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PDCAより「DCAP」でうまくいく


「未来をコントロールできるなら、予測は不要だ」

私はこの言葉が好きです。激動の時代。未来の予測、予想はなかなかあたりません。事実、予測力の研究で有名なフィリップ・テトロックさんは、学者、評論家、ジャーナリストを集めて3年後の経済を予測させたところ、予測があたる確率はほぼ50%だったと報告。コインの裏表をあてる精度と同じレベルでした。

作家の山口周さんは、予測や経験の無価値化を訴えています。社会がより不安定で不確実になるということは、予測の価値が減損していることと同義。スキルある人材の価値も目減りしていると、「ニュータイプの時代」で語っていました。「未来を予測できれば、未来をコントロールできる」という言説は、もはや説得力がありません。

ヴァージニア大学のサラスヴァティ教授によると、「起業家は予測に嫌悪感を抱いている」とし、「起業家は未来に関するデータを見せられると、単純に無視してしまう」という、起業家の思考傾向をつかみました。「市場調査なんてやりません。そんな暇があったら営業に行きます」との言葉で締めくくられた報告書に、私も思いっきり同意しました。

ちなみにアップル社も、市場調査をほとんどやらないということでよく知られています。iPhoneが世に登場するまで、いわゆるガラケーが主役だった時代の「デザイン」を覚えていますでしょうか。折り畳み式、カラーバリエーション、アンテナ。いまとなってはレトロ感があって逆におしゃれな感じがしなくもありませんが、iPhoneとは似ても似つかぬ形状でした。そして商品をつくる各社の「違い」は、素人目にはなかなか分かりにくいもの。要は「みんな同じ」だったのです。

マーケティングプロセスをピカピカに磨き上げ、極めて論理的に「正解」を追求していた企業がことごとく、しかも産業市場類を見ないほどの地滑り的な敗北を喫したという事実を、私たちはどう見るべきでしょうか。言うまでもなく、当時携帯事業に参入していた企業の多くが撤退を余儀なくされました。市場調査の価値を問うべき、興味深い時代に突入していると考えます。

そういえば、インテュイット社の創業者・クックさんは、「上司が意思決定をすると、政治(politics)、説得(persuasion)、パワーポイント(PowerPoint)の影響を強く受けてしまう」と、2011年の演説で語っていました。この3つのPで名案が選ばれることはまずない。ですが「行動」を通して意思決定を行えば、最善の策がおのずと残ることを指摘しました。

予測は、本を読んだりセミナーにいったり、たくさんの情報収集をベースとしたもの。行動する前に、リスクを回避するために、大量にインプットした情報を駆使して「正解」というアウトプットを模索する営みです。でも少なくない人が実感しているとおり、予測があたるほど世の中は甘くありません。予測は、行動をともなって初めて価値が認められるもの。行動によって実験し、結果をもって最適解を探求する。これなしに予測をする意味はゼロ。そう言いきっても差し支えないでしょう。

行動、行動、行動、そして検証、改善、最後に計画(予測)

PDCAは「計画→行動→検証→改善」ですが、今の時代はDCAP(行動→検証→改善→計画)の順番がしっくりきます。考える暇があったらとりあえず行動。あらためて心に刻んでおきたいと思います。

久保大輔




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