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御用聞き営業「5段階活用」

From 安永周平

「もう御用聞き営業は通用しない、これからは提案営業だ!」

あなたが営業をしたことがあれば、きっと1度はこんな話を聞いたことがあるのではないだろうか? 提案営業ではなく「ソリューション営業」「コンサルティング・セールス」なんて言われたりもするが、要は「何かありませんかぁ?」と言って訪問する”御用聞き”と対比して使われる営業だ。相手の悩みをヒアリングしたうえで解決策を提案する…と。

「御用聞き営業」は現在、どちらかというとネガティブな文脈で使われることが多い。わかりやすいのは、サザエさんに出てくる三河屋さんのサブちゃんだ。以前、このメルマガでも紹介したことがあるが、既存顧客へのフォローとしては素晴らしい。ただ、相手の悩みを深くヒアリングする…という印象はない。

だから、私も「単に何かありますか?と聞くだけじゃ、顕在化している悩みしか解決することができないな」と感じていた。そうではなく、相手の悩みをよく聴いた上で、相手が思いつかなかったもっといい提案をすることが大切ではないか? それによって相手の期待を超えるのが、私たちが目指すべき「GIVE」ではないかと思っていた。ところが…

頭のいい御用聞き営業「五段階活用」


ある本を読んで”御用聞き営業”に対する考え方が変わった。もっと言えば「御用聞き営業はもう古い、これからは提案営業だ!」なんて言ってる人は、そもそも御用聞き営業をまともにできていないことがわかったからだ。というのも、以前リクルート社で使われていた御用聞き営業には「五段階活用」が存在したようで…これ、とても役立つ話なので共有させていただきたい。

御用聞き営業:レベル1

「ちわっ、三河屋です。今日は何かありますか?」
「今日は、いいわ」
「そうですか、じゃ、またよろしくお願いします」
※注文を聞いて、特になければ引き下がるパターン

御用聞き営業:レベル2

「ちわっ、三河屋です。今日は何かありますか?」
「あっ、ちょうどよかったわ、お砂糖がなかったの」
※これは注文がたまたまあったのではなく、足繁く通っていた結果、お客様が徐々に心を開き始めて「何かを注文してあげよう」と思った段階=信頼の土壌ができつつある段階

御用聞き営業:レベル3

「ちわっ、三河屋です。今日は何かありますか?」
「そうね……今日は、大丈夫よ」
「そうですか。あっ、奥さん。そろそろこの前のお醤油が切れる頃じゃ」
「そうだったかしら?(確認してみる)まだ少しあるから、大丈夫みたい」
「今日ならみりんがつくからお得ですよ」
「あっ、そうなの?じゃ、お醤油ももらっておくわ」
※この段階になると、個々のお客様の状況を掴んでおり、お客様ごとに個別対応ができるようになっている。さらに状況に応じて、少し背中を押すプッシュ営業をさりげなく展開できるレベル

御用聞き営業:レベル4

「ちわっ、三河屋です。今日は何かありますか?」
「そうね……今日は、いいわ」
「なんかいい匂いがしますねぇ、今日はご馳走ですね?」
「ご馳走だなんて、ただの煮物よ」
「奥さん、お出汁の入った醤油があるんですけど、皆さん煮物に使うと割烹の味になるって……奥さんも試してみてくださいよ」
「そーぉ?じゃ、一本もらってみようかしら」
※状況の観察から、それに沿った提案ができる段階に入っている。提案のポイントは”さらにおいしくなる”可能性で、観察からの延長線上にあることがポイント

御用聞き営業:レベル5

「ちわっ、三河屋です。今日は何かありますか?」
「今日は大丈夫よ」(よく見ると華やいだ雰囲気で、食事の準備も豪華そう)
「何かあったんですか?」
「何かってわけじゃないんだけど、主人が昇進したんで…」
「それはおめでとうございます。それじゃ、ビールの後にお酒も必要じゃないですか」
「お酒はまだ、前のがあるわ」
「ダメダメ、いつもの『鬼ころし』じゃ。あっ、そうだ!ちょうど黒龍の『石田屋』があるんですよ。ご主人、喜びますよ?」
「お上手ね。じゃあ一本もらおうかしら」
※いつもの雰囲気との違いを感じ取り、仮設展開型の営業を仕掛けている。提案自体もこの家族の状況に感情移入しており「喜ぶお父さん」と「お祝いをして喜ばせたいお母さん」それぞれの心情を察して、さりげない気遣いで非日常の演出を促せるレベル

提案は御用聞きの延長線上にある


こうして見ると、提案営業やソリューション営業、コンサルティングセールス…とか言った言葉は、どれも御用聞き営業の延長線上にあると思わないだろうか? もちろん言葉を替えて認識を改める、営業を再定義する意図はあるのかもしれないが「御用聞き営業はもう古い」と言うのは、その人のレベルの問題のような気がする。

相手の状況を理解することに集中し、相手の表情や仕草などをよく観察することで、相手の心情を察して提案する…これができれば文句なしで「売れる営業」になれるのではないだろうか。営業は「相手の本音を探し当てるゲーム」という側面もあるし、自分のレベル上がれば難易度の高い相手の本音も理解できるかもしれない。当然、これは営業職に限らず仕事を探している個人事業主や経営者にとっても同じ話だ。

信頼があれば本音を聴くのが簡単に…


もちろん、相手とコミュニケーションを重ねることで信頼を築くことができれば、相手の心情を察するのは有利になる。これは間違いない。なんなら「何か困ったことでもありました?」と聞くだけで本音を話してもらえるようにもなるだろうから。だとしたら、御用聞き営業のレベルを上げるのはもちろんのこと、相手から本音を話してもらうための技術も、ビジネスではとても価値があるように思うが…さて、あなたはどう思った?

PS
なおこの話は、安永が最も影響を受けた営業技術書のひとつであるこの1冊から学んだものだ。残念ながら絶版になっているのだが、Amazonに中古が何冊か残っているので興味があればなくなる前にGETしてほしい

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