、ビルの合間をうろこ雲が移動していた。その光景は、まるで、地球が自転して、空が動いているように見えて、地球というところに自分が居ることを初めて実感した。それと同時に地球も私の人生も全て、神の手中にあることを感じた。


エコー検査は、医師の診察室で、さらっと終わった。医師は、私が期待した癒しの発言もなく、もしかしたらリンパに転移しているかもしれないと言って、生検もできると言いつつも、とりあえずルーティンのように1ヶ月後に次の検査の予約を入れようとした。私は、誰かに突かれたように、もうこれ以上検査を続けることは止めたいと言った。今後も手術をするつもりはないし、先生の時間を煩わせるのも申し訳ない。人によっては、手術をしてスッキリしたい人もいるかもしれないが、私は手術をしないほうがQOL(クオリティ ・オブ・ライフ)が保たれると伝えた。また、薬膳と養生で体調はとても良く、人間ドックのエコー検査では癌の診断もなかったので、自分はお祈りと薬膳で癒されると信じていると伝えた。


医師は驚いたが、リンパに転移しているかもと言った割には、特に必死で引き止めることもなく、理解を示し、いつでも検査が必要であれば受けられるし、検査だけならカルテを共有している提携病院もあると言ってパンフレットをくれた。また、乳ガンは、肝臓や肺に転移しやすく、その場合は乳腺科ではなく、内科での治療になると言った。


私は、医師にお礼を言って診察室を出た。病院を出て、清々しい気持ちになった。これからは、本当に神様のみに信頼して生きることになる。家に帰り、テーブルの上に置いてあった山積みの癌に関する本を全て片付けた。新しい人生が始まり、日々の生活で癌のことを考えることから解放された。

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